第7話

 一週間が経ち、俺たちはようやくサイクロプスの手がかりを手に入れ、倒すための準備をするために、今日は珍しく野営を行っている。


 まさか、本当に俺が適当にいった地面からドーンと出てくるかもしれんなというのが本当に合っているとは思わなかった。


 なんと、サイクロプスは地面に身を隠し体を休めていた。なんか不自然に土が盛り上がっているのを不思議に思った俺は、一応勇者の許可を取り(許可を取らなかったら勝手に行動するなと怒られる)、地面に探知の魔法を伸ばすと、なんと地下10メートルの付近にサイクロプスの魔力反応を検知したのだ。


 そりゃ見つかんねぇよ。誰がサイクロプスが地面に隠れていると思うのかよ。まぁだからこそ今までぜんぜん見つからなかったのだが。


 森で一晩過ごし、ルーナの魔法でサイクロプスを無理やり起こして地上に出させる。俺でもできるのだが、手は抜いているのでルーナに任せた。


 アリスがサイクロプスをスピードで翻弄し、勇者が聖剣でバッタバッタとサイクロプスの攻撃を防いでいる。さすが勇者、そういうのは得意なんだな。


 まぁ、全力で負けない程度に妨害させて貰いますけど。


 よし、いいか?勇者だけにだぞ?勇者にだけ、ちょーっと分からない程度に妨害魔法かけてくれない?なんか体だるいな程度でいいから。


 と、願ったら一瞬だけ勇者の動きが悪くなった。よし、成功だな。


 あとは適当にちまちまアリスをサイクロプスの攻撃から魔法で守りながら適度に邪魔すれば、勇者が倒すだろ。実力だけは一級品だからな。


「はぁぁぁぁぁぁ!!」


 と、わざわざ気合いを出さなくても倒せるのに、叫びながら剣を振ると、サイクロプスの首が吹き飛んだ。呆気な。もうちょっと粘ってくれたらまだまだ勇者の邪魔できたのに。


「ふぅ、終わったわね………これ本当に勇者に仲間っているの?」


 隣にいたルーナがボソッと言う。


 うん、俺もすっごいそう思う。だって勇者だけで完結してね?


 ということで、無事にサイクロプスを倒せた俺たち。街に戻るために色々と準備をしていたら、またもや珍しく勇者が近づいてくる。


「ティルファ。街に帰ったら話がある」


 ………………ほう?ほうほうほうほう?勇者の顔がやけにニヤニヤしていますぞ?


 これってまさかーーーーついに来た!?追放やっときたか!?


「…………分かった」


 と、演技で悔しそうな顔をしておく。それをみた勇者は更に顔をにやにやさせて、珍しく俺に何も言わないで離れていった。


 おいおいおい………来たぞこれ。やっときたぞこれ、追放。


 これで!ようやく!勇者のストレスから開放される!


「……大丈夫?何か言われた?」


「大丈夫ですか?ティルファさん」


「あぁ、大丈夫だ。帰ったら話があると言われただけだ」


 俺が追放されようと動き続けて大体6ヶ月。


 やっと、追放(されるかも)です。


 サイクロプスを倒し、依頼人であるこの街を統治している貴族から御礼金をたんまりと貰った、そして酒場へ。


 ……ついに来た。やっとこの日が来たと思えば、俺はニヤケ顔を抑えきれない。だから常に手を口元に持って行ってニヤニヤ緩んでいる顔を隠す。


 いつもだったら、勇者パーティーが顔を出せば盛り上がる酒場も、一瞬盛り上がったが、勇者の普段と違うオーラに困り、段々と喧騒が収まる。


 ちょうど空いていた4人がけの席に座り、俺は勇者の言葉を待つ。


 さぁいつだ………いつ俺に追放を言い渡す!俺の準備はとっくのとうに出来ている!俺を期待させるのはいいから早く言え!


「よし、今日も一日お疲れさん………と言いたいところだが、今日は残念なお知らせがあるなぁ」


 勇者の顔が笑みで歪む。そうか……そんなに俺を追放できることが嬉しいか。


 奇遇だな。俺もお前から追放されて嬉しいぞ勇者。


 それと、気持ち悪いから俺の方見るなバカ。


「今日限り、俺の独断でティルファが抜けることになった」


 キターーー!!!来ました!みなさん聞きましたか!さっきのセリフ!


 嬉しすぎて、テーブルに置いている手がプルプルと震える。やつから見たら悔しさで震えてるように見えるんだろうなぁ……。


「今までお疲れさんティルファ。金置いてとっととパーティーから抜けてくれね?」


「え!?まじっすか!?チィィィッス!!ありがとうございまぁぁぁす!!!」


 あまりにも嬉しすぎて席から立ち上がって腰を九十度曲げた。


 拝啓、敬愛する姉さんへ。


 俺、やっと追放されました(歓喜)。

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