冒険者との共闘

 

 そろそろ目的の場所に辿り着くと言うところで、ようやく勇者の姿が確認できた。


 どうやら勇者は誰かと話をしているようだが、果たして何を話しているのか。いつもだったら移動中に通り縋りの人に話しかけられても一言返すだけで、ほぼほぼ話を聞かない勇者が、がっつり話している所を見るのは何気に初めてかもしれない


 俺が一気に距離を詰めていくと話が終わったのか、勇者と話していた人物がその場を立ち去った。その人物は見た目的に冒険者だと思うが、何の話をしていたのだろうか。


「ああ、ようやく追いついたね。書記官君」

「はぁ、はは、こんな時間から盗賊の所に行くなら出来れば一言くらい欲しかったくらいですよ。勇者様?」

「一応言ったよ?」

「はい? 聞いていませんが」

「ドア越しに言ったのだけど、まあ、その時に君はまだ寝ていたかもしれないね」


 いや、おい。どれだけ早い時間に来たんだ? さすがに今日は日が昇り始めてそれほど経っていない時間には起きていたんだが。


「いつ頃ですか?」

「……まあ、1時くらいかな」

「は? それってまだ寝ていたとかじゃなくて、そもそもまだ、夜ですよね? 普通起きている時間ではないですし」

「普通はそうかもねぇ。まあ、いいじゃないか、追いついたのだしさ」


 悪びれもしねぇのかよ勇者。さすがに切れそうなんだが。


「さて、話しはこれくらいにして、得族の根城に行こう」

「え、あ、そうですね。って、先ほどの人は誰なのですか? 何やら話していましたけど」

「どうやら盗賊退治を依頼されてきた冒険者みたいだね。だから一緒に討伐することになったよ」

「はい? 依頼、出ていたのですか?」

「みたいだねぇ。ただ、人さらいのやつではなく、馬車を襲われた商人からの依頼みたいだ」

「そうですか」


 ああ、馬車が襲われて攫われたとかの話があったから、馬車で商品を運搬している商人の方にも被害は出ているよな。しかも商人なら依頼を出せるくらいには金は持っているだろうし。


「さあ、行こうか。そろそろ、合図が出ることだ」

「合図? そう言えばその冒険所の人は何処に…」

「ここの盗賊の根城は出入り口が2か所あってね…っと、合図が在ったから急ごう」

「え、ちょっと!」


 少し離れた森の中からファイヤーボールらしきものが打ちあがると勇者は話を打ち切り、盗賊の根城の出入り口に向かって走り出した。


 いや、何で勇者が盗賊の根城の構造を知っているんだ? あ、いや、冒険者の方が知っていて勇者に教えたのか。たぶんそうだな。


 昨日村についた時に、ここには始めて来たと言っていた勇者が知っているのはおかしいからな。

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