魔法の憧憬

九太郎

第1話

今日はどれぐらい歩いたのだろう……?

まだ落ち着ける場所が見当たらないからひと休憩はできそうないな…


「疲れてないわけではないけどな~」


 愚痴をこぼしながらも僕たち魔法使いは歩みは止めない、それでも知りたいことがあるし叶えたいことだってある…だから僕は歩みを止めないのだ。


「そういえば」


 後ろを振り返って思い出す、ぼくにはもう1人旅を一緒にしてきた人がいたのだと…


”師匠”だ…

 

 僕に魔法について教えてくれた師匠だが師匠は先日に亡くなってしまったのである…原因は老衰だ……


 僕たち魔法使いは根無し草の旅だ、年齢の事もあった旅を続けていたこともあり限界は来ていた

そしてそれは師匠も僕は理解はしていたのだ、いつかこんな日が来ると…わかっていたら後は簡単だった…

寝込んで…最後のお別れをして…見送ったら埋葬をする…


「……師匠は…」


師匠はあの時何と言っていたのだろう…?


 ふと思い出す師匠との別れの時の会話、先日に聞いたはずなのにすぐに思い出せない。

 まだその時はうまく理解ができなかったのか記憶にうまく思い出せない、確か魔法について話し合っていたよう気がする。

 

 死ぬ間際まで魔法について話すとはさすが師匠だよな……確か……


その瞬間、雨が降ってきた


「まずっ! ひとまずどこかで雨をしのがないと」

_____________________

「ふう~~~」


男は焚火に手を当てながら、ひと心地をつく。


何とか安全そうな洞穴があってよかった…

取りあえずはこれで寝どこも確保できたし…今日はこのままここで雨宿りになるかな…


 焚火の火を見つめながら先ほどの魔法について思い出そう…確か師匠は”魔法使いの意味”とか言っていたような気がする…意味? 

 師匠は何が言いたかったのだろう? ほかに意味でもあるという事なんだろうか、わからない…ひとまず魔法使いの意味をもっと考えてみよう…


どれだけ思考にもぐってもそれが”魔法使いの意味”と絶対な答えが出ない……師匠はこれがわかっていたのだろうか?


もしかして別のアプローチが必要だったのか? 僕は別の形で答えを探して”そもそも魔法とは?”を考えて行ってみよう。これなら大丈夫だ魔法についてなら僕は知識がある。

 

 魔法とは便利なものだ、何かあったとしても魔法で対応できる。誰でも使えるわけではない上に完全に覚えるまではいろいろと複雑だと思っちゃうこともあるけれど…


それでも魔法はすごいから知る意味があるんだ…だから夢がある…うんやはり魔法使いの意味はこれなのか…?


男はさらに考える、わからないから考える…そして


 後は……魔法の意味について知る…? でもさっき魔法の意味は考えられたはず…なら…”僕の魔法使いの意味”かな?

そんなのは決まっている魔法ついて探求して今よりもいろんな魔法を覚えることだ!!


それは何の意味になる?


え?


目の前に人型の黒い渦が現れる


だからそれは世界にとってどんな意味がある?


それは…


まぁ答えは出ないよね、それは君だけの理屈で答えでは、ないのだから…


…………でも…


それならこれはどう? 君が魔法を覚えて誰が得をする?


それは…自分だ…


そうだね、でもこう考えると魔法ってずいぶんと自分勝手だよね


……それは…そんなことは…


わかっているよ…魔法はそんなものじゃない…

でもそれは「幻想」だよ…


……


師匠を思い出せよ、魔法を追い求めた結果があれだ「現実」はあんな感じでお前もあんな感じだ。


そんな…


 男は真下が泥で飲み込まれそうになっていた、そして真上には明るい光が差し込んでいた。

必死に手を伸ばしたが届かなかった…


諦めろ、どんなに手を伸ばしてもできないことや無駄なことはあるって


嫌だ…!!


飲み込まれる瞬間男は師匠の言葉を思い出す――――


「たとえなにがあっても魔法使いは歩みを止めてはいけない、疲れたり、悲しんだり、壊れたりすることはあるけれど否定してはダメ、だから歩みは止めてはいけない……」


その言葉を思い出して、真上の光が広がっていき男を包み込んでいく……


 気が付くと洞窟の中でどうやら僕は眠っていたようだ、火もすっかり消えていてあたりは暗い

洞穴から抜け出して外を見ると朝になっていて、雨はすっかりやんでいたので荷物と杖をもち洞穴から出る。

そして先ほどの言葉を思い出す


結局答えは…出なかった…けど…


僕たち魔法使いは歩みを止めてはいけない……

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魔法の憧憬 九太郎 @Ninetarou

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