第7話

「んんっ……どこだ?」


 目が覚めると俺は見知らぬ空間にいた。だがここ最近で随分と嗅ぎ慣れた甘い香りで満たされているこの部屋は恐らく紅愛の部屋だろう。


…俺はあの後気絶してここまで運ばれたのか。


 起き上がるためにベッドへ手をつこうとするが何かによって腕を拘束されており、動かすのを阻害されていた。脚も同様でどうやら俺は四肢を拘束されているようだった。


 何とかして拘束を外そうと腕を動かしていると扉が開き、お盆を持った紅愛が部屋に入ってきた。


「おはようございます蒼太くん。体調は悪くないですか?」

「おはよう紅愛……これ外してくれない?」

「駄目です。さてご飯にしましょう。お腹も空いていることでしょうし私が作ってきましたよ」


 紅愛がベッド横のサイドテーブルにお盆を置くと良い匂いがこちらに漂ってきた。紅愛がご飯を箸でつまみ、それを自らの口に含んで咀嚼する。そして抵抗出来ない俺と唇を合わせて、中のご飯を流し込んできた。


「……ご飯を食べる時は体を起こした方が良いですね。ちょっと待っててください」


 唇を離した紅愛が懐からリモコンを取り出してボタンを押す。すると機械音が鳴り、俺を拘束しているベッドが動き始めた。

 上半身が起き上がり、足を伸ばして座った状態になる。紅愛は俺の体が起き上がったのを見て口移しを再開した。ご飯が咀嚼されたことにより甘くドロドロの状態となって流し込まれる。


「美味しいですか?」

「うん。美味しいけど普通に食べたいかな」

「それは駄目ですよ。蒼太くんのご飯は私があげるのです。さっ何が食べたいですか?」


 ……ここは大人しく従った方が良さそうだ。今の紅愛を刺激したらヤバいことになると思う。あくまで直感だが。


「……その焼き鮭が食べたいな」

「分かりました。あんっ……くちゅ、くちゅ…んっ」


 また唇を合わせて紅愛の唾液でドロドロになった鮭を流し込まされる。このままではイケナイ何かに目覚めてしまいそうだ。


「味付けは大丈夫でしたか?もうちょっと薄い方が良かったりしませんか?」

「いやちょうどいいよ。ご飯くれる?」

「ふふっ良いですよ。おかわりもありますからいっぱい食べてください」



 普段なら10分もあれば完食できる量のご飯をたっぷり時間をかけて胃に流し込まれた俺は紅愛に質問を始めた。


「今は何日?」

「2月19日です」


 ……デートの翌日か。つまり俺は半日以上も寝てたのか。


「デートは?」

「中止しました。蒼太くんは気絶してしまったのであの後ここでお泊まりしました。蒼太くんの御家族にはちゃんと説明してあります。二つ返事で了承してくれましたよ。やはり親が良いと子供も良くなるんですね。理解のある御両親で私は感動しました」


 父さん母さん、あんたらの息子、ほぼ監禁状態だぞ?何で快諾してんだよ。


「……なんでこんな事をしたの?」

「蒼太くんが別れるなんて言ったからですね。冗談でも言う気が起きなくなるくらい私に惚れさせ、依存させようかと思いまして。私、欲が強い人ですから蒼太くんにはとことん私しか求められないようになってほしいのです。どうです?引きましたか?」

「いや。でもあれは紅愛が泣き止まなかったから本当に仕方がなく俺も嫌だったけど言ったんだよ」

「それは悪かったですけど……やっぱり他のやり方があったと思います。私に肌を見せて異常がないか確認させるとか……きゃっ///」

「いやあそこでしたら捕まるからね?」

「家の力で揉み消しますから大丈夫です」


 冗談に聞こえねぇ……。紅愛なら本当に俺が犯罪を犯しても揉み消してしまいそうだ。


「聞きたいことは聞けましたか?そしたら私もそろそろ限界が来ているので行動に移りたいのですが」

「行動って……?」

「愛してる人が動けず無防備な状態で目の前にいたらすることは一つしかありませんよ」


 ペロッと舌なめずりをした彼女を見て俺は襲われるのだと瞬時に理解する。


「大丈夫です。怖くありません。蒼太くん次第ですぐに終わりますからね」


 紅愛がベッドを元に戻しながら俺に被さるように乗っかってくる。遂には少しだけ動かせていた腰も紅愛によって固定され、身動き一つ取れなくなる。


「蒼太くんは匂い嗅ぎの刑に処します。私にいーっぱい匂いを嗅がれちゃいます。それだけじゃなくて私の匂いを延々と嗅ぎ続けなければなりません。どうです?辛いですよね?別れたいって思ってる人には辛くて堪りませんよね?でも段々と私の匂いを良く感じてきちゃいます。別れたいのにその匂い嗅がないと生きていけなくなるのです。私から離れられなくなるのです。私の匂いを求める蒼太くん♡あぁもう……想像するだけで最っ高です♡」


 それはむしろご褒美ではないだろうか。そう思っていると紅愛がポケットから布を取り出しそれを俺の頭に被せてきた。

 何だ?この独特な匂いに左右に穴が2つ空いてる特徴的な布の形…ってパンツじゃねぇか!?ふざけんな。今の俺、傍から見たら目の前の女性のパンツ被ってる変態にしか見えねぇだろ!


「ふふふ♡私のパンツの匂い嫌ですよね?外したいですよね?でもそのうちその匂い嗅がないと生きていけなくなるのです。私が蒼太くんの匂いを嗅がないと生きていけないように。さぁ…たくさん楽しみましょう♡換えはまだまだ沢山ありますからね♡」


 俺の地獄が始まった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

という訳で次話から篠崎さんによる神谷くんへの教育がスタート致します。

それとお知らせでしばらくの間お休みさせて頂きます。少しばかり現実が忙しくて執筆出来なそうです。申し訳ございません。コメント返信くらいは出来ますので意見や指摘があったらどんどん言ってください……暴言使わないなら。

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