第224話:煉獄のディブロ⑤
『……ふ……ふざけんじゃねえぞおおおおっ! てめぇ、さっきまで死に体だっただろうがあっ!!』
怒声を響かせながら、ディブロは一人の人物を指差しながら睨みつける。
「……はは……上手く、いきましたね」
「……本当に、やったん、すね!」
「……ありがとうございます。カナタ様、リタ」
疲労困憊のカナタとリタがそう口にすると、彼の手を握りながら立ち上がった人物――アルフォンスがニコリと微笑んだ。
「あとは私たちにお任せいただき、二人は休んでいてください」
「い、いえ。私はこの場を守る、魔法を――」
「アイスヴェール」
リタがマジックウォールを再展開しようとしたところで、アルフォンスが氷のカーテンを顕現させた。
アイスヴェールの内側はとても涼しく、熱波がまったく感じられない。
リタのエアヴェールでは掛け初めですら多少の熱は入ってきてしまったが、アルフォンスのアイスヴェールは完全に熱を遮断していた。
「熱だけではなく、魔族の攻撃も防いでくれますから」
『……あぁん? てめぇ、ふざけてんじゃねえぞ! ヘル・インフェルノ!』
アルフォンスの言葉を挑発と取ったディブロは、苛立ちのままに魔法を撃ち出した。
『ぎゃははははっ! 防げるものなら防いでみやがれ!』
「ライル様、リッコ様、こちらへ」
『……あぁぁぁぁん?』
しかし、アルフォンスはディブロを無視するようにライルグッドとリッコに声を掛け、彼を倒す手段を伝えていく。
その光景を目の当たりにしたディブロの表情は怒りに染まり、その体は小刻みに揺れていた。
『…………ぶっ殺す! 目覚めろ――地獄の門番!』
ヘル・インフェルノが迫っている中で、ディブロはさらなる一手に打って出た。
目の前に地獄の門が顕現すると、門がゆっくりと開いていき、その中から三首のSランク魔獣――ケルベロスが姿を現したのだ。
『『『ガルアアアアァァアアァァッ!』』』
『ぎゃははははっ! こいつはさっきまでの魔獣とは強さの桁が違うぜえっ! さらに俺様の魔法の影響を受けねえ! 焼かれるか、食われるか! さあ、どっちだあ!』
「黙りなさい――ダイヤモンドダスト」
いつものアルフォンスからは想像もできない低い声音でそう口にすると、ケルベロスの周囲は一瞬にして彼の魔法に支配された。
「現れていきなりですが――死になさい」
『『『ガルアアアア……アアァァ……ァァ……』』』
「そっちの火の玉も邪魔ですよ」
『……あり得ねぇ……んだよ……何なんだよ、てめえはあああっ!?』
ケルベロスはダイヤモンドダストの細氷が体を凍らせるだけでなく、鼻や口から体内へ侵入して内側からもダメージを与えてしまう。
気づけば致命傷に至るダメージを受けていたケルベロスは、何が起きたのか理解できていなかったことだろう。
さらにヘル・インフェルノもアイスヴェールに近づいただけで表面から熱量が奪われていき、接触した時には炎が凍りつくという不思議な現象を目の当たりにすることになった。
「……アル様、強過ぎない?」
「……アル、お前はいったい?」
驚いているのはディブロだけではなく、リッコや長年共に行動しているライルグッドも同じだった。
「どうやら、カナタ様とリタに魔力を分けていただいたおかげで、私の中で何かが目覚めたようなのです」
「何かが、目覚めただと?」
「……カナタ君だけじゃなくて、アル様にも規格外の力があったってこと?」
リッコの問い掛けにアルフォンスが口を開こうとしたのだが、そこへディブロの雄叫びがこだました。
『ふざけんじゃねえぞおおおおっ! 殺す! 殺す、殺す! 殺す殺す殺す殺す!! てめえらは……特にてめえは絶対にぶっ殺おおおおす!!』
目を血走らせ、拳を握りしめたままのディブロがアルフォンスを睨みつけながら強烈な殺気を迸らせる。
だが、アルフォンスはそれを軽く受け流し、小さく息を吐き出しながらフリジッドの剣先をディブロへ向けた。
「それはこちらのセリフです」
『ぶっ殺す!』
煉獄のディブロとの一戦は、佳境に入った。
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