空模様

砂上楼閣

第1話

掘る、掘る、掘る


君がいつも見ていた柿の木の


その根元にスコップをつき立てる


空は青くて晴れ渡っている


木の下だけ雨模様



掘る、掘る、掘る


思い出の木の下を


傷つけないように


でも力を込めて


柔らかい土、冷たい君



掘る、掘る、掘る


僕より長生きな木の下を


適度に深く、でも手が届くくらい浅く


掘り起こされないように


でも、届かないのは…



掘って、すくって、整えて


思い出の下に君を寝かせる


君の好きなご飯を入れて


君のお家とおもちゃを入れて


寒くないよう、優しく包んで



被せる、蓋をする、埋める


思い出を閉じ込めるように


悲しみに蓋をするように


痛みから目を背けるように



埋めて、ならして、手を置いて


思い出との別れ、さようなら


痛みとの決別、ごめんなさい


もう触れられない、寂しいよ


晴れているのに、ここだけ雨



時が流れて、流れて、流れて


ぽっかり空いた胸の穴


埋めたはずなのに空っぽで


忘れたはずなのに苦しくて


君の影が視界をチラつく



はらり、はらり、はらり


木の葉が舞って、落ちて、つもってく


つもって、おおって、隠してく


隠しきれない胸の穴


寒い、痛い、寂しいよ




流れて、変わって、巡ってく


ああ、ああ、ああ…


思い出の柿の木の


痛みに蓋した木の根元


そこに咲いた小さな芽


芽が出て、伸びて、蕾ができて


花が咲いて、散った後


残っているのは懐かしい


君が好きなごはん、小さな種


今日もここだけ雨が降る


だけど心は晴れ模様

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空模様 砂上楼閣 @sagamirokaku

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