第8話 悲劇
「優羽、この前はごめんね〜。この前私もちょっとどうかしてて。今日は仲直りの印に飲もう」
和佳奈と飲む事になった今夜。
「あ…うん…」
私的には複雑だった。
あの日、あの澪のビビリ様は半端じゃなかった事もあり、女性が苦手な澪がするはずがないと。
あの日の事情は聞く事はなかったけど、二人の間には何かがあった事は分かっていた。
和佳奈は、私含む他人には、まだ見せた事のない行動を裏でしているのではないかと疑い不審を抱いた瞬間だったのだから………
一先ず私達は飲む事にしたけど、飲む事を控えていた。
「今日は、お酒進んでないね」
「あ、うん…今日は調子悪いのかなぁ〜。飲む気はあるんだけど…。ごめんね。せっかく和佳奈、誘ってくれたのに」
「ううん、大丈夫。調子悪い時ってあるから分かる。ゆっくりで良いんじゃない?」
「うん、そうだね」
私達は色々と話をしながらお酒を飲む。
「ねえ…優羽って、澪君の事、どう思ってるの?」
「えっ?」
「好きなの?」
「…それは…」
私の中では好きとか嫌いとか、まだハッキリとしていない。
恋愛感情になるには、正直まだ時間が掛かりそうだけど………
「私…澪君の事好きなんだ」
「…そう…なんだ…」
「うん。だから…仲を…取り持ってほしいなぁ〜♪」
「…和佳奈は美人だし…私が間に入らなくても大丈夫なんじゃないかな?」
「じゃあ…澪君に告白してみようかな…?」
「…うん、良いと思うよ」
「そう?」
私達はもう少し話をし別れる事にした。
「あっ!もしもし、今、あの子と別れたから後は宜しくね」
和佳奈が、何かを企んでいる事など知るよしもなく。
私は夜道を一人で帰る中、私の携帯に連絡が入る。
「はい、もしもし?」
「優羽?俺…澪だけど…」
ドキン
「えっ?…澪…?」
「悪い…今…大丈夫か?」
「うん…どうかした?」
「…いや…仕事が終わって…急に優羽に電話したくなって…一緒に飲めたらって…」
「良いよ…今…私も和佳奈と飲んで帰ってる途中なんだ」
「和佳奈ちゃん?それで、お前大丈夫なのか?」
「えっ?あ、うん…澪の事あったから飲むのは控えてたから」
「そっか…」
「待ち合わせする?…あっ、でも…一緒にいたら…和佳奈…妬くかな…?」
「えっ?」
「あ…ううん…ごめん…。ちょっと…事情あって…」
次の瞬間。
グイッと背後から抱きしめられるようにされた。
「きゃあっ!」
プツッと電話が切れる。
「優羽!?おいっ!もしもしっ!優羽っ!」
「………………」
「…優…羽…」
私は口を塞がれ人気のない路地裏に連れて行かれる。
「……………!!!」
押さえつけられ口の中には布らしきものを入れられ騒ぐのを押さえられた。
洋服が引き裂かれる中、逃げたくても怖くて逃げる事が出来ずにいた。
〜 澪 Side 〜
俺は何度も連絡をした。
しかし繋がるはずがない。
「優羽…」
その時、俺の携帯が鳴り響く。
俺は、優羽かと思い画面表示を見ないまま電話に出た。
「優羽っ!?」
「…もしもし、澪か?悪い、期待外れだ」
「…潤…」
「お前、今日残業していたけど、今、何処にいる?」
「今…街…。だけど、今、一刻も早く連絡したい奴がいる」
「優羽ちゃんだろ?その優羽ちゃんなんだけど…今から俺が言う所に来て欲しい」
俺は潤から場所を聞いた。
「分かった…すぐに向かう」
俺は目的地に向かった。
「潤…優羽は?」
潤は首を左右に振った。
俺は潤から、優羽の話を聞いた。
和佳奈ちゃんと一緒にいる所を見掛け、二人が別れた後、優羽ちゃんに声を掛けようと後を追おうとした時、和佳奈ちゃんが電話で誰かと会話している気になる内容が聞こえてきて、すぐに優羽を追ったものの、この結果だったという。
助けられなかったのが凄く悔しいと潤は自分を責めていた。
「俺じゃ無理だ…。俺って事は分かっているみたいだけど…俺が声かけても…来ないでの一点張り。多分…お前も受け入れないかもしれないけど…俺よりも少しは会話は出来るだろうと思う…でも…もしもお前を突き離すような状況でも…お前は優羽ちゃんと向き合った方が良い…」
「えっ…?」
「お前だけでも受け入れられるようにしなきゃ…優羽ちゃんを救う事は出来ないし…心を開かないかもしれない…」
「………………」
俺は優羽に声をかけた。
「…優…羽…?」
「…だ…れ…?」
「…俺…澪…だけど…お前を救いたい。…だから…」
「…澪……?…無理……だよ…」
「…優…羽…」
「例え…澪…だって分かっていても…」
「じゃあ…このままここにいるのか?」
「…それは…」
「ゆっくりで良いから…」
「…………」
「優羽のタイミングで良いから、俺達に声掛けて欲しい。一緒に帰ろう。優羽…」
私は自分に言い聞かせる。
そして、澪に声を掛け、私は澪におんぶをされ、潤平君は私達に気を遣いながらも帰る。
向かった先は、澪の部屋だった。
「じゃあ、澪、優羽ちゃん、俺は帰るから。優羽ちゃん無理しなくて良いから、澪にだけは心閉ざさないでゆっくり心開いて元に戻って欲しい」
私は頷くのに精一杯だった。
潤平君は帰って行った。
「優羽…」
澪は私に歩み寄る。
「一先ずシャワー…」
私は震える手と体で、頑張って澪に触れ抱きしめる。
「…優…羽…?」
「…一人に…なりたくないの…」
「…傍にいるから…」
首を左右にふる。
「………………」
「…傍に……いるだけじゃ……駄目…だよ…私…」
ゆっくりと離す澪。
「…優羽…」
「恐怖を取り除いて欲しい…」
私の両頬を優しく包み込むように触れる澪。
ビクッ
体が強張る。
「優羽…」
私は澪の手の上に自分の手を重ねる。
「…お願い…澪…」
澪は、私にキスをする。
ビクッ
「…優羽…無理しない…」
私は澪にキスをした。
「…私に触れて…何度も何度も挑戦して触れて欲しいの…澪だけでも…受け入れられるようになりたいから…。だから……お願い……。…澪…」
私は、自分に言い聞かせるように………
「…優羽…震えて…」
「良いから…そのまま…続けて…澪…お願い…」
澪は、私を気にしながら………
「…優羽…」
「…澪…」
気付けば私達は身体を1つに重ねていた。
「…澪…ありがとう…だけど…ごめんね…無理言って…」
「…お前を救えるなら…構わない…。…だけど…都合の良い関係なんてしたくないから…」
「…澪…」
「和佳奈ちゃんに何言われたかは知らないけど…俺…お前以外…誰もいらないから…ゆっくりと付き合ってお互いの傷埋めていけたらと思う」
澪はキスをする。
「…優羽…ゆっくりで良いから…付き合っていかないか?」
「…だけど…」
私は、和佳奈の言葉が脳裏に過る。
「…優羽…?」
「付き合っていきたいけど…和佳奈…」
「…優羽…彼女は、お前を傷付けてきてるんだ。俺は付き合いたいとは思わない。優羽…潤と俺を信じて俺達に任せてくれないか?」
「えっ?」
「あんな事があった後だ。単独行動は控えて欲しい」
「…それは…」
「正直お前を傷付けておいて普通に仕事先に来れるとは、俺は思わないけど?俺達は優羽を守りたいから…」
「…澪…」
「優羽、有給休暇取る事は可能か?」
「うん…」
「だったら有給休暇を優羽には取って貰いたい。潤とは今後の事を話し合ってみようと思う。もしかすると、彼女は職場を辞める可能性もある」
「えっ?」
「ちょっと…気になる事もあるし」
「気になる事?」
「ああ…ちょっとな…」
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