第7話 引きこもり宣言
佑介は思う。超絶美少女の整った寝顔を見ながら。やっぱり、この子は泣き虫あっちゃんなんだと。
昨日、ようやく二人は再会した。そして、婚約者という確かな繋がりを得た。しかし、明日香を襲った事件は笑い事ではなかったのである。
久しぶりに1つの布団に二人で寝たのであったが明日香は震えていた。よほど疲れていたみたいですぐに寝息が聞こえたがすぐにうなされ始めた。
「ゆうくん。助けて・・・助けて・・・・いやあああ・・・こないで・・・・」
「明日香。大丈夫。僕はここに居るよ。だから、大丈夫。」
そういって昔みたいに頭を撫でると寝息が落ち着いた。しかし、明日香の手は震えぱなしである。この時点で佑介はどうしようもない激しい怒りを感じていた。そして警察官が佑介だけに耳打ちした言葉を思い出す。
「この手の事件の被害者は心に傷をおってしまいます。だから支えてあげてください。どうしようもない時はカウセリングを受けてください。こちらが犯罪被害者支援の資料です。後、今回の事件の加害者は逮捕か補導されて身柄を抑えられていますが人数が多いために他にこの計画へ参加していたものがいるかもしれません。ですので用心してください。おかしいなと思ったらすぐご相談ください。」
佑介は明日香を改めて支えようと決心したときに超絶美少女は目を覚ましたのである。
「おはよう。ゆうくん。にへっ」
「おはよう。明日香。疲れはとれたかい?」
「うふふ。久しぶりにゆうくん成分補給出来たから満足!」
と言いながら手が震えていることに佑介は心を痛めた。
「うおしゃーーーーーーーーーーーーーーー。僕は無性に学校に行きたくない!!!!!!!だから、しばらく休むぞおおおおおおお!!!引きこもってやるぞおおおおおおお!だから、婚約者の明日香も一緒に引きこもろう!!!!眠ってゲームしてぐーたらして働きなさいって文句言われながらご飯食べてずーと明日香といちゃいちゃするんだああああああああ。」
「な、なに?急にどうしたのよ。びっくりするじゃない。」
「明日香。旦那様の決定だ。これから僕達、夫婦は引きこもります!これ決定事項だから!」
「バカ弟、朝からうるさい!けど引きこもりは頑張りなさいよ。応援するから。」
と扉の向こうから姉ちゃんのありがたい応援が聞こえた。
「よし!母ちゃんに引きこもる宣言をしてくる。ついでに朝飯も奪ってくるからちょっとだけここで待っててね。」
「ちょっと・・・・もう・・・ゆうくんはバカなんだから・・・・ありがとう・・・」
佑介は1階にいる母親の前に行くと真剣に土下座した。
「母ちゃん。明日香が一晩中うなされて震えているんだ・・・バカな僕は一緒に居ることしかできない・・・お願いだ。しばらく、二人で学校を休ましてもらって引きこもりさせてもらえないだろうか?もちろん、明日香の将来について責任取るし、どうしても今の学校を嫌がるようだったら、二人で通信制学校へ転校して学歴もちゃんとするから明日香の生活費も僕が働いて稼ぐからどうか許してもらえないだろうか?」
そう母親に懇願したところ隣に人の気配を感じた。
「お義母様。私からもお願いします。ゆうくんに見られてしまったので隠せませんけど昨日から震えが止まらないんです。もちろん、ゆうくんに負担がかからないように治らないようでしたら私から身を引かせて頂きますので、ゆうくんは復学してもらいたいんです。私のために、ゆうくんの将来は奪いたくないんです。ただ、ゆうくんとずっと一緒にいたいので頑張って治しますのでどうか、しばらくお時間をいただけませんか?」
明日香も佑介と並んで土下座していた。それを見た母親はため息をつきながら
「明日香ちゃん。今は頑張らなくていいのよ。何も考えずにバカと思いっきり遊びなさい。ただね、引きこもるのは反対です。佑介。お前の趣味に明日香ちゃんを引き込むんじゃないよ。学校なんてどこでもいいのよ。だから、休学するのはいいと思うわ。だけど不健康な生活を送ってはだめ。ちゃんと健康的な生活をしてしばらくは無理かもしれないけど徐々に外出できるようにしなさい。ご飯は文句言わずにちゃんと出すし、二人が必要なものとか、お金もちゃんと準備するからそこは安心しなさい。ただ約束して。明日香ちゃん。身を引いたらだめよ。かならず二人で一緒に乗り越えていくっておばちゃんに・・いえ・・・お義母さんに約束して。」
「はい。。ううっ・・・ありがとうございます。約束します。」
「うん。分かったわ。明日香ちゃん。それで佑介!」
「ひいいいいい!」
「あんたはこんなにいい子をもらったんだから死ぬほど頑張りなさい!もう今までのちゃらんぽらんは本気で許さないからね。しばらくは明日香ちゃんと一所懸命に遊びなさい。中途半端は許さない。ちゃんとあんたがしでかした浮気を反省して明日香ちゃんを楽しませなさい。わかった?」
「ひいいいいい・・・分かりました。はい。不肖者の僕ですが、誠心誠意、明日香を楽しませます。」
母ちゃんには全くもって頭が上がらない佑介であった。佑介は知っているのである。この一見普通の母ちゃんは日本で一番難関大学出身で大学時代に会社を興し、今は世界有数の会社の社長であることを。そして、この母ちゃんが本気で応援してくれるという意味を。そして一見とても厳しい言葉だけど身内にめちゃくちゃ甘いという事を。
「母ちゃんは学校に話つけてくるから。そしてそのまま出勤するから今日は帰りが遅くなるわ。お父さんも遅くなると思うからこれでとりあえずご飯を食べなさい。使い切っていいからね。佑介。念のために家の防犯システムは稼働させときなさいね。会社に着いたらボディーガードを手配するから詳しくは佑介に電話するから電話持ってなさいよ。」
と佑介は恐らく帯付きの100万円と思われるお金を渡された。そう、これである。この母ちゃん鈴江というモンスターは本気でだだ甘なのである。隙を見せたら高校生の財布に100万円をつっこむモンスターなのである。佑介はこのモンスターに財布が見つからぬよう努力してきたが、お金を使わないと鈴江はものすごく怒るのであった。経済が回らないと激しく説教されるのである。その為に佑介は怒られないようにお金を隠している。その額は笑えない額になっているのであった。
「ねえ。ゆうくん。お義母さんパワーアップしてない?また昔みたいに夕飯時にネズミランド行きたいって言ったら次の朝、アメリカのネズミランドで目が覚めることってないよね?」
「ん?あー。明日香。諦めてくれ。僕はこっちに引っ越す前に南極行きたいって言ったら眠っている間に3回ぐらい南極に居たから・・・・母ちゃんがおかしいの知ってるよね?もう明日香は義娘認定されてるから遠慮とか容赦はしてくれないと思うよ。さっきさお金渡されたじゃん?100万円じゃなくて一人100万円だからね。はいこれ。ノルマは明日までに二人合わせて200万円使い切ることだから・・・でさ・・・さっき一生懸命遊びなさいって言われたじゃん。あれ本当に洒落にならないレベルになるから覚悟してね・・・。」
「少し・・・現実逃避していいかしら・・・・今ね、私の両親からもメールきてね・・・私の口座に洒落にならない額が振り込まれたみたい・・・・。」
「oh・・・明日香の両親もモンスターだからね・・・僕は忘れないぞ。洋風のお城かっこいいって言ったら次の日の朝、僕名義の洒落たヨーロッパのお城で目が覚めたの・・・たしか、明日香はあの城からの風景好きだったよね・・・怖くて僕にしか言わなかったけど・・・あー思い出したあの時はひどかった!気に入らないとか言って僕の両親と明日香の両親合同でヨーロッパで一番の企業連合を買収したよね・・・知ってる?あの企業連合のオーナーは明日香と僕の共同名義になってるって?」
「うん・・・知りたくなかったけど知ってるわ・・・ねえ。ゆうくん。小学三年生のときにこの現実から逃げたくて駆け落ちしたよね。あの時は二人で泣いて説得して、しかも一緒にいるからダメなんだって別れることを選択したけど・・・酷くなってるよね・・・。」
「それは言わないで。僕も悲しくなってきたから!明日香。そういえば近々引っ越しだから覚悟してて。一階に降りたとき、図面持ってたから素敵な愛の巣が準備されてると思うよ・・・。」
「oh・・・。」
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