第3話 優しいお仕置き
「さて・・・ゆうくん。申し開きを聞きます。そのうえで判決を言い渡します。」
明日香は佑介の目の前に座り冷徹な目でそう言い放ったのであった。
明日香があっちゃんだと判明した日、午前中の休み時間はクラスメイトに囲まれて話ができなかった。4時限目前の休み時間にはすっかり明日香の冷徹な目が復活しており激しい怒りを感じた。それを感じ取った佑介は4時限目が終了した途端逃亡を図ったのである。
「じゃ。僕は旅にでます。探さないでね。小岩井くん。」
「はっ?まじで?この状況で逃げるとかありえないでしょ?。」
「そうですよね。浮気者ですよね~。ニコッ。」
「うわわああああああ。胸倉をつかまないで~。あっちゃん。落ち着いて!あと小岩井、ニヤニヤしやがって!」
明日香はニコニコしているがすでに佑介の胸倉をつかみ、左手は佑介の手を拘束していたのであった。
「じゃ。いきましょ。ニコッ」
「ああああああああああああ」
佑介は明日香に物理的に引きずられ生徒の少ない中庭のベンチへ座らされた。
「あっちゃん。申し開きってなんのこと?ぼ、ぼくは多分、悪い事してないよね・・ひょっとしたら、しちゃったかもしれないけど・・・ねっ。その笑ってるんだけど目が座った状態はやめて欲しいな~ははは。」
「ふーん。そんなこと言うんだ。へー。亜紀ちゃんも苦労しただろうな~。」
「え?」
この瞬間、佑介は己の身の危険性に気が付いた。全身から冷や汗がでてどう言い訳しようか頭をフル回転させた。しかし、明日香は無情にも言い放つ。
「亜紀ちゃんと付き合ったんだもんね~手紙に惚気話を書いてくれたもんね~。クリスマスにはちゅーもしたんだよね~?あ~れ?たしか私も恋人って言ってたよね~
二股だったんだ~。私、ずーと待ってたのに。二股されたし。あの時、確かに君だけ愛してるって言ってくれたよね~。ね~。どうしてなのかな~。」
「明日香さん。あの~手に爪が食い込んで痛いのですが・・・。」
「はあ?浮気したくせに。なにか文句ある?」
「いえ・・ありません。僕が全面的に悪かったです。ごめんなさい。」
やばい。あっちゃんのめんどくさいモードに入ってる。このモードのあっちゃんは静かに長く怒るんだよな・・・いや・・・今回は激しい怒りを感じる。やばいかも・・・
「もう。もう浮気しないでね。たしかに、私が近くに居なかったから寂しかったのは分かるけど・・・私もすごく寂しかったんだから・・・もう・・・離れないでよ・・・」
「明日香さん泣かないで。本当に、僕が悪かったよ。うん。これからは離れないから安心して。だけどさ・・・明日香さんがこんなに美人になってるなんて思わないじゃないか。だから、さあ、今の明日香さんは高嶺の花で僕なんかじゃとても釣り合わないよ。あの時の約束は無しってことでどうだろう?」
「本当に!!!!最低!!!!!ゆうくんのばーーーーーーーーか!!!!」
あっ。これ往復ビンタくるな・・・・佑介!歯を食いしばれ!
「もう怒ったわ。お仕置きよ!」
明日香はそう言うと佑介の頭へ手を伸ばし自分の胸に佑介の顔を埋めた。
「・・・・・むがっむがっ・・・ぐふっぐっふ・・・タンタン『明日香の腕に降伏のタップ』・・・ぐふぁぐふぁ、ぜーぜーぜー。明日香さん。死んじゃう!まじで息できなかったから!」
「ゆうくんが変なこと言うからでしょ?めっよ!」
「うっ!だめだ!そんな可愛い顔でもごまかされないぞ!殺す気か!へたくそな口笛ふいてもごまかされないからな!てか口笛、昔と同じじゃないか!」
「浮気するゆうくんがいけないんだもん!しかも、久しぶりの再会なのに初めましてとか言うし!気づいてほしくてずーとゆうくんのこと見てたのに気づいてくれなくて!話しかけたくても緊張しちゃって話しかけられなかったし!てか、明日香さんって言うな!よそよそしくしないで本当に悲しくなるから!むきーーーーーー!!」
「あー!僕も頭にきたぞ!あっちゃんだって始めから睨んできたよね?入学式の時も怖くてとりあえずあいさつしたんだよ。なんでその時に言ってくれないの?すぐにわかったのに!たしかに亜紀ちゃんと付き合ったのは悪かったけど、手紙であっちゃんに聞いたら付き合ってもいいって言ったじゃん。その後も手紙送ったけど返事なかったし、それ以来全く返事もらってないんだけど?」
「うっ。だって、ゆうくんが本当に付き合うと思わなくてショック受けたんだからしょうがないじゃない!亜紀からは勝利宣言の手紙まできたし!あー思い出したら頭にきた!ビンタさせなさいよ!」
「なんで明日香は昔から僕にだけビンタするんだい?結構痛いんだから!てかこの前往復ビンタされたときになぜかちょっと安心しちゃって新しい世界の扉を開いちゃったと思ったじゃないか。明日香のビンタだから安心しちゃったのかな・・・その時に言えばよかったね・・・。」
「ビンタで私を思い出すって、どういうこと?ゆうくん。亜紀に変な性癖覚えさせられたんじゃない?」
「性癖言うな!姉ちゃんも言ってたし!なんで僕の周りの女性は僕の性癖を気にするんだ!」
「あ!あずさお姉ちゃんから聞いたからね!佑介が幼馴染もののエロ本集めてるって!きもいんだけど?」
「ぐふっ。て、姉ちゃんと連絡取ってた?」
「え?聞いてないの?ゆうくんが熱出した日にお姉ちゃんと私でゆうくんを着替えさせて寝かしたんだよ?」
「へ?えーーーー?家に来てたの?」
「朝まで一緒にベットで寝てたじゃない?ビンタしちゃってさすがに謝ろうと思って家に行ったのよ。ゆうくんが引っ越ししてからゆうくんはいなかったけど何回もお邪魔してるわよ?」
「はい?本当に聞いてないんだけど!あーーーあっちゃん・・・僕のベットにいい匂いがしてた時があったんだけどもしかして寝てた?」
「はっ!寝てないわよ・・・ぴゅーぴゅー♪」
「おいこら!隠せてないから!もういいや。不毛な言い争いは昔から無駄な時間だったからもうやめる!まあ・・・なんだ・・・・あっちゃん。・・・・あっちゃんがいいなら、また、そばにいたいよ・・・大切な人なのは本当だから。」
「うん。ありがとう。私も、ゆうくんのそばにいたいわ。もう離れたくないの・・・」
二人はその離れていた時間を戻すようにぴったりと寄り添い言い争いをしていたのであった。
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