百合の花 ー28ー
A(依已)
第1話
―――そして、二年が経過した。久しぶりに長期の休暇がとれたこともあり、わたしは日本へ一度、帰国することにした。
久々に、日本の地に足を踏み入れた。実家へ向かい、そそくさと歩いた。
あれから仕事は、どうなったかって?それはわたしのこの足取りの軽さと、笑みを湛える表情から、お察しいただきたい。
わたしは家に着くと、両親への挨拶もそこそこに、懐かしい自分の部屋へと入った。
祭壇に飾られていたあの百合は、わたしのこの回復ぶりに、もうお役目は終えたとばかりに、とうとう枯れてしまっていた。
わたしは、あれから毎日首に下げているクロスのチャームを握りしめ、カラカラに枯れ果てても尚、神々しく気高い百合の花に向かって、感謝の祈りを捧げた。
そして、百合の花を花瓶からとり出し、そっと、万感の想いで抱きしめた。涙が、溢れ落ちた。
走馬灯のように、ここ数年の出来事が思い起こされた。
数年前のあの苦しみは、きっと今のこの幸せな日々を手に入れるために、必要不可欠な出来事であったのだろうと、前向きにとらえられるようになっていた。以前は、人を羨むばかりであったわたしも、ずいぶん"成長"したものだ。
百合の花に、涙の雫が滴り落ちた。心なしか、涙の伝った箇所が、活き活きと息を吹き返した気がした。
またいつか、完全に甦り、再び見事に咲き誇ってくれるであろうことを願った。
了
百合の花 ー28ー A(依已) @yuka-aei
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