第13話 待ち合わせ

 待ちに待った週末!!

 天気も秋晴れで、風も穏やかな日だそうだ。


 今日は日生との遊園地デート。親友関係の時にも映画やカラオケで遊んだが、真央を含めての行動が殆どだった。

 事前に真央には、SNSを使っての相談はしており、有る程度のアドバイスやおすすめの乗り物も教えて貰った。本当に真央は頼りに成る!!

 大事な部分は、スマートフォンのメモ帳機能を使ってメモをしており、何か有った時はメモを見れば大丈夫だろう。


 日生との待ち合わせの時間が近づいているため、俺は身支度をして家を出た。

 家を出て駅に向かい、駅から電車に乗って、学校の最寄り駅に到着する。待ち合わせは駅のホーム上で有る。待ち合わせの時間の15分前に駅に着いた。

 少し早かったのか、駅のホームには日生の姿はまだ見えなかった。

 普段、日生と真央で遊ぶ時は、大体この時間には日生と真央は既に居て、行動が開始されていた……


 しかし、当たり前だが日生が来ていなければデートが始められない。俺はホームのベンチで座って日生を待つ事にした……

 俺が乗って来た反対方向からの電車がホームにやってくる。もしかしたら、あの電車に日生は乗っているかも知れない。


 電車は駅に到着して、扉が開いて人が出てくる……

 電車は4両編成で、また降りる人は少ない事から、直ぐに日生に気付くはずなのだが、見当たらない……

 電車の扉が閉まり、電車は発車してホームから見えなくなる。人がまばらに成ったホームに日生の姿は見当たらない。


(あれ…?)

(この電車に乗っていなかったか……。そうすると次の電車か?)

(約束の時間、絶対過ぎるな…)


 俺は待ち合わせの時間には、その時間より早めに着く事を心がけている。

 真央もどうやら俺と同じ考えだったらしいが、日生は違ったみたいだ。

 初デートでこれだと、この先が思いやられそうだが諦めて待つ事にする。

 次に来た電車に日生は乗っていたが、予定より約10分の遅刻で有る。電車の到着時刻は変えられ無いから仕方ないが……


 俺は見つけた日生の姿を見る。

 日生の格好は、薄手の長袖セーターらしき服とその上にワンピースを着ている。化粧もしていて、学校とはまた違う日生が凄く新鮮に見えた!


(真央と一緒に遊ぶ時よりも、気合いが入っているような……)

(それで遅れたのかな? でも…)


「お待たせ! 待った?」


「あっ、大丈夫だよ。日生…」


 本当は一言、言いたい気分だが、初デートなのだ。

 最初からデートを台無しに


「じゃあ、行こうか日生!」


「うん…」


 遊園地の方向に向かう電車をしばらくホームで待つ。5分も待てば電車が来るはずだ。


「楽しみだね。遊園地!」


「そうだね…」


 俺は日生に声を掛けるが、心なしか日生の元気がない……


「日生……元気無さそうだけど、大丈夫?」


「えっ、あぁ…大丈夫だよ。良輔!」

「ちょっと、寝るのが遅かったから…」


「えっ!?」

「でも…、昨日はそんなに遅くまで、日生とはSNSしなかったよね?」


「あの後、真央としていた!!」

「あはは…」


 ばつが悪そうな顔をしながら日生は言う。


(真央とSNSしていたら仕方ないか…)


 俺は少し疑問に思ったが、初デートなので気にしない事にしたが……この時に、既に歯車は狂い始めていた。


 遊園地に向かう方向の電車が駅に到着して、その電車に俺と日生は乗り込む。ロングシートの車内だが余裕で座れそうだ。車両の真ん中付近のシートに俺と日生は座る。

 電車に乗ってしばらくは雑談が続いたが、普段から会話をしている所為か会話のネタが無くなって来た……。日生は会話をしながら時々、口元を抑えてあくびをする。


「ねぇ良輔……私、本当に眠いから、駅に着いたら起こして…」


「えっ、あぁ……。本当に眠そうだもんね、日生」


「うん。ごめん…」


 日生はそう言って目を閉じて、体を座席のシートに預けた。


(何か、デートって…もっとこう、ウキウキした気分に成る筈なんだが…)

(今の状態だと、無理矢理連れて来た感を凄く感じてしまうのだが……、日生も遊園地を望んでいたのに…)


 眠たそうな彼女を無理に起こしても意味が無いし、遊園地の中で『眠たい…』と言われても嫌なので、遊園地に着くまでは我慢する。


 電車は遊園地に向かう乗換駅に着いてバスに乗り換える。

 バスの車内でも、日生は『着いたら起こして…』と言って寝てしまう……


 親友の時の日生は真面目で、周りに気を配れる様な子だったのに、何で彼女に成った途端に、こんなに自分勝手に成ってしまったのだろうか?


 日生は過去に色々な物を背負って生きて来て、俺がそれを守ると言って付き合っているわけだから、こんな事ぐらいで嫌気を差しては駄目だが、少しずつ不安感と焦燥しょうそう感が雪のように積もり掛けていた……


 大きな遅延も無く、無事にバスは遊園地に到着して、俺は日生を起こしてバスを降りる。

 園内のゲート前に有るチケット売り場で、2枚分の1日フリーパス券を買って、その1枚を日生に渡す。


「はい! 日生」


「……ありがと」


 日生にチケットを手渡すが、心底喜んでいる笑顔では無かった。

 俺はこの後、挽回出来ると信じて、日生と遊園地の入口ゲートをくぐる。

 天気の方は、多少雲が有るが晴れており、絶好のデート日和だが、俺の心は少し雲が掛かっていた。


 

 チケットを渡した時の日生は、余り乗り気では無かったが、遊園地園内に入ると何時も通りの日生に少しずつ戻って行った……。本当の寝不足だったと、俺は思う事にした。チケットを渡した時は、まだ寝惚けて居たのだろう?


 遊園地デートの始まりで有る……

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