第12話 初めての週末

 日生と恋人関係になってから、初めての週末が近づいてくる。

 やはり、恋人に成ってからの初めての週末は、絶対にデートしなければ成らないだろう……絶対に!!


 しかし、俺は彼女の趣味がいまいち掴み切れていない……

 カラオケやアニメ映画などの鑑賞はしたが、真央との3人での行動が殆どで、2人っきりだけで、デートまがいの事をしたのはカラオケだけだ。それも1時間位の短い時間。学校帰りの時間を使ってだから仕方ないが……


 彼女は模範的と言うか、定石通りの行動を物の見事にしてくれて、彼女特有の感触が全く掴めない。

 カラオケの場合だったら、カラオケをして、それで終わりの感じだ。その後が無い……。その後が重要なのに!


 2人では無く、真央と一緒の行動の場合だが……、3人で映画を見に行った時は映画を鑑賞して、その後はランチかお茶をして、何処かのショップに寄って終わると言うパターンで有る。

 これは真央も居るし、真央が居ると、日生は真央を中心とした行動にしてしまう……


 交友関係の広い真央は流行にも敏感で有って、俺が下手に下調べするより、真央に任せた方が確実と言う状態だ。

 そのため3人で遊ぶ時は、ほぼ真央の予定で動いて、オプション的に俺と日生の希望を混ぜる行動が、3人で遊ぶ時のパターンと成っている。


 日生と遊んでいる時の会話は、学校の会話と真央絡みの話が中心で、彼女自身の事は、まず話さない……

 話したとしても『あの動物が可愛い!』とか『あの食べ物美味しそう!』とかの脈絡の無い会話しかない。


 彼女の見えない部分を探すのも1つの楽しみだが、日生の心の底を知るには、非常に時間が掛りそうだが……その前に、俺は日生の心の底を知る事が出来るのだろうか!?


 男としては情けないが、これが人生発の? 初デート!!

 デートで行きたい場所は、日生の希望を尊重するべきだなと俺は感じた。


 ……


 日生も俺と同じ電車通学だ。

 しかし、電車の方向(行き先)は別方向なので、駅のホームで電車が来るまでの時間が、学校からお互いが交わる時間で有る。


 放課後。今日も日生と一緒に帰る。

 彼女もクラブ活動等はしていない。体を動かすのは好きみたいだが、誰かに強制されるのは嫌だと言っていた。

 俺はクラブ活動より、自分の余暇を大事にしたいのでクラブ活動には入っていない。


 学校から駅までの通学路。そんなに長い距離では無い。駅から15分位で学校に着く距離だ。俺は日生に週末の予定を聞いてみる。


「日生。今週の週末だけど、どうしようか?」


「そうだね……どうする?」


(いや、どうするア〇フルでは無く『デートしよう!』とか言ってくれないの!?)


「やっと恋人同士に成れたんだし、今まで見たいなカラオケや、真央と一緒の映画だけで無く、少し遠い所に遊びに行かない?」


「遠い所…?」

「う~ん、別に行きたくないな……」


(えっ、なんで、其処まで拒否するの!?)

(本当に俺の事好きなの!?)


「でっ、でも……週末、天気も良さそうだし、何処かデートしようよ!」


「良輔がそんなに言うなら……」


(やった!)

「じゃあ日生が、今一番行きたい所有る?」


「行きたい所…?」

「……見たい映画もまだ先だし、歌いたい歌も無いし……行きたい所か~~」


「日生、無さそう…。無いなら、無理強いはしないけど……」


「……敢えて言うなら…私が行きたい所……。遊園地かなと思うけど、お小遣いもそんなに無いし……遠いし…」


「遊園地!」

「初デートにはぴったりだよ!」

「日生、遊園地にしようよ!!」

「交通費からの全ては流石に……全部は出せないけど、遊園地のチケット代は俺が出すよ!!」


「良いの?」

「結構するよ……」


「大丈夫だよ! その辺は俺に任せて!!」


「分かった…」


 日生の口調の感じからして、日生は余り乗り気では無い……

 普通はもっと喜ぶ筈と思うのだが、俺の行動の仕方が間違っているのか……


 それでも、週末デートを行う事は出来そうだ。電車とバスを使うが、学校が有る地域から1時間位で行ける場所に遊園地が有る。

 規模は大手遊園地と比較すれば小さいが、こぢんまりして居る方が学生デートらしいと感じた。

 デート当日は学校の最寄り駅で待ち合わせする事に決めた。


 ……


 何とか日生と遊園地デートをする事を決められた。遊園地のチケット料金は、1日フリーパスを買うので結構するが、今まで貯めていたお年玉を使えば問題ない。

 しかし、これから頻繁にデートを行う事に成ると、金銭面では不安が出てくる……


 日生は夏休みアルバイトをしていたが、俺はアルバイトをしなかった。親がアルバイトをする事をあまり賛成的では無いからだ。

 その分、お小遣いは有る程度は貰えているが、誰かに毎回おごるほどの余裕は当然無い。


 これからは、アルバイトをする必要性が出て来るはずだが、そうなると日生とデートする時間が必ず減ってしまうだろう……

 その事は後で考える事にして、週末は大好きな人とデートだ!!


 学校や帰り道でも日生と一緒だが、休日に会う彼女は私服だから別の新鮮が有る。

 制服姿も可愛いが、私服姿の彼女も魅力を感じる。

 直ぐに週末はやってくるが、俺は楽しみで仕方なかった……

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