第17話 12列車"はくつる"の朝
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<その15> 12列車"はくつる"の朝
12列車は盛岡を出て上野に向けて快走している。
盛岡といえばかなりの都会だが、それでもしばらく車輪を進めれば
すぐに森と田園、という雰囲気の車窓風景になる。
夜間であっても薄明かりで川の水面が光っていたり
水田に月明かりが映っていたりするからそれ、と解る。
客車列車らしく軽快なレール・ジョイントの音と揺動が
オハネ25型の広い下段寝台に横たわっている背中に伝わってくる。
どこか落ち着きを感じる下段の佇まいではあるが
上段の浮遊感のある寝心地もまた良いものだ、とは思う。
個室寝台、Bソロの時は大抵二階席を取るが
この開放タイプのオハネ25だと上段からは外が見えないので
今回は下段にしたのだが、盗難等の心配、またプライバシーの確保など
という点では上段の方がいいかな、などと思ったりもしたり..
寝惚け眼であれこれ、と考えているうちに眠りの淵に落ちてしまう(笑)。
構内踏切の音、ポイント通過の振動...
駅をひとつづつ通過しながら着実にEF81は上野へと向かっている。
旅の最終夜、どこか寂しい旅客を乗せて。
あるいは上京、期待に胸ふくらます乗客を乗せて。
「皆様、おはようございます。ただいまの時刻は
昨夜はごゆっくりおやすみになれましたでしょうか。
列車は定刻で運行しています。あと10分ほどで宇都宮に着きます...。」
6時少し前。
いつのまにか寝入ってしまって、ほんの束の間、に思える6時間であった。
車窓の様子をカーテンの隙間から見ると、今日も快晴である。
すこし澱んだ空気が寝台車、を実感させる。
昨日、酸ヶ湯温泉で使ったタオルが、八甲田の雰囲気を発している。
氷を包んで置いたのだけど、氷はすっかり溶けて
ビニールのコンビニ袋の内側は結露し、それで湯の香りがしたのだ。
起きようかと思ったが、まだ少し眠いのでそのまま。
深く眠りこけてしまう(笑)...
大宮到着は覚えておらず(笑)
「本日ははくつる号、ご乗車ありがとうございます。
まもなく終点、上野に到着致します。
お疲れさまでした、降り口は右側、13番ホームへと到着です....。」
列車が減速したのに気づき、ふと外を見ればもう尾久を過ぎていたので
あわてて身支度をするともう上野駅構内。
日本一の重複路線といわれる東北本線のこの区間、頭端式ホームへと
EF81は惰行でゆっくりと進入。
オハネ25の寝台からは、かつて使用されていた19番、20番ホームの線路が見える。
東北特急華やかりしき頃の面影は、今では赤錆びたレールだけが物語る...
と、感慨に耽る間もなく12列車「はくつる」号は定刻到着。
揺動なく停止。
この列車の運転士さんのブレーキ扱いは本当に見事だ。
一般的なブルートレインでは停止直前緩めが困難だ、と聞くが
どのような操作なのか、揺動なく停止するのは快適である。
頭端式ホームでは行き過ぎは即事故に直結であるから
緩めが過ぎたら、などという心配もないほど確かな技量なのだろう。
上野駅は曇り、朝とはいえ東北の涼しさに慣れていた体には暑く感じる。
カーテンを開き、降りる準備をする。
乗客の殆どが足早にホームを去って行く。
ふと気づくと、隣の寝台、昨夜の娘さんはシーツ、浴衣などを
綺麗に畳んで下車した後であった。
僕も見習う事とする(笑)。
がらん、とした客車寝台の廊下を一人、ザックを背負い歩く。
いつものことだが、帰路、終着駅に着いた寝台特急の朝
というのは物哀しく感じられる。
名残惜しげに編成後端まで歩くと、鉄道ファンらしき青年が
三脚、セルフタイマーで電源車と記念撮影をしていた。
一人旅、自分の写った写真を残したいのだろうな、と思う。
撮ってあげようか、という間もなく彼は撮影を終えて
キャノンEOS7と重量級三脚を抱えて足早に去って行った。
孤独が好きなのか、ニコンFEをぶら下げた僕が敵に見えたか(笑)。
九州などへ行くと、たとえば「白いかもめ」先頭車両で
記念写真を撮っている若い女の子グループなどをよく見るが
<img src="http://c62-.hp.infoseek.co.jp/view/tr17-3.jpg">
鉄道の旅をファンではない方にアピールするのはやはり
変わった車両であった方が良いのかな、とも思ったりもする。
「カシオペア」「サンライズ」などは寝台列車であっても人気である
というあたりからはそう考えられ
旧態依然たるオハネ25、583系などを好んで乗車する
のはやはりマニアの所存だな(笑)。
まあ、アコモ改善で行ける「トワイライト」のような例もあるから
企画の問題なのかもしれない。
ひと気の少ないプラットホームで、傷ついた車体の24系25形「はくつる」を
愛おしげに眺めながら、僕は旅の余韻にとりとめもなく回想を続け
VTRで車両の映像を撮り、写真を撮り続けた。
推進回送で尾久へと引き上げる「回12レ」を見送ったが
旅を終わるにはちょっと名残惜しいので、到着する夜行列車を
眺めてしばらく、ここに居ようと思い立つ。
時刻表を見ると、しばし休息が取れそうな様子なので
階上へとエスカレーターで登る....
オトコが化粧をする時代...か。
上野はMr.レディが多いのかな?(笑)。
今回の写真はこちら↓
http://c62-.hp.infoseek.co.jp/view/tr17-1.jpg
http://c62-.hp.infoseek.co.jp/view/tr17-2.jpg
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-------|以下、次回に続きます..|-------
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