第9話 弘前近傍
"はくつる81号" は、昭和の香りを乗せて
<その8> 青森から弘前近傍を歩く
701系快速「いわき」は軽快にレールを響かせて、新青森を通過する。
東北新幹線開通時、ターミナル駅となるべく新設された駅で
現在は郊外の閑散とした小駅だが、駅前には新幹線開通予想図が
イラスト看板として表示されている。
駅前など空き地と表現した方がよさそうな広場だが
新幹線開通を見越して遊休地としているのであろう。
余談だが、東京-青森間直通新幹線列車の愛称は「はつかり」として
車両のデザイン、塗色も583系のイメージがどこかにあれば嬉しいのだが。
などと空想に耽る鉄道ファンを載せた701系列車は
ゆっくりと新青森駅を通過して
数分程で津軽新城に到着。
この津軽新城で、よく列車交換が行われる。
この辺の奥羽本線は単線なのだ。
青森-弘前間は電化以前から複線化計画されてはいるが
現在でも完全複線化されてはいない。
列車本数が少ないためだろうか。
乗客がドアボタンを押して降車してゆく。
気候が寒冷な地方では、こうしてドアの開放を避けて
車内の室温が下がるのを防ぐ、のだそうだが
合理的だ、と思う。
「あとの人を確認してからドア閉じて」と注意書きがしてあるが
誰か、挟まれたりしたのだろうか。
昨年はこの表示、見あたらなかったように記憶している。
この新城駅の近傍も住宅地で、以前、途中下車し、周囲を歩いた事があるが
青森の街を高台から望む閑静な住宅街という感じだ
写真はここです
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http://users.goo.ne.jp/c62_/view/sinjo.JPG
昭和40年代当時、奥羽本線を往来していたのはもっぱら蒸気機関車牽引列車で
C60やC61が客車列車、D51などが貨物列車を牽引していた。
五能線や黒石線では9600、8620などの姿も見え、
僕も写真を撮りに沿線を往来したものだった。
写真はここです
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http://users.goo.ne.jp/c62_/view/kuroisisen.JPG
これは、多分黒石線だった、と思う。
写真はここです
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これは、ちょっと覚えがないが、五能線ではなかったか、と思う。
今では面影もないほど近代化された奥羽本線だが。
列車交換の後、快速「いわき」は弘前へと向かう。
この列車は通過するが、次の駅は鶴ヶ坂。
鶴ケ坂の駅は無人駅で、貨車の車体を利用した面白い駅舎。
写真はここです
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これは、数年前に撮影したものだ、とお断りしておこう。
現在でもこの周辺は山あい、という印象のする
緑深い場所で、列車写真を撮られる方も多い。
ちょっと、コンパクトカメラでおふざけ。
写真はここです
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さて、僕の目的地は弘前市百田(ももた)だが、
鶴ケ坂、大釈迦、浪岡、北常盤、川辺、撫牛子、弘前。
川部駅より平川(ひらかわ)を渡り、撫牛子(ないじょうし)駅の次、となる。
川部から弘前までは、複線化されているのだが。
快速運転の701系は素晴らしい速さで弘前に到着する。ここからは各駅停車で運転されるが、
僕は撫牛子駅で下車したいのでここで下り普通列車でひと駅戻る。
弘前駅で降り、バスで向かっても良いのだが、せっかくだから
電車でゆくとしよう。
周遊区間であるし。
弘前駅は、弘南鉄道の起点にもなっていて、黒石線は元国鉄黒石線であるため
構内は共通の跨線橋で行き来出来、改札口も同じ改札を左右に分けて
それぞれ独立した改札口になっている。JR線の切符を見せても入場は出来ないが。
写真はここです
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しかし、同じ弘南鉄道でも大鰐線は、弘前駅からかなり離れた所にあるので
ちょっと乗り継ぎ、という訳にはいかない。大鰐線には古い車両が多いので
乗車してみたい、と思ってはいるのだが、この立地条件のために未だ乗車できない
でいる。
そのうちに乗ってみたいと思いつつ、JR大鰐温泉駅から車両を見送ったり。
いつか、大鰐温泉駅から帰路に乗る、としよう。
さて、下り普通列車は発車時間になった。
乗客は休日の朝ともあってまばら。
やはり701系の電車は力強く加速してゆき、直ぐに撫牛子駅に到着。
無人駅なので、ワンマン運転士に周遊きっぷを見せるが
こんなところに降りるのか?とでも言いたげな顔だった。
旅行者がおよそ下車するような駅ではないからだろうと思うが
僕はもともと住人だったのだから、まあ旅行者ではないが...とひとり合点し、ホームへ降りる。
撫牛子駅から青森方を望むと、用地の都合か複線の線路が大きく褶曲している。
もとは単線だった事が良くわかり、面白い線形だ。
写真はここです
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25年前、僕らは黒い煙をあげて通過していく蒸気機関車を
河原から見上げては黒い貨車の数を数えたりしながら川遊びをしたり、釣りをしたり。
沿線の鉄道好き少年たちは鉄道員になる事を夢見、最後尾の車掌車に手を振ったり。
現在では同じ路線をED76が、コンテナ貨物を牽引して通過する。
写真はここです
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車掌車がない事にちょっと寂しさを覚える。
首都圏ではほとんど見かけない車掌車、東北地方では
時々駅構内に留置されているのを見かけ、その姿がまったく変わり無い事に
嬉しさを感じたりもする。
写真はここです
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撫牛子から百田までは、弘南バス藤崎線でバス停4つ程だが
3kmくらいだろうから、と暇にまかせて歩くことにする。
歩くと、ゆっくりと見聞き出来るのでより、旅が思い出深くなるように思えるので
僕はなるべく歩くようにしている。
撫牛子駅前は、まったく用務客のための駅、といった風情。
駅前通り、というか路地からバス通りが見えるが、この道路が元国道7号線だ。
昭和40年代に、ここより北側のリンゴ畑の中にバイパス道が建設されて以来
こちらは地方道になっている。が、それゆえ昔日の面影が残り
故郷の雰囲気を求める帰郷者にとっては楽しい散歩道、だ。
昔ながらの食料品店が残っていたり、農家の土蔵や茅屋根の風情に
遠い日々を懐かしんだり。
写真はここです
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10分ほど歩くと、川を渡る。
かつては潅漑用水だったのでは、と思えるような水路はコンクリートで固められて味気ない。
ゆっくりと歩く。
民家の犬に吠えられたり、のら猫ににらまれたり。
道路は、自動車が60kmくらいで通過するので、帽子が飛ばされてしまう。
折から快晴の空、夏の太陽がそろそろひざしを強めてきた。
帽子を取り、タオルを頭から被る。
ますます、犬などに吠えられる(笑)
写真はここです
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のんびりと、遠い岩木山や雲をながめながら歩き、一時間程で百田に到着。
どこか、30年余の記憶を想起するものは...と、探ってはみたが、
小川の流れ、古木、寺院、それとバスの停留所くらい。
写真はここです
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あの頃は、このあたりはリンゴ農家が多く、家畜小屋などが散在していて
民家の庭先は広く、大きなトラクターなどが見えたりしていた。
しかし、現在ではこじんまりとした住宅が多く、リンゴ畑や水田よりもコンクリートと
アスファルトが視界に入ってくる。
あの頃は、ここから北を望むと、遠く岩木山、麓まで果てしなくりんご畑...という
穏やかな風景が広がっていて、それが僕の故郷というイメージの原風景、だった。
ついでに平川の河原まで歩いてみる。
河原は、まだそれほど人手が入っておらず、よく野球をしたグラウンド、
草深い河川敷..などはほとんど昔のままであった。
どこか、ほっとする。
写真はここです
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しかし、橋上から4車線の国道7号線は、激しく自動車が往来し
かつてのどかな田園風景も、いまやありふれた地方都市だ。
水田の用水路、よく釣りにいった深い淀みも、自転車で走った土道も
なにもない。
記憶を辿り、自転車で走った土道の跡、を歩く。
廃線跡紀行のようだが、道路のカーヴのみが当時を偲ばせる、
という形容が似合う状況である。
しばらくこのあたりをぶらぶらしていたが、思い出の場所という
感慨がそうさせたのであろうか。
もう、この場所に来ても誰もいない、のだけど。
祖父が「はつかり」の車掌をしていたのはつい、この間のように思えるが
もう、遠い記憶の彼方のことなのだ、と思い
僕は、イメージ・フィールドにその映像を想起する。
写真はここです
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-------|以下、次回に続きます..|-------
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