Goodbye my earth -掛け持ち管理の要塞惑星-

ARM

プロローグ

 トモエが自分たちの前に現れて事のあらましを語り、出奔してからひと月が過ぎた。

 自分は無事地球へと帰還を果たし、行方不明となっていた間の諸問題を解決するのに、三週間ほどを掛けて収拾にあたった。失踪中の記憶は全くないという嘘を装い、警察や関係者からの質問にも、「ナニモワカラナイ」と知らぬ存ぜぬをつき通して、なんとか丸く収める事ができた。

 そんな事が可能になった理由は、要塞惑星へさらわれた時と同じように、L技研の敷地内で爆風と閃光を発生させ、また派手にラウンジを吹き飛ばしたからだった。その上で、自分が瓦礫の上に横たわった状態で降臨したため、一時はまた大変な騒ぎになった。それでも、最終的には超自然的な現象だろうという事で片づけられ、真相は有耶無耶のまま、失踪事件は解決という事になった。そして今回は、物的な損害のみで人的被害は一切出ていない。

 その時記録されていた、L技研敷地内の防犯カメラ映像が、何故かネット上へ流出し、世界デビューを果たしてしまったのは想定外だった。

 その犯人はユカリで、探査機の映像ログを防犯カメラ映像と偽り、世界的巨大動画サイトへアップロードしたのだ。この件について、即座に声明を発表したL技研は、「該当する画角に防犯カメラは存在せず、当社の記録した映像では無い」と公式に否定している。

 これは、ユカリの承認欲求を満たすために行われた行為だったのだろうか。その理由は判然としないが、全くとんでもない事をしてくれたものだ。人が苦労して丸く収めようとしているのに。また余計な嫌疑を掛けられたらどうするんだ。では無くて。L技研の企業イメージが損なわれたらどうするのだ。

 帰還直後。ほぼそのままの状態で救急搬送された自分は、一週間ほどの検査入院を強いられ、詳細な検査を受けた後、無事放免となった。病院で家族と対面した時、母親は号泣しており、傍らで支える父や妹も目に涙を浮かべていた。しかし姪だけは、一人けろっとした表情で「おかえりなさい」と言っていた。「ずいぶんドライだな」と返すと、「だって絶対帰って来るっておもってたし~」などと言って笑顔を浮かべた。誰に似たのか知らないが、姪は肝が据わっている。

 その後は、関係各所へ挨拶回りをしたり、労災の手続きをしたり、マスコミの取材依頼が殺到したりと、面倒なことこの上なかった。それも、必死に奔走したおかげで、何とか社会的な体裁は保てたようだ。取材依頼については、勤務先や取引先などと言った方面へ迷惑が掛かるため、すべて断った。

 これも状況が違っていれば、事故の被害者として取材を受けて、幾何いくばくかの謝礼など受け取る所だろう。しかし、被害者から共犯者になってしまっていては、そういう訳にも行くまい。かといって、これはストックホルム症候群とか、そういうのでもない。

 幸いなことに、自分の社籍はまだ残っていた。おかげさまで、復帰後初出社した日には、上司や同僚たちから快気祝いなどを頂き、無事現場復帰できた。有難い話ですよ。

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