第二章:気になる彼女と、近づく互いの心と/04

 とまあ、そんなこんなで電車に揺られること約一時間。レイラが憐を連れて行ったのは都会の――市街エリアの方だった。

 その市街エリアの中心部にある超高層ビル『セントラルタワー』が今日の目的地だ。

 ――――セントラルタワー。

 市街エリアの中心部に据えられた、地上四八階、高さ二五〇メートルの超高層ビルだ。他にも摩天楼がひしめく市街エリア中心部の中でもトップクラスの高さを誇るビルで、それ故にランドマーク的な人気も高い。ある意味でこの街の象徴的なビルのひとつだ。

 で、だ。このセントラルタワーは真面目なビジネス用のオフィスビルと、娯楽用のランドマークタワーとしての二つの側面を有している。

 故にこのセントラルタワーは二棟構造を採用しており、メインのビルとなるのが地上四八階の高層ビジネス棟で、その横に六階建ての低層商業棟が併設されているといった感じだ。

 二つの棟の間には渡り廊下などはなく、シームレスに行き来が可能。加えてビジネス棟の四六階から四八階は展望エリア、その下の四五階は高級レストランフロアとなっている為、高層ビジネス棟の方も別に一般人がシャットアウトされている空間、というワケではない。

 ちなみに地下だが、地下五階までの全てが広々とした地下駐車場となっている。車で来ても駐車スペースに困ることはないだろう。

 ――――閑話休題。

 レイラは憐を連れて、そんなセントラルタワーの……低層商業棟の方に入っていった。

「うわあ……」

「憐、もしかして此処は初めて?」

「あ、はい。初めて来ました。こう……なんか、凄いですね……」

 自動ドアを潜っていった先は、一階から五階までが丸ごと吹き抜けになったエントランスだ。

 暖色系の照明で煌びやかに彩られたエントランスは広々としていて、何処か高級感に溢れている。いかにも市街エリアの中心部らしいというか、浮ついた雰囲気の漂った空間だ。

 そんな煌びやかな商業棟の中に一歩入った途端、憐は物珍しそうに辺りを見回していて。それを不思議に思ったレイラが訊いてみたところ……どうやら彼、このセントラルタワーに来たことが無いらしい。

 この年頃にしては珍しいな、ともレイラは一瞬思ったが、しかし彼の家柄を思えば少しだけ納得する部分もあった。

 ――――久城憐は、あの久城コンツェルンの御曹司なのだ。

 言ってしまえば、大金持ちの家に生まれた子。故に今までの人生、周囲からそういった目で見られることも多かったはずだ。

 まして彼にはそれにプラスして、IQ200の大天才という肩書きまで乗っかってくる。あくまで憶測でしかないが……思うに彼、こうして遊びに出掛ける友達にはあまり恵まれなかったのではないだろうか。

 多分そうだろう、とレイラは思う。彼女自身、そういった諸々の面倒な人間関係には疎いというか、憐に負けないぐらいの特殊な出自であるから、正直言って分からない部分ばかりだが……しかし、憐の顔を見ていると何となくそう思えていた。

「それでレイラ、この後はどうするんですか?」

 レイラがそんなことを思いながら歩いていると、隣を歩く憐が今更な質問を投げかけてくる。

 それに対し、レイラはこう答えてみせた。

「観たい映画があるの。一人で来ても良かったけれど……折角なら、誰かと一緒の方が良いでしょう?」

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