第7話・一進一退

 大陸歴1655年3月5日・午前


 部隊の後方で指揮をとるヴァイスゲルバーのもとに、兵士の一人があわてて近づいて来た。

「側面に帝国軍の新手が現れました! 重装騎士団のようです!」

「何?一体どこから現れたんだ?」

 いや、おそらく後方の部隊が移動してきたのだろう。

「数は?」

「三百ほどです」

 数は少ないが、重装騎士団であれば強敵だ。このまま側面を突かれては、まずい。

「陣形を変えて右側面に兵を集めろ」

 ヴァイスゲルバーは指示を出す。


 前方の帝国軍は夜襲の効果で動きが鈍いのが功を奏し、ヴァイスゲルバーの旅団は数で勝る帝国軍をかろうじて食い止めている状態だった。

 何とかヴァイスゲルバーの旅団の一部の歩兵は移動をして、側面に現れた敵の新手の前に立ちはだかった。

 それを待っていたかのように、新手の重装騎士団が突撃を開始した。


 重装騎士団はヴァイスゲルバーの陣に一気に突入し次々を兵を打ち取っていく。深蒼の騎士も数名が戦いに挑むが、側面で待ち構える共和国軍はそれほど多くない。多勢に無勢だ。共和国軍兵士が次々に討ち取られていく。

 しばらくして、重装騎士団は共和国軍に大きな被害を与え、かなり有利な状況であったが撤退を開始した。理由はわからないが、ヴァイスゲルバーは退却していく重装騎士団の背中を見て胸を撫で下ろした。そして、すぐさま、本来戦っていた正面の帝国軍の部隊に、改めて全軍を向かわせた。しかし、側面を突かれ崩れた陣形を改めて整えることは困難で、徐々に帝国軍に圧倒されヴァイスゲルバーの部隊は押されるように後退を始めた。


 戦場の中央付近で戦っていた司令官エッケナーは、ヴァイスゲルバーの部隊が押されているという報告を受け、その援護に入るため、エッケナー率いる旅団を東側の帝国軍に向けて攻撃を開始するように指示した。

 西側で戦っているメルテンスの部隊には、少しの間だが何とか持ちこたえてもらうしかない。もし、ヴァイスゲルバーの部隊が完全にやられてしまうと、共和国軍は総崩れになる可能性がある。


 エッケナーの部隊が援護に入ったことにより、しばらくして、戦場の東側では形勢が再び逆転し帝国軍が押し返され始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る