第7話・新しい弟子たち

 数日後、私が個室で私物の整理をしていると扉をノックする音が聞こえた。私は外の人物に入るように伝える。すると中に入ってきたのは、赤毛のソフィア・タウゼントシュタインだった。

「今、よろしいですか?」

 ソフィアは笑顔で聞いてきた。

「どうぞ」。私も彼女につられて笑顔になってしまった。「まだ片付いていないから荒れているが」。


 私は片づけている途中の荷物を置いて、部屋の脇の椅子を指さして言った。

「良かったらそこに座って」。

「失礼します」。

 ソフィアは椅子に腰かけた。それを確認して私は尋ねた。

「何か用かな?」

「面談の時に弟子にしてくれると約束を」。

「そうだね。覚えているよ」。

「では、弟子にしてください。お願いします」。

「いいだろう。あの時、約束したからね。では、近いうちに剣術の訓練を始めよう。傭兵部隊でも剣術の訓練をする予定だが、私からは、 “深蒼の騎士” の特別メニューだ」。

「楽しみです」。

「今は、傭兵部隊の設立準備で少々忙しくしているので、はっきりとした始める日時は約束できないが。落ち着いたら声を掛けるよ」。

「ありがとうございます」。

「君は、荷物整理はいいのか?」

「いえ、これからです。女性隊員には二人で一つの部屋を与えられましたが、女性は五人で、私以外の四人はそれぞれ二人ずつ入りました。だから私は今、部屋を一人で使っている状態なので、自由にさせてもらっています」。

「そうか。私より広い部屋に一人とは、上級士官並みの待遇だね。数日中に、隊員全体を集めた話があると思う、それまで待機していてくれ」。

「わかりました。では、失礼します」。

 ソフィアは礼を言うと笑顔で出て行った。私はそれを見送って片づけを続けよう思ったが、別で傭兵部隊に参加したオットー・クラクスという若者も面談の際、剣を習いたいと言っていたのを思い出した。


 私は部屋の整理がある程度落ち着いたところで、オットーに会うために隊員達がいる大部屋に向かった。

 中では隊員達が荷物を整理したり、休んだりしていた。

 隊員達が部屋に入った私に気が付いて、旧共和国軍だった者たちは、立ち上がり敬礼した。元賞金稼ぎ達は、こちらを座って眺めるだけだ。

 私は敬礼をした者たちに手を上げて合図した。

「楽にして結構」。

 そして、オットーを見つけて声を掛けた。

「クラクス君、少しいいかな?」

「はい」。

 私とオットーは大部屋を出て、二人になれる場所まで移動した。

 私は話を切り出した

「“深蒼の騎士”にようになりたいと言ったね」。

「はい」。

「もし、まだ興味があれば、弟子にならないか?」

「是非、お願いします!」

「そうか、では、近いうちに修練を始めよう。いま傭兵部隊の設立準備などで忙しいから、改めて声を掛けるよ」。

「ありがとうございます」。

 オットーは嬉しそうに敬礼した。


 さて、剣術の訓練のための“特別メニュー”を考えなければならなくなった。私が自分の師から教わった剣技について思い出しながら、頭の中で組み立てていく。

 彼らは初めての弟子となるが、彼らに教えるのは少し楽しみでもあった。

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