第4話・兄弟子 クラウス・ルーデル

 城の通路を移動していると、窓の外、街の方で幾筋も煙が上がっているのが見えた。

 城外にも反乱兵が居るようだ。予想を超えた人数が反乱に加わっているようだった。

「あれは?」

 エーベルが声を上げた。

「外でも反乱が?!」

 私の懸念がその通りになった。おそらく城内の反乱兵士は囮だ。


 反乱兵の方が組織だって動いている。おそらく、周到な準備をしていたのに違いない。一方、こちらは既に組織としては機能していない。街の中で煙が立っていたら、今までならすぐに出動の命令が出ただろう。

 本来ならブロンベルク隊長の指示を仰ぎたいところだが、彼も城内の捜索をしているだろう。そうなると彼を探し当てて命令を仰ぐより、独断にやらせてもらった方が手っ取り早い。軍は解体され組織としてはもう存在しない。ということは、正確に言うと私は軍の者ではないのだ。立場が宙ぶらりんなのも気に掛かるが、ここは反乱兵を鎮圧するのが住民の安全のためだ。

 帝国軍の大軍が街の外に控えている。下手をすると帝国軍が街の中に攻め込んでくる。そうなると、住民に被害が及ばないようするという当初の目的は達成されなくなる。


「行くぞ」

 私はエーベルに声を掛けた。

「えっ?外の反乱兵を鎮圧する気かい?」

「そうだ」。

「俺たちだけで?」

「そうだ」。

「そんな無茶な」。

 私は、そのエーベルの言葉に返事をせず、城の中を進んだ。


 我々は城内の馬屋に到着した。

 馬番は居なかったので、適当な馬に乗り城外を目指した。

 城門は開いている。先ほど修練所から逃げ出した反乱兵を逃がさないために、誰も通すなという命令が来ていたはずだが。

 馬で城門に近づいて、衛兵二人が斬り倒されているのが分かった。一旦、馬を降りて衛兵の様子を見た。二人ともすでに絶命していた。

「ひどいな」

 エーベルは思わず目を背けた。

 反乱兵がここを通って逃げたに違いない。そして、逃げる先はあの煙の立っているところだろう。

 私とエーベルは再び馬に乗り、煙が立っている方へ馬を急がせた。


 馬を急がせてしばらく進むと大通りを瓦礫でバリケードを設置してあった。

 その後ろには大勢の反乱兵が居る。

 瓦礫の向こう側では別の瓦礫の山を燃やしている。

「どうする?」

 エーベルが不安げに話しかける。

「任せろ。考えがあるから、黙ってついて来てほしい」

 私にはそう言って、馬を降り、手綱を近くの適当な建物の柱に括り付けた後、瓦礫の前に歩み寄った。


 私は瓦礫の反対側の居る兵士に声を掛けた。

「クラウス・ルーデルに会いたい」。

 瓦礫のすぐ後ろにいた兵士が答える。

「何者だ?」

「私の名はユルゲン・クリーガーだ。“深蒼の騎士”で、ルーデルとは師が同じセバスティアン・ウォルターだった」。

「で、なんの用だ?」

「彼と話がしたい。私と仲間も反乱に加わりたいと思っている」。

「そうか。ちょっと待て」。

 兵士は瓦礫から離れ、通りのずっと奥の方へ歩いて行った。

 やはり、ルーデルは反乱に加わっているようだ。先ほど城で集まった際、ルーデルの姿が見えなかった。もしやとは思ったが、やはり彼は反乱軍に居たようだ。

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