捜査16日目~逮捕

 一行は港にあるはずのヴェールテ貿易の建物を捜す。港の人夫数人に聞いて、建物の場所が分かった。建物は三階建ての石作り。大きな重い扉を開け、中に入る。

 中では多くの人があわただしく仕事をしていた。商品の入った木箱を運ぶ人が数人、前を通る。その奥では机に向かって何やら事務作業をしている人など活気にあふれていた。

 ここも社長のクリスティアーネが死亡しているが、会社が順調に回っているようだ。

 従業員に声を掛け事情を話す。社長亡き今、ここを取り仕切っているという会計部門の人物に話をする。

 しかし、彼はスザンネ達のことは知らないという。

 会社の倉庫はこの建物の近くにあるということで、調べさせてもらうことにした。


 倉庫の前に着く。すると、クラクスが倉庫の前にいる二人の男たちを見て叫んだ!

「あいつらです、私を襲ってきたのは」。

 二人もクラクスと一行に気が付いた。あわてて倉庫の中に入り扉を閉めた。一行はそれを追って扉へ駆け寄る。

「裏口へ回って」。

 スミルノワは兵士の半分を裏に回らせる。

 マイヤーは扉の把手に手をかけ引くも開かない。中から鍵がかけられたようだ。

「私が明けます」。

 斧を持った兵士が、扉を壊し始めた。数分後扉は破壊されマイヤーたちが中に飛び込んだ。

 中は薄暗く、大きな木箱がたくさん積んであった。おかげで倉庫の中の見通しは良くない。相手どこに潜んでいるかわからない。兵士たちは剣を抜き、注意深くあたりを伺いながら少しずつ前へ進む。スミルノワとマイヤー、クラクス、タウゼントシュタインが後に続く。


 倉庫の中をしばらく進むと、突然、摘まれた木箱が一列倒れ掛かって来た。兵士たちは住んでのところで、危うく下敷きになるのを逃れた。

 倒れた木箱にはさっきの二人がいた。兵士たちは剣で襲い掛かる。そして、物陰から別の三人が前に躍り出て仲間に加勢する。倉庫内で派手な斬り合いが始まった。

 マイヤー、クラクス、タウゼントシュタインは魔術で兵士たちを援護する。指先から放たれる稲妻で敵にダメージを与え、兵士たちを援護する。

 しばらくして、裏に回っていた兵士たちが中にやって来て、男たちの背後から襲い掛かった。

 こうなれば決着がつくのに時間はかからなかった。数の上では少々こちらが有利だ、五人の男たちの内三人が斬られ、二人は武器を捨てて降参した。

 スミルノワが彼ら跪かせ尋問をする。

「お前らは何者だ?」

 男たちは無言で俯いたままだ。

「こいつらを城の牢屋まで連れていけ。後程、ゆっくり尋問する」。

 スミルノワは兵士たちに言う。兵士たちは男たちの左右からしっかりと抱え、倉庫から去っていった。

 彼らは戦い方が慣れた感じだった。しかし、相手に魔術師がいなかったので、こちらが常に優位に戦闘を進めることができた。こちらには負傷者も居なかった。

 倒された男たちの体を探って身元が分かるようなものを探すが何も見つからなかった。


 スミルノワと残りの兵士、マイヤーたちがさらに倉庫の中を捜索する。

 一行はさらに迷路のように木箱が御置かれている倉庫の中をどんどん奥に進む。そして、倉庫の一番の端、薄暗い中に二人の人物がいるのを見つけた。

 それは、スザンネ・ヴェールテと執事のフリッツ・ベットリッヒだった。二人は小さな木箱を椅子代わりにして座っていた。

 目的の二人を見つけることができて、ほっとしてマイヤーは尋ねた。

「スザンネさん、ベットリッヒさん。ハーラルト・ヴェールテ、エストゥス・ヴェールテ、クリスティアーネ・ヴェールテ、そして、アデーレ・ヴェールベンの殺害に関与していますね?」

 執事のベットリッヒは立ち上がって静かに答えた。

「私がすべてやりました」。

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