第1190話「頼みの綱」
「ならばお言葉に甘えてチャタラーにマモン頼めるかい?ユイとモアの魂を探して祭壇を壊してきてほしい」
「壊すだけなら問題ない。お前が居ないなら作業は格段に楽だからな……」
「そうだな……引っ掻き回すだけしか出来ない誰かさんが居なけりゃチャタラーとなら数日で終わるな」
「後は………実際に行く前にポチの元に行かないとだな……消し方もわからないスキルの………」
僕は折角だったのでエルノックを誘って行く事を選択する。
アヤセさんの事でまだ会話に出てない何かが言い忘れている可能性もある。
それに異世界試練の内容もまだ不明だからだ………ひとまず試練内容も含めて店がある場所へ向かうことにした。
◆◇
『パッパッパードルン……ブロロロロロロロ………』
「こ………これが………約束の地…………アヤセ様の故郷!?」
「エルノックはん……残念やけど触りたくても触れまへんで?」
「ポチさん!どうしたら私自身がその行商人の役職につけるんでしょうか?」
「次元移動できんと無理ちゃうか?お前人間捨ててエルフこさえても所詮この世界しか知らんやろ?そこから出なあかん。まぁ此処で買い物していけ。ワテが責任持って色々教えちゃる!」
僕は問題児に問題を上乗せしたようである………
アヤセさんの事で何か話がで出るかと思われたが、別のスイッチが入ってしまったエルノックは、ポチにあれこれ聞き回るだけで僕の質問には興味を示さなくなってしまった。
余程何か大事な約束をしたのだろう……
「あんな………世界には色々あんねん。お前みたいな奴もぎょうさんおるんやで?」
「どうすれば次元移動をできるのでしょう?短距離から長距離までの転移はできますが………それでは………」
「転移云々より、まずはヒロの方を解決せにゃあかんで?アイツが鍵なんだからな!」
その一言でエルノックはまた舞い戻ってくる………ちょろいのか単純なのかは正直謎だ。
「ポチ……それでこの店に山積みな問題だけど………」
そう切り出した店問題は思いの外深刻だった。
まず店は1週間消えない………店の中にカウンターがありそれがゼロを指すまで見せは消えないらしいのだ。
それが分かった理由は店舗のドアを閉めるとカウンターが停まる仕組みになっているらしく、それをめざとく見つけたポチは色々試行錯誤した結果開店中だけ数字が減る事実に行き着いた様だ。
イーザが何かを言いたげにしているが、周りを見る以上お客の目が気になっている……
どうやらこの店に関わる重要な案件らしいのだが、言葉にださない以上何か理由があるのだろう。
あのおしゃべりなポチでさえ、その要件を察すると『ようわからしまへんな!』と言って誤魔化す始末だ。
僕は面被り達に詫びて、店の面にクローズの看板を出しイーザを会話に集中させることにした。
「お店には禁止用語がありまして………お客様には聞かれたらいけない内容が………なのでちょっと心配を」
イーザが言うには、その禁止用語が『何処に次店を出すか』とか『何時から店をやるか』などは禁止用語に当たるらしい。
その場合店は開けず再設定が必要になるそうだ。
そう話すイーザはふと不思議そうな顔で僕を見る………
「どうしたの?イーザさん?何か僕の顔についてる?」
「え?ああ………いや……ところで…………アヤセさんって方のことは覚えてらっしゃったんですね?」
「え?…………あ!!!」
イーザの言葉で僕は『ハッ!』とする……
「どうしたのだ?アヤセ様の事を覚えているかとは?…………」
エルノックは僕の豹変する様を見て若干焦ったのか、すぐに様子を伺う………
「実は特殊な試練なる物を受けて記憶を少々………」
「特殊な試練!?………ま……まさかお主……エルフの試練を!?」
「はい!?知ってるんですか?エルノックさん。実は帰る手段と引き換えに試練を…………」
「なんて事を!代償に何を払った!?まさか………魂とか言うなよ?…………」
その言葉に僕は『アヤセさんは代償に魂を?』と聞くとエルノックは無言で頷いた………
どうやら帰る手段を聞くために僕は記憶を、アヤセさんは魂をかけたそうだ。
「アヤセ様は各地を探すためにかつて自分を4つに分化させたそうなのだ……。しかしエルフの試練でその通信は途絶えおそらく分化した個体は消滅しただろうと………」
「成程………試練は魂を分化させたって事なんでしょうね………まさか同じ試練を受けていたとは………」
「と言うことは………アヤセ様は試練を熟せば消滅せずに済んだかもしれんと言うのか?」
僕はその状況を知らないので、自分の時を手本として話す……
僕達が受けた試練は大凡同じ、何かを失い取り返す毎に大切な情報を追加で得ると言う事を。
するとエルノックは終始無言で何かを考える………
「もしやすると………アヤセ様の試練は未だに生きておるかもしれんな………」
「どういう事ですか?………試練が生きているってでも細分化させた…………あ!?」
「そうなのだ………細分化させた自分が試練対象なら……何かが起きていてもおかしくはない…………」
エルノックと僕はアヤセの時の試練をしっかりと話し合う。
まず帰り方を調べようとしたアヤセは4人に細分化した自分とのコンタクトが取れなくなった。
その所為で分身が消えたと思ったのだ。
しかしその分身は魂を使い分化させていた。
即ち4分割された自分に相違無いのだ。
そのアヤセの一人はスマホを見る限り消滅している………
見た限りだと、消えたのには何か理由があると推測できる。
何故なら試練なのだ………
何もしてないのに消滅するなら、同じ試練を受けている僕の身体に異変が起きていてもおかしくは無い。
しかし考え様によっては異変は起きている………
悪魔化や肉体と離れた現象だが、それは試練とはまた異なる内容だと思われる。
しかしそれを同じように例えるならば、消えたアヤセは何かがあって消えたのであり、細分化した自分が相手を手に入れた可能性だって捨て切れないのだ。
「もしかしたら………細分化された誰かが何かヒントを得た結果………消えた?」
「か………可能性は大いに………ありますぞ!!ヒロ殿………此処に来れて………今日此処に来れて私は本当に良かった…………」
失った記憶は出会いと共に回復していく記憶を例にとって話した結果、アヤセに恋焦がれるエルノックには望みが出てきた。
しかしそうなると不思議なのは『何故元老院に連絡をして来ないか………』に限る………
僕のような記憶障害が元になっている点を言ってみたものの、僕自身が本人と一度も会ってない以上疑問は多い。
そもそも同じ時期に被害に遭った異世界人同士なのだ………
今まで思い出せなかった事が、記憶に関わる試練へ繋がる手がかりだったとしか感じ得ない。
「エルノックさん………4人に細分化したアヤセさんは何処へ?」
「そ………それがわかりません………一つ言えるのは魂に人格を結びつけるには『由来』が必要だったと……」
「由来?」
僕は疑問をそにまま口に出す………
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