第942話「ソロ探索・目指せ13階層の階段オブジェ!」
「メルルお手伝いする!!モルダーおじちゃんのお手伝いしたら、男の子の格好しなくても良いんでしょう?」
どうやらメルルにギルドへ行くことは、男装すれば良いとの判断なのだろう……問題はそこじゃないが……
ディーナが定期収入を得るには、武器屋の売子は良い仕事だ。
元冒険者だけあって、武器の目利きは問題ないだろう。
「成程!そういやぁ良いところに人材いましたね!流石大親分だ……見る場所がちげぇ!」
そう言ってモルダーはメルルと一緒にディーナを凝視する。
「私………販売経験ないですよ?武器の良し悪し程度しかわからないですし……看板売り子って歳でも無いですし……」
「看板売子なら足元にいて、跳ね回ってるじゃ無いですか……。良い人材ですよ?メルルちゃんは常にテンション高いし……」
「メルル売る!武器いっぱい売って、代わりにいっぱいお肉買う!!」
お肉はメルルが店で買わなくても、モルダー達がオークをぶっ叩いて手に入れてくると説明をする。
何故ならメルルの場合、本当にそうしかねないからだ。
「メルル明日は朝からギルドに武器売りに行くー!お母さん……明日はお兄ちゃんより早く起きないと!!ってことは……早く食べて早く寝なくっちゃ!!ガフガフ………ズズズ………ごくごく……ガフガフ」
どうやらモルダーのお陰もあり、メルルの万能薬問題は武器販売の売子役と完全にすり替わったようだ。
◆◇
翌日僕は太陽の上がってない時間に叩き起こされる……当然その犯人はメルルである。
「おにーちゃん!私はお仕事があるんです!寝坊は駄目だってお母さんが言ってるんだよ!早く起きてください!」
「ちょっと!メルル……ヒロさんにこの件は関係ないでしょう?冒険者は休めるウチに休むのも仕事なの!分かった?起こしちゃ駄目よ!!メ!」
起こされる前に是非それを言って貰いたいものだが、起こされてしまった以上もはや仕方がない。
「メルルさん。別に構いませんよ!そもそもダンジョン探索して、ドドムさんを探さないとならないし……」
そう言うと、ディーナはお弁当を手渡して来て『私達はこれからギルドに行きますので、ゆっくりしてから出て行ってくださいね!駆け出し冒険者の朝は早いので……私達も併せて活動しないといけないので……』と事情の説明をした。
考えてみれば、王国での朝もそれなりに早かった。
冒険者が活動するより早く、店が開くのは当然だ。
朝食をすませた後、メルルは母親に手を引かれて意気揚々と家を出て行った……
『うん……僕も今日からは中層から下層域をメインに探し歩かないと……ドドムさんの行方は待った無しだからな……』と装備を確認しつつ僕は考える。
アユニとマナカそしてアサヒは、実力からして中層からは正直な話戦闘が厳しい。
レベル的に言えば、三人はガルム達パーティーに混ぜても遜色はない。
しかし実力面や修羅場の回数で言えば、足元にも遠く及ばない……
ガルム達が探索する、ダンジョン中層後半から下層域序盤の探索に混ざれば足を引っ張るだろう……
そこまで戦闘経験は無い僕でも、特定階層を越えると危険なのは身を持って経験済みだ。
『意外と早かったな……。そろそろだな……彼女達が道を進むのは……』そう結論を出した僕は、羊皮紙にその内容を記した手紙を認める。
『僕が中層域を探索する間、三人で仲良く実力を養う様に……』と言う内容だ。
しかしドドムの行方探しが終わったとて、彼女達を僕の冒険に突き合わせる気はない。
王国の地ではなく、いずれ元の世界に帰る身だ……これ以上共にいる時間を増やせば後々問題になる。
それに僕達の共通の目的は、想定外の出来事こそあったが既に果たされている。
彼女達は自分達の仲間を探す時期であるのは間違いない。
僕はアユニ達へ宛てた手紙を、受付嬢のフィーテルに私に行く……
「ヒロさんおはよう御座います!どうやら面倒に巻き込もうと言う表情ですね?」
「フィーテルさん……アユニ達へ手紙を渡して貰えませんか?」
「何故……私に?……自分で渡せない事情でも?」
「実は今からハリスコさん達と話がありまして……かなり長引きそうなので……」
「ギルドは伝言板では無いんですよ?でもまぁ……今回は預かりましょう」
そう言ったフィーテルは『私も彼女達に用事があるので……今回だけですからね!』と言って引き受けてくれた。
ダンジョン中層に一人で行くとは、口喧しいフィーテルにはとてもでは無いが言えない。
「あ!そう言えばヒロさん。アユニさんが凄く感謝してましたよ?鑑定神殿……そこに行く事を勧めたのは貴方でしょう?」
フィーテルの言葉を聞いて『ああ……そう言えば、騎士団長へそんな事をお願いしたな……』と思い出した。
僕は『帝都では自分の事ばかり優先してしまい……ついつい騎士団長のヴァイスさん任せになってました』そう言っておいた……
帝都では様々な面倒に巻き込まれたのだから、その言葉は嘘ではない。
そしてアユニのスキルについて余り詳しい話をすると『何故アユニに、鑑定神殿を訪ねる事を勧めたのか?』と言う話に繋がる可能性がある……そうなると面倒だ。
「貴方が此処に来て、知り合いは僅かかもしれませんが……アユニさん達の様な貴方を慕う人も居るんです。だから……ダンジョンから帰ってこなかった……そんな事にならない様にしてくださいね?」
そう言ったフィーテルは、何事もなかったかの様にギルド倉庫の方へ向かって行った…………
◆◇
僕はギルドを出た後、真っ直ぐダンジョンへ向かう……知り合いに出くわすと面倒だからだ。
「おい!兄ぃちゃん……ダンジョンへまさか一人で入る気か?」
「え?ああ……先に仲間が入ってるんです。頼まれた傷薬を買い出しに行ってたら遅くなっちゃって……はははは……」
ダンジョンに入ろうとした時に、衛兵に呼び止められた……
今から向かう場所は当然危険な場所で、ソロで潜ろうとする輩を引き留める為だ。
「成程な。じゃあ念の為に何処のパーティーか教えてくれるか?」
「え?……えっとガルムさん達のダイバーズです……」
僕は咄嗟に嘘を言った……
よく考えてみれば、知名度の高いダイバーズなどと言えば、当然だが周囲の目を引く事になる。
しかし口から咄嗟に出た嘘なので、他の名前が出ないのは仕方がない。
「何だと!?ダイバーズ?……そう言えば……ガルムの後ろに、見慣れない新人の若造がいたと夜営から報告を受けてたな……」
衛兵はそう言うと『うむ!行ってよい。ガルム達は転移陣で降りて、10層から15層を探索すると言っていた。充分注意して降りるんだぞ?』と衛兵はそう言う……
どうやら偶然ガルム達も下層へ降りている様だ。
しかし衛兵の口ぶりでは、同行メンバーを増やして降りている可能性がある……それも10層と言えば中層域だ。
ギルマスに此処のダンジョンの話を聞いた時にウッカリ話してくれた内容だが、1層から5層まではレベル1から7程度の魔物で低層階と呼ばれているそうだ。
地下6階から14階迄はレベル8から20の魔物が徘徊しているらしい。
この階層域は中層階と呼ばれて、降りれば降りるだけ出会う魔物のレベルに開きがでる。
15階からは深層と呼ばれている様だ。
僕とガルム達ダイバーズが出会った場所が15階層の深層である。
衛兵の話では、14階か15階で複数パーティーによるパワーレベリングが行われている様だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。