第831話「ハリスコ奮起・帝国の武器庫牛鬼組の再開」
僕はハリスコを見て精神的に相当苦労したんだな……と顔の皺を見て実感する。
「……じゃあハリスコさんは……結構な借金を抱えたんですね?」
「まぁ……お恥ずかしい話そうですな……大金貨で50枚って所なので安い金額ではないんですがねぇ……何とか稼いでまた王都に店を構えますよ!ガハハハハハ!」
「………此処に大金貨250枚があります。ダンジョンで得た財宝の代金です……これをハリスコさんに預けましょう」
「な!?何を仰いますか!!このハリスコ……情けでの金の貸し借りは御免被ります!幾らヒロ様でも……こればかりは……」
「勘違いしないでください!あげるんじゃなくて『貸すんです』よ。そもそも各地を歩く為の商材やら準備をどうするつもりで?だからこそ、これを使って店を立て直して、僕が必要な情報を集めてください。って言う意味ですから!餅は餅屋って言葉があるんです。販路と情報網は商団の十八番ですよね?それを活かしてくれって言う事です……」
「う……うぅぅぅ………くぅ…………申し訳ない………まだ以前の装備品の借金さえ返してないのに……。くぅ………このハリスコ、商団を再起させた後は必ずヒロ様の商団の傘下に入ります故!この大金貨250枚しかとお借りさせて頂きます!!」
ハリスコは大金貨の入った袋を受け取ると、全員に『お前たち!これから忙しくなるぞ?寝てる暇ねぇからな?各地を飛び回る準備しろい!!』と大声で言う……
どうやら元の威勢が完全復活した様だ。
今日ディーナに問題が起こり、僕が憤慨して牛鬼組を訪れていなかったらハリスコには出会わなかっただろう。
此処で会わない未来があったとすれば、スラムの状況を見る限り商団再起など夢のまた夢だった筈だ。
だが運命はハリスコと僕に味方をした……
僕は帝国で情報網と商団を、ハリスコは僕と言うパトロンと即金の大金貨250枚を得る事ができた……
これで僕が居なかった間の王国の話だけに関わらず、飛び去ったゼフィ達の行方など、ハリスコさえ居れば素早く集められそうだ。
◆◇
「もうなかなか遅い時間ですね……ひとまず僕は家に帰ります。今宿泊しているのはディーナと言う冒険者の家です。同じスラム地区にあって、すぐそこなので……っていうか……皆が来たら大変なことになるのかな?」
「大丈夫です!今日からは俺達『牛鬼組』がディーナ嬢とメルル嬢を陰ながら護衛しますから!大旦那様はご安心くだせぇ……命に変えても護ります!」
モルダーはそう言うと、全員に隠れて護衛する様に指示を出す……
僕は明日からは安心だ……と思ったが、必要な丁度良い素材を見つけた事にも気がついた。
「あ……そうそう……明日ラームさんを借りていいですか?前衛タンクとしてちょっと借りたいんだ………」
そう言った瞬間ラームは『うぉー!絶対に行きますぜ!!大旦那様!!』と腕を突き上げる……
「ラームさんあのね?……外で『大旦那様』は禁止ね!皆が僕の素性に気がつく可能性があるので……絶対にヒロって呼んでください…………」
「はぃー!?………私がですかぃ?………大旦那様を名指しで!?」
「冒険者ギルドの駆け出し冒険者の呼び方が、大旦那様はおかしいでしょう?そうおもいません?僕がディーナさんの所に泊まってるの知ってるんですよ殆どが……」
そう言った後、彼が扱えそうな特大の盾を出す準備をする……
「あとこれ………ラームさんなら扱えるかな?パヴィース・シールド……立たせてからその状態を維持出来れば十分だけど……」
そう言って僕はクロークを翻して盾を出す。
『ゴワンゴワン………ガララン……』
ラームは『フン!』と言って、手で軽々と持ち上げるすぐに装備する。
「力だけはあるんだよな?ラームは……ってかこの盾は普通は地面に置いて使うんだけどな?」
「そうなんですよね!ラームさんがまさか持ち上げられるとは……普通に装備している時点で筋肉量がヤバイですね……」
「コイツは知力マイナス15のバッドステータスあるんです。その代わりに筋力+30のデメリット回避ボーナスが付いてんですよ」
バッドステータスを打ち消すだけの能力かどうかはさておき、完全に戦死タイプなのは間違いがない。
そしてマナカはタンクには向いてない。
なので攻撃を受けても平気な、純粋なタンクが今の特訓では必要なのだ。
「ラームさんには申し訳ないですけど、僕は仲間の為にタンクを必要としてます。正確にはラームさんにタンクとして新人3人を護って貰いながら、5階層まで降りたいんです。それが終われば僕は自由に動けるので……」
「俺で良ければ是非!!冒険者は憧れなんです……でも頭が足らなくて。命令通りに満足に動けないんです」
「ならばそのパヴィースで自分と仲間を守りながら戦えば良いんです。前に出るんじゃなく敵の動きを利用する闘いですね……」
「俺に出来ますか?大旦那様………あ!!……すいません……」
僕は『まず、僕をヒロって呼ぶところから始めて、遠慮を捨てて代わりに信頼関係を築きましょう。ダンジョンは、油断一つですぐに死にますから!』と言っておいた。
◆◇
「ふぁぁぁ……ああ……お兄ちゃん帰ってきたの?………メルルもうおねむなの………『スピー………』………」
僕がディーナの家に帰ってきたのは、既に日が変わる直前だった。
メルルは眠い目を擦りながら頑張って起きていた様だが、帰ってきたのを確認した途端に『バタン』と倒れて寝てしまった……
「ヒロさん!凄く心配したんですよ!?なかなか帰ってこないし……。騎士団長は絶対心配ないって言ってたんですが……絶対なんかあり得ないでしょう?それに話を聞いたダイバーズのガルムさんまで家に来ちゃうし……。何故かガルムさんは止めに行かないと街の半分が消し飛ぶって言うし……」
その言葉を聞いた僕はガルムを見る……
「ガハハハハハ!嘘ではないだろう?お前だったらやりかねん……」
「ガルムさんの言う通りですね!ん!?外に居るのは誰だ!!衛兵長、直ちに捕縛しろ!!」
『ぐわぁ……』
「ちょっと待ってくれ!俺達は寝ずの番だ……ディーナ嬢が悪漢に襲われない様に……」
その言葉に僕は、家の外に飛び出た……すると先程まで一緒にいた牛鬼組の手下達2人が家の側で捕まっていた。
僕は衛兵長に手を離す様に言う……
「どう言うことかちゃんと説明してくれるんじゃろうな?何故敵対関係の相手がディーナを護衛しちょるんじゃ?お前が来てからと言う物毎日が大変じゃ!想像が追いつかんぞ?」
ガルムがディーナの家から出てきてそう言うと、騎士団長のヴァイスまで出てくる。
「説明するので家に入りましょう……貴方達は帰って良いですよ。家には僕がいますから……」
「ですが!、大親分……俺たちは親分の命令で来たんです……ハイそうですねとは……いきませんぜ?」
「はぁ……大親分じゃと?何がどうしたらそうなるんじゃ?……おいチンピラ!大丈夫じゃ……この男ならミノタウロスの群れが来ても鼻歌歌ってバラバラにするぞ?分かったらもう帰れ……護るなら坊主が居ない時にするんじゃな!」
そう言われたモルダーの手下2人は、『大親分!失礼致しやす!!』と言って帰っていった……。
僕はそれからあった事を話した。
「そうか……『鬼蜘蛛一家』が黒幕だったんか……まぁ確かに言われてみれば可笑しい話じゃ……牛鬼組は前から冒険者の武器庫って呼ばれておったからな……駆け出し冒険者限定じゃが、店で買うより安く武器を卸していた。ほぼ全員が世話になっていた筈じゃ」
そう言って、ガルムは僕が聞いていない『牛鬼組』の本当の姿を話してくれた。
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