第766話「化学反応?パイロオーガ大爆発」
僕は威力を上げるために最大の大きさにして、パイロオーガに向けてウォータースフィアを撃ち出す。
大きい分スピードは殺されるが、威力は申し分ないはずだった……
しかしアスマは大慌てで僕をタックルして、大声で叫ぶ……
「全員今すぐその場に伏せろぉぉぉ!!」
そう言った後、僕の上で馬乗りのまますぐさま身を伏せる……
『ずどぉぉぉぉぉん…………………』
ウォータースフィアが触れた途端、パイロ・オーガの上半身が弾け飛んで更に衝撃波が起きる……
そして僕達は、ウォータースフィアの水球が一瞬で水蒸気になった事で、水蒸気の爆風により馬乗り状態のアスマ諸共僕も吹っ飛ばされる……
「うぉぉぉぉお!?…………」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ…………」
「ぐわぁぁぁ…………」
僕の悪手で、一瞬にして全滅の危機になる……
「皆さん……大丈夫ですか?……何が起きたんですか……水魔法が暴発した様にも思えましたが……」
「くぅ……いてぇ……何が起きたんだ?皆無事か?ヒロ兄ぃ確か……魔法撃ってたよな?新魔法の実験か何かですかい?」
「ロズ……オマエのタフさには毎回びっくりさせられるな……エクシア姉さん……ベロニカ……大丈夫か?あれ?姉さん?ベロニカ?……」
ベンとロズが僕を見た後、エクシアとベロニカを探す。
僕が水魔法を打ち込んだパイロオーガの個体は上半身が見事に吹き飛び、周囲にいたパイロ・オーガも酷くダメージを受けている。
起き上がったアスマが僕に向けて注意を促す……
「パイロ・オーガに水魔法は厳禁だ!身を持って体感したからもうする事もないだろうが……。ある特定の火属性の魔物は、水属性攻撃を受けると『破裂』するんだ……衝撃波を伴ってな…」
「ああ……アスマの言う通りだ……。金級冒険者になれば常識だが、この状況変化は銀級冒険者の場合は知らない事だったな……。どう言うわけか当たった箇所の水魔法が瞬時に水蒸気になる……。そしてその衝撃はとんでも無い……。だが……今のは流石に過去最大だったな……ホプキンス平気か?」
「平気なわけ無いだろう?トラボルタ……。マジであの世が一瞬見えたぜ……。ヒロだから何かやらかすと思っていたが……。見ろ……周囲にいた魔物の殆どが瀕死だ……だが今のうちだ。チャンスを活かして後続が居ない今のうちに全員ですぐ仕留めるぞ!」
それ聞いたそうまが厳しく僕へ水魔法を禁止する……
「いいか?ヒロ……絶対に水魔法をつかうな。アレは水蒸気爆発だ。あの個体であの規模の水蒸気爆発だとすれば……他の個体諸共連鎖爆発したら俺達は全滅だ……。この世界に俺たちの常識は通じない……」
ソウマが言うには、熱したフライパンに水を垂らした時の状態を思い浮かべてくれればいいと言う……
熱したフライパンの上でばちばち跳ねるアレだ……。
此処は異世界なだけあって規模も状況も大きく変わる……ちょっとした事がどう悪い方向に転がるか分からない。
全身を覆う鎧を着込んだウェイトのある大人が、成す術もなく軽く吹き飛ばされるのだ……やらないに越したことは無い。
「ヒロは背後で待機!!此処はアタイ達がなんとかする……アスマ、ホプキンス、トラボルタ手伝いな!」
エクシアは随分後ろに吹き飛ばされたのか若干お怒りモードだ……
僕にお留守番を言い渡してから、瀕死のパイロ・オーガの一団を仕留めに行く。
瀕死のパイロ・オーガ達は、もう溶岩の槍を生成する余力もない様で動きも先程までの勢いを感じない。
エルフ達も討伐隊に混ざった事でオーガ達は次々に仕留められる……
「ふぅ……漸くこっちは終わりだよ……あとはイフリーテスの方だね……。ってあの精霊もどき何してんだい……まさかあの赤と赤黒い柱って……溶岩とか言わないよね?」
僕達がイフリーテスの方を見ると、先程まで無かった渦を巻いた柱が三本あった……状況から推測すると危険しかない。
「じゃあ……私の眷属は返して貰うわよ?魔物の分際で私の家族に手を出したんだから……死んで詫びてね?さようなら……」
そうイフリーテスが言うと三本の柱が絡み合い、地面から吸い上げられ球状になる……
僕の感知にには魔物の反応がどんどん消されているのがわかる。
多分ベロニカも同じ状況なのだろう……かなり青ざめている。
僕達が対峙していたパイロ・オーガなど、イフリーテスのマグマの球体内部に居る魔物の数に比べれば1割以下だ。
その魔物の敵性反応が成す術もなく消えていくのだから、炎帝の名前は伊達ではないのだと実感するしかない。
しかしマモンとヘカテイアは、非常に嫌そうな顔をしていた。
「勿体ねぇな……アイツ俺達に渡さねぇ様にああやって殺しやがって……折角力引き剥がしてから、精霊だけ放り出そうと思ってたのによう……」
「仕方ないわよマモン……私達と精霊種は敵同士よ?変異してるのを助けたとしても、自分から望んで相手を強化する真似はしないわよ……。でも意外と数が居たわね……本当に勿体ないわ……」
「下級種だとしても、あれだけ数が居ればなかなかの収穫だからな……逃した魚はナントヤラだぜ……」
マモンとヘカテイアがそう話しているのを、僕達は静かに聞き耳を立てていた。
しかし、ふと溶岩があった一角を見ると、階段と思わしき物を発見した。
「あれ?エクシアさん……あそこに階段が……。もしかして階段て溶岩の下にあったって事ですかね……。もう打つ手なしですよ?アレばかりは……」
「ヒロの旦那……多分それは仕掛け的な問題ですよ……。あのイフリーテスって言う精霊の技が全てを台無しにしてるだけでさぁ……」
呆れ果てる様にチャックはそう言う。
チャック曰く『仕掛けも何もあったもんじゃねぇ……』だった。
それも当然だろう……
本来の手順を踏んでやっと発見できる階段が、イフリーテスの戯れで発見されたらシーフのチャックとすれば活躍の場を失う。
このギミックを用意した側が居るならば、反則行為に怒っているかも知れない位だ。
「でも仕掛けをチェックしてギミックをクリアしないとならないわけで……イフリーテスに頼って降りても行った限り戻れないって事ですよね?」
「ヒロの旦那……寧ろ……一回降りたら戻す気がないって事も感じられますけどね?降りたら解除した罠が再起動して、上がマグマ溜まりに逆戻り……そんなんだったなら結局は登れませんぜ?だから……下層に転移陣が無ければ詰みですぜ?」
「まぁその時はまた、イフリーテスにお願いして溶岩を全部さっきみたいに球状にして貰うしか……ですよね?エクシアさん?」
僕はチャックと話しながら、帰り道の事も兼ねてエクシアにそう言った。
エクシアも当然その事を気にしていたのだろう……チャックの言う転移陣について自分の考えを皆に聴こえる様に説明し始めた……
「確かにチャックの言う通りだねぇ……。転移陣探さずにここまで降りたけど、火焔窟四階層は良いとして最下層は危険だろうから……流石に離脱組用の為に探さないとだね……。それかこの階層で転移陣探して先に帰すかだな……。降りてからはヒロの代案が最終手段になるねぇ。そもそも、ヒロとエルフレア以外のお願いなんか聞かないかもだしね……」
エクシアにそう言われて、僕は『魔法の地図』を出して火焔窟三階フロアの確認をする……
「あれ?この場所……あの壁の裏側に転移陣がありますね……」
僕が指をさした方向には一見すると壁だが、実際には隠し扉になった四方を壁に囲まれた部屋があった。
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