第758話「火焔窟へ侵入」
「そうそう、マモンがくれたコレは悪魔種の心臓って言うの。コレを現状カラッポの貴方の悪魔種の核に使うといいわ。今、貴方は人間としての核以外はからっぽの状態だから。ヤバいことになる前にアタシが作っておくから……」
「ヘカテイアさん……寧ろその心臓を核にした方がかなり危険なのでは?僕は人として生きていたいんですよ……」
「想像して見ればわかるわよ?貴方人間としての心臓を核としているけど、万が一悪魔の力を人の姿のままで併用した時『変異』するわよ?それも核を作るために肉体が変質して完全な悪魔によ?すぐには人としては姿は保てないし、当分は人間の姿には戻れないわよ?私も経験した事だから間違い無いわ」
『ヘカテイアの言う事は間違いでは無いわ……。精霊核は私達三人が封じているから今は平気だけど……これ以上『精霊力』が強くなったら私達でもどうしようもないわ……』
突然水っ子が説明を付け足す……
それに慌てた僕はヘカテイアと各精霊の説明をよく聞く。
すると僕の身体は大変危険な状況にあった。
アーティファクトが行った変質の影響で、僕の身体は今や『人間』とはかけ離れていた。
今は力を行使していないので、悪魔種核に魔王種核がない状況でも影響がない『休眠状態』だと言う。
しかし龍種核については使う状況だ。
既に金眼を発動したので影響が現れ始めていて、龍気なるものを放ち始めていると言う。
そして精霊核については、水っ子と風っ子そして森っ子が封印している状態だったそうだ。
僕自身は気が付かなかったが既に龍種特有の覇気を放っているそうで、その所為でエーデルワイスはゼフィ共々僕へも攻撃を仕掛けてきた様だ。
所謂『ダダ漏れ状態』だと言う……
いずれ龍種として覚醒すると、肉体が龍になりそして属性を得てエーデルワイスやゼフィランサスの様な龍種になると言う……
当然少しずつ時間をかけて龍になるので、肉体もジワジワと人からかけ離れて行くらしい。
それについてはヘカテイアや精霊達にも止めることが出来ないので何か手段を捜さなければならないそうだ。
悪魔お得意の、力の吸収についてお願いしようとしたら『僕自身が変質しているので吸収出来ない』の一言だった。
僕の龍化の事を、龍っ子とゼフィランサスは既に理解していたのですごく喜んでいた様だ。
彼女達は『龍である誇り』があるので僕へは別段説明もしなかったのでは無いか……と言う事だった。
本当の意味で同じ家族になるのだから、言わないのも当然だろう。
その説明を聞いていると、通路の方からマモンと行方不明だったアスマが現れた……
「おい!ヘカテイア……俺に礼はないのか?それを作ったのはオレ……………」
「アンタにも世話になったね!!コレはエクシアとヒロから貰った物だけど……効果が長い変異素材だよ!今回は特別にマモン、アンタにくれてやるよ!」
「お……おお……ありがとう?………変異素材か随分気前がいいな?こっち側では穢れ同様より多く摂取しないとならないのに……お前……良いのか?こんなに貰って……」
ヘカテイアは大盤振る舞いで、僕達から貰って蓄えていたと思われるいた『チョコレート』をマモンへ渡している。
「ずっと不思議に思っていたんですけど……そんなにチョコレートが嬉しいんですか?それに変異素材ってよく言ってますけど……それってなんですか?」
「は?ハハハハハ!!契約者!!お前……本気か?このチョコレートって食い物を貰って俺が喜んでいたと思ったのか?」
僕の質問が相当ツボに入ったのかマモンは大笑いする。
「違うんですか?」
「食い物としては確かに美味いとは思うが、そうじゃねぇ。俺達は常に変質の危険と存在消滅が共にあるんだよ……。だからある意味で言えばヒロお前と一緒だ」
マモンの説明では、マモンもヘカテイアの元は人間だったと言う。
ヘカテイアは『記憶がある側』でマモンは『その逆』だと言う。
マモンは記憶がないので、人であった頃の詳細は何も思い出せず『人間だった』というボンヤリとした記憶しかないと言う。
しかしヘカテイアは、マモンとは違い人間だった頃の記憶を持っているので『名前がある』が『本名は真名にもなるので言わない』と言われた。
何はともあれ彼等は、力を求めた末に悪魔の力を手に入れて、悪魔や邪神そして堕ちた神々を常に身に宿す状態になったそうだ。
しかし力の代償は大きく、人間としてのマモンは次第に『悪魔マンモーン』に吸収されていき、いずれ混ざって自我は保てなくなると言う。
最終的に完全な悪魔『マンモーン』に変貌して新たな契約者が現れるのを待つ身になると言う。
当然意識はマンモーンや前の契約者と混ざり合い、複数の記憶を共有する悪魔になる様だ。
異世界の食材はマモンの意識を長く繋ぎとめ、新たな変質を手に入れる手段になると言う。
本来は同族を喰らい相手の変異の力を手に入れて『自分を変質させる』必要があるそうだが、異世界の食材は既にそれを宿していると言う。
それも魔物や同族の悪魔と違い『美味い』とくれば、間違いなく其方に傾向するだろう。
「私は変質云々を抜いても食べておきたいわ。少なくともこの出来栄えの食べ物なんか出会った試しがないもの……」
「それはさておき……なんでマモンとアスマは向こうから来たんだい?」
エクシアはヘカテイアの話をバッサリ終わらせる。
確かに言われてみればそうだ。
ホプキンスとトラボルタは僕達と同じ様に落ちてきた。
それなのにアスマが居なかったのだ。
「あ?そんなの簡単だよ……おい!エルデリアにエルオリアスとエルフレアさっさと入ってこい!」
エルオリアスの足代わりにエルフレアとエルデリアが彼を支え通路を進んでくるのが見えた。
「皆さん遅くなって申し訳ない……マモンが精霊を切り離してくれたお陰で自由に動ける様になりました……」
僕達はその言葉で彼等の状況を思い出した……彼等は精霊や秘神との契約で自分の自由を与えていたのだ。
マモンによって回復を強制的に終了させられた様で、彼等の傷は痛々しいものだった。
エルフレアは全身火傷と、イフリーテスの契約印である炎帝の印が顔に刻まれていた。
エルオリアスに至っては脚や腕の一部が未だに凍結状態であり、治している最中に中断されたことが窺える。
秘神化現させたエルデリアのみが唯一怪我が少ない。
「ヒロ落ち着いて下さい。エルフの国に戻れば秘薬で元に戻せます。エルフ国には精霊化現の時用に騎士団にて『秘薬の保持』が認められていますから!」
その言葉にモアが青ざめながら話す……
「大丈夫って……貴方……国までどれだけの距離があると思っているの?ワイバーンの巣やダークトレントの森もあるのよ?その脚と腕では越えられれわけないじゃない!」
「姫さま……大丈夫です。部下に持ってきて貰えば済む事………」
「嘘を言わないで!!私は月のエルフ国の姫よ?自分の国の決まり事だったら全部把握しています!王国からの秘薬の持ち出しは厳禁……。過去の元老院の事件で決まった法じゃない!!」
当然怒られているのはエルオリアスだけでなく、無茶な事をしたエルフレアも太陽エルフ族の姫スゥに大目玉を食らっている……
僕は持っていた秘薬の栓を開けモアとスゥに渡して言う……
「秘薬ならここに2本あるから……」
既に蓋を開けられた秘薬を見て、驚きの余り口が開きっぱなしになる面々……
「な!?どれだけ貴重なものか……これから先に必要になるかもしれないのに!!」
モアが若干キレ気味に言う。
土精霊はどうにか救出できたが、炎の精霊はこれからなのだから怒る気持ちも当然だろう。
しかし寧ろその状態で、今この2人が戦線離脱するのは痛すぎると思ったのでそれを説明してから気兼ねなく使える様に、説明を付け加えた。
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