第730話「森林エリアと遺跡群」


「説明すると、エクシアさんの熱を目で見て感じ逃げたって事です。他の人の目では感知することの出来ない熱を彼等はあの目で感知するっていう事ですね」



「ああ、そうなるな。お前の心部にある超高熱を見れば、火山噴火の直前だと感じてもおかしく無いからな。悪魔でも下級のやつだったら、お前を見たら逃げ出すぞ?そのサーモなんとかが俺たちにも使えるからな………だよなヘカテイア?」



「そうねマモン……。でもエクシア、貴女達いつに間に化現融合ができる様になったの?もはやエクシアの一部がチャンティコと同じ領界にいる事になるわ。お互いが密接に関係し合った状態ね……。因みに領界って言うのは領域世界っていう意味よ。まぁ貴方達は使わない言葉ね……」



 サーモグラフィーからとんでもない方へ話が飛んでいったが、もうエクシアの一部は『火山の神・チャンティコ』と同化できる事が判明した。



「師匠と同じでエクシアさんも完全な化け物だったんですねぇ!!ミミは師匠とエクシアさんの弟子なのでいつかそうなってしまうんでしょうか?………エクシアさんのヘッドロックはダメ!!ミミ焼けちまいます!!頭が焼け野原に!!カーデルちゃん水!水をぉぉぉぉ…………テカーリンさんにはなりたく無いですぅぅう……」



 珍しくエクシアがミミを弄るが、焔を消しても余熱で熱い様だ。


 エクシアがミミを解放するとその髪の毛にウェーブがかかってしまった。



「なんか……ムカつくね……その髪型。良いところのお嬢様みたいじゃ無いかい?」



「ですねぇ……あのミミも髪型ひとつで雰囲気が変わるんですね……。話さなければポンコツってバレねぇんじゃねぇですか?エク姉さん」


「そこが更にムカつくねぇ……ポンコツなのに……」



 ミミにしてみれば酷い言われようだが、極限の集中と生死をかけた戦いがあった。


 戦闘に参加した冒険者の精神的疲労も少なくない……その為エクシアは、ミミを使って笑いをとっていた。



「さぁ、馬鹿話はおしまいだ。今までは魔物擬きのケイブやケイブ・スクリーマーだったが今度はそうはいかない。アンデッドの大群が居るからね。下手をすれば誰かが死ぬ気を抜くなよ?」



「「「おぅ!!」」」



 冒険者達はケイブ達が食い漁った魔物の骸を数人がかりで放り投げる。


 何故かと言えばその真下にドロップアイテムや、壊れた宝箱が散乱しているからだ。



「マジかよ?回復師すぐに『祝福』をかけてくれ!武器の宝庫だ………」


「マジか!?ちょっと俺にも見せてくれよ!!」



 魔物の骸を退けた真下には多くの武器が散乱していた。


 どうやら罠無しの当たり箱が、何かに拍子に破壊されてしまったようだ。


 ソーラー侯爵が大喜びで駆けつけて来る……



「祝福持ちは全員集合!!今から此処の武器を全て祝福する。ヒロモノクルを貸してくれ!礼ははずむ」



 僕はソーラー侯爵にモノクルを渡すが、マックスヴェルも他の箱を開けにかかっているので、交互に使ってはいるのだが『早くよこせ』と言い合いになっている。


 仕方ないので僕は『ルモーラの鍵』で開封作業を手伝う。


 当然先程のミスをしないように、鑑定でしっかりと確認をしつつだ。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「すまんなエクシア……急ごうと言った儂が目の色変えて武器を見てしまって……」


「ああ、構わないよ。武器は少しでも良いのを使わないとね!この先壊れましたとかじゃすまないから」



 此処で新しい武器を得た冒険者は、血まみれの武器を少しでも綺麗になるように磨き上げている。


 正直見た目が悪いのだが、今は仕方がないだろう。



 修正値がついた武器だけに、それを得る事ができた冒険者は非常に嬉しそうだ。


 ダンジョンで武器は見つかっても、それが自分の手元に来るとは限らない。


 パーティー内での山分けなら確率は高いが、連合ともなればそうはいかないからだ。



「じゃあ……問題のエリアに行くよ。気を引き締めな!!」



 そう言うとエクシアはロズとソウマに侵入の指示を出す。


 前もって階段の位置は確認しているので、目立たないように進むだけだ。



 扉周辺は遺跡群になっており、その遺跡を囲む様に森が覆っている。



「こりゃまた良い目隠しだね……魔物が居たら感知なしじゃいい餌食じゃいか……それで?アンデッドは見えないけど……」



「エク姉さん。何故かアンデッドは1箇所にまとまってますよ……。この先に下る山道があるんですがね……」



「山道!?って事は何かい?此処は山の上の方って事なのかい?」



 エクシアが驚くが、ダンジョン特有の作りだ。


 今まで洞窟だったのに途中から森林地帯に階層の作りが異なったのだから、そこが山の上だとしても不思議では無い。



 問題は自然地形の場合出口を見つけ辛いだけじゃ無い……滑落や遭難の危険性まで出てくる。



「そうっすね……。階段のある場所は割と高い位置にありますが、アンデッドの群れは何故か門の側や階段付近には居ないんですよ」


「まぁ、階段に向かうには好都合だから良いけどね!でもそれを知ってるって事は見に行ったのかい?」



 エクシアがそう聞くと、ロズの代わりにベロニカが答えた……



「一応どんな魔物が居るかチェックしておかないとダメですから!階層を降りた先はどんな階層か分からないので、下手すれば戻る一時撤退で可能性もあるじゃ無いですか?」



 それを聞いたエクシアは『確かにそうだね!良く気がついた。ベロニカに任せて正解だったよ……どうせ気がついたのはアンタとエルフ達だろう?』と言う。



 消防士のソウマは危険察知能力に長けているので気がついていった事だが、ロズと仲が良いので同類とエクシアは思っていた。


 ベロニカが訂正をしようとするが、ロズとベンがソウマに『ベロニカは流石だよな!』と言ったせいで、ソウマの評価は『三馬鹿トリオ』に格上げになってしまった。



「さて、三馬鹿の意見は良いとして……安全性に問題が無い道を選んでいこう。ベロニカとヒロ悪いが索敵を頼むよ!此処で変に戦闘すれば、斜面下のアンデッドにも気が付かれちまうからね!」



 エクシアの指示でベロニカを戦先頭に周囲をロズとソウマが護衛しつつ進む。


 僕の感知はベロニカ持つ種類とは違いがある。


 僕の方は今はスキルレベルも上がったせいで、かなりに広範囲をカバーできるようになっている。


 ベロニカも当然使い続けているのでレベルが上がっているだろうが、若干僕の方が有利なスキルなようだ。



「エクシアさん……左手斜面の下にアンデッドが多数います。感知にかかっている個体だけで既に20近い群れです。多分先行した時に見たものだと思いますが……」



 僕がそう言うと、ベロニカは……



「ヒロ……それが此処からわかるの?数も?」


「地道に感知でかかってるのを数えただけだけど……流石に動くので骨が折れる作業で、明確な総数は分からないよ?でも20以上は間違いないはず……」


 そう言って返すと、エルフの3人も驚愕する。



「ヒロはそのまま感知で見ててくれ。一先ずこっち側に歩いてくる様子が見られたら教えてくれるかい?」



「はい。了解です」



「ベロニカとエルフの旦那達も引き続き頼むね?万が一にも多方向から来たら指示役が必要になるからね!」



 エクシアは流石だ。


 多方向からの襲撃など考えても見なかった。


 感知がある僕らは来る気配がわかるが、他のメンバーは目視できる距離まで来ないとわからない。



 更にこのフロアは通常『暗闇』もしくは『夜』のようだ。


 森林エリアには月が出ていて雲もある……そして何処からか風まで吹いてくる始末だ。



 代わりに、今まであったはずの天井が無いのだ……



 ダンジョンの不思議は階層の上下にも及んでいて、空間が歪む事実を知った瞬間だった……

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