第717話「瀕死!?血塗れのエルデリア」
ちなみに邪魔な荷物は仲間に預け、姫の護衛任務は部下と僕等に任せて3名で行く様だ。
少数精鋭とは言うが、3名では余りにも少なすぎる……
しかし僕の心配をよそにエルオリアスは……同行する2人のエルフのクロークに不思議な色の粉を振りかける。
「大丈夫ですよ?この方が逃げ切りやすいのです。下手に人数が多いと隠れられませんし……では行ってまいります」
そう言ってエルオリアスは何やら魔法を唱えると、3人ともあっという間に見えなくなる。
視認阻害に魔法の様で、話したりしなければ隠れていられるらしい。
ちなみにエルオリアスが使った視認阻害の魔法は、月のエルフ族固有の魔法だと言う……
しかしこの下は8階層だ……その階層は『ピットフィーンド』が居た階層であり階層主がそいつだった。
危険極まりない魔物だったので、幾ら視認阻害魔法があっても3人だけで行かせるのは非常に気が引けた。
フレディ爺さんといたあの時にピットフィーンドは消え去った……このダンジョンに居ることは無いだろう。
しかし別の危険がこのダンジョンにはある……それがピットフィーンドと無関係とは思えない。
「おいヒロ。やっとお目当ての奴が見つかった様だよ?」
エクシアの言葉で全員が一斉に転移魔法陣を見る。
「お早いご到着で……ウィンディア伯爵様!」
「おお!エクシアか遅くなってすまんな。ヒロ男爵すまん待たせた。それにしても……まさか貴族自ら私を探しに来るとは思わなかったぞ?大凡の話は聞いたが、詳細をヒロの考えで直接聞きたい。それで……此処の拠点を作りたいという事か?」
そう言ってウィンディア伯爵は周りを見る。
「何も無いな……。休息できる安全部屋でもなく、湧水が出る水瓶も、岩清水も無い……しかし此処に作る理由があるのだろう?」
「この下には僕とフレディ爺さんが最後に見た『ピットフィーンド』が階層主として居たんです……万が一の場合は逃げ込む先が近い方がいいかと……」
「成程……その話は私も老師から聞いている。たしかに近い方がいいな。転送陣が近いのであれば安心して探索出来るのも頷ける。分かった。此処に陣を設営しよう……ハラグロ男爵、ここの陣の管理をお前に任せて平気か?」
「ああ!ここは任せておけ、ウィンディアよ。お前は本陣で指示をしなければなら無い身だからな。何かあったらすぐに使いを出すから安心しろ」
転送陣から現れたウィンディアとハラグロ男爵に、今までにあった話をしておく……念の為だ。
大きな理由は少し先にある大広間には注意しないといけないからだ。
当然、足を踏み入れた場合に湧き出す魔物と、壁に埋まった金鉱石の話もする。
「そうか……グレート・ホーンとな?腕がなるな!!アイツからは強固な角や強靭な皮膚そしてフルプレートメイルが手に入るのだ……我々であれば問題なく倒せるし、むしろカモだ!それに此処でなら宝箱も出るのだろう?良い稼ぎだ!!わっはっはっは!!」
発言がマックスヴェル侯爵一同に似ていたので、一瞬悪辣貴族に見えたハラグロ男爵だったが、名前もハラグロだから仕方ないだろう。
「では此処を任せて良いですか?実はエルフ族の親衛隊隊長3人が下層を確認しに行って………」
僕がそう言いかけた時、血塗れのエルデリアを抱えたエルオリアスとエルフレアが階段から逃げ込んできた。
「ヒロ男爵様申し訳ないポーションを頂けまいか?我々のは既に使い切ってしまって………」
僕は血塗れのエルデリアの頭からポーションをぶっかける。
そして急いでもう一本を取り出してエルオリアスに渡すと彼は、蓋を必死にこじ開けてエルデリアの口に押し込んで飲ませる。
『ゴホ……ゲホゲホ………』
「く!?………ここは?ヒロ殿!?………って事は7階の転送陣前か?………とんだ失態をしたもんだな……」
「エルオリアスさん!何があったんですか?エルデリアさんがこんな怪我を負うなんて………視認阻害してたんですよね?」
「ガーゴイルの群れがいたんだ……アイツらに視認阻害は効かない。魔法生物であり、そもそも元が石だ」
エルオリアスがそう言うと、マモンが珍しく口を挟む……
「アイツらは魔力の流れを見て襲ってくるからな。目立つエルフはいい標的だろうよ!魔力が微量な人族の被害は魔導師でなければ余り無いだろう。だが、お前は別だぞ?ヒロ……お前はコイツ等エルフより目立つからな!」
相手はガーゴイル。
魔法生命体で素材は石となれば、水魔法に頼る事も出来ない。
「困りましたね……でもそこを進まないといけない理由があったんですよね?」
「ああ……階段に通じる部屋だ……」
その場所を通る理由が『階段に通じている場所』となれば迂回が出来ない……と言うことなのだろう。
エルフとしては、矢の効かないガーゴイルの群れなどは出来るだけ避けて通りたい筈だ。
するとそれを聞いたエクシアは……
「また部屋なのかい!?このダンジョンは危険な奴は必ず部屋に居るね!!」
「ガーゴイルは素材は何の変哲もない石だけど、魔力で飛べるのが厄介です……」
「そうっすね……シャインの言う通りっす。タンクからしてみれば、奴らの突撃攻撃は鈍器で殴られる位の衝撃はあるし、上からってのが面倒なんですよね!」
シャインの言葉にロズがそう返す。
「せめて石像があればな……ゴーレム作って放り込むんですが………」
「なんじゃ石像が必要か?それなら沢山あるぞ。儂等は鉱石に詳しいが、加工された物にも興味があってなー。それが石を素材にしたなら尚のことじゃ!」
ノームは8階にあると言う石像の事を話してくれた。
8階は今や途中から所々階層が変化しているそうだ。
エルオリアス達もそれを目にしたらしく、階段を降りて暫くは鍾乳洞の様な作りだそうだ。
そして突然朽ちた城下町が現れると言う。
ドワーフの作った街並みではなく、人の作った街でどちらかと言うと王都に似ているそうだ。
今までの情報を組み合わせると、大凡その場所は埋没した旧王都で間違いないだろう。
ダンジョンに旧王都の一部が吸収され、それを元に階層が変化していると思われる。
「ならばそこに向かいゴーレムを作りましょう!石には石を!……でどうですか?」
「なんか……発想がヒロらしいよね……。普通は選択できない手段を選んでいくところがさ………」
アーチが誉め言葉にならない事を言う。
しかし被害を最小限にする為だし、素材がダンジョン産なら加工の手間など必要ない………僕はその事に気がついて少しウキウキしてしまった。
「おい……ヒロお前の考えはわかったぞ?石工にお願いしなくても、ゴーレム部隊が『無限に』できるとか考えているんだろう?」
ウィンディア伯爵が『言ってはいけない言葉』を言ってしまう……その単語は『無限』だ。
周りの悪辣貴族は『ゴーレム』が欲しくて堪らない。
しかしそれが手に入る筈もない……何故ならば石像の製作依頼は既にパンク中だし、そもそも僕とは面識がない。
悪辣貴族の専売特許である『金に物を言わせた方法』でも作って貰えないのだ。
ゴーレムの制作者は突き止めたが、ウィンディア伯爵やザムド伯爵と仲良し組。
そして共にダンジョンアタックなどするとは、王都にあるゴーレム話を聞いた時に彼等は思ってなかったからだ。
「ウィンディア伯爵……ご承知の通り、作っても命令を出せるのは僕だけですからね?それに部隊単位は、細かい指示を設定しないと運用できませんし……そもそも足が鈍いんですよ?王都の城門死守などの特定箇所以外は使い道はありませんから。」
僕は悪辣貴族の牽制のために、術者以外の運用は難しいと言っておく。
僕なりの自己防衛だ……
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