第694話「大事件!?異世界製の凶悪武器が無くなった!?」
「一応簡単にではありますが、エルフ族の魔法陣学の基礎学は以上です。もっと学びたい場合は、人族の方で学ばれた方がヒロ様の為になります。理由はエルフ族と人族で解釈の差がある為です」
それを聞いた僕は前から気になっていた事を聞く事にする……無詠唱の件だ。
「以前精霊からは魔法は強いイメージが必要で、詠唱はそれをしやすくする為の繋ぎでしかないと言われたんですが……エルフ族はその事については何かご存知ですか?無詠唱に関する事なのですが……」
僕はついでにはなるが、精霊魔法の事も聞きたいので水っ子に教わったことをそのまま言う。
すると、エルフ族にも無詠唱を使いこなす者がいるらしく、同じことを言っていたと言ってきた。
ちなみにその者は、その精霊と契約しているわけではなく、単純に繋がりが深い関係だったそうだ。
そんな話をしていると唐突にエクシアの声をかけられる……
先程魔法学に飽きてどっかへ行ったのだが、自室に行って寝ていたらしい。
「アンタ達魔法の事を勉強するのもいいが、かなり遅い時間だよ。まだ寝ないのかい?」
そう言われてスマホの時間を見ると『1:16』になっていて、既に周辺に居るのはドワーフ戦士団だけだった。
当然ドワーフ達は姫の部屋を交代で警護している訳だが、どうやらクッションを枕にして交代で休憩をしている様だ。
厚手のカーペットのお陰もあり、地面の冷たさは感じないから彼等はそのまま寝られる様だ。
「すいません!エルフの皆さんつい長く聞いてしまって………」
「いえいえ、とんでもないです。そもそも我々は余り睡眠を取らないので……逆にヒロ様の睡眠時間を減らしてしまい、申し訳ないです……」
そんな風に話していると、エクシアは『またそんな事してると、アンタ達はいつまで経っても寝られないよ?あたしゃ寝るからね!』と言って部屋に帰っていく。
エールをたらふく飲んだせいで喉が渇いて水を汲みに井戸まで行った様だ。
このテントには折角洗面台があるのに……と思ってしまう。
ちなみに洗面台の水も風呂場のお湯も供給源は不明だ。
何故か出てくるので『異世界の七不思議』とでもしておこう。
僕はエルフ達にお礼を言って部屋に戻る……流石に寝なければ明日に影響が出る。
下手すれば、鉱山遠征に急いで向かわねばならなくなる状況でもあるのだ。
だが意識したせいで急激な睡魔に襲われて、つい忘れてしまう。
ドワーフ達から例のおもちゃを回収するのを……
それが後々問題を起こすとは、この時僕は考えもしなかった……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おはようございます………あれ?何騒いでるんですか?もしかして僕……寝坊しました?」
僕はそう言ってスマホを見ると時間は『8:05』と出ている。
すごい遅いわけではないが、こっちの異世界では日が登ると同時に活動する人が多い。
その反面、日暮れ前には仕事を終えて家に帰るのだ。
夕方からはかなり魔物が活発化して危険だからである。
「それが……ヒロから預かっていた、あの筒のおもちゃがないんだよ!」
「ええ!?無くしたって……このテントに居てですか?」
あまりの出来事に朝からビックリだった……まさか窃盗事件があるとは。
「昨日は私とミドリが部屋に持っていったんだ。そして寝る前に確かにマジックバッグに入れたんだよ……。そして朝飯を買いに食堂に行って……」
「戻ってきたら無かったと?」
ハルナはそれを伝えて来たミドリを見る……
「いや違うんだ……アタイは食堂にマジックバックを持っていって……帰りにはもう無かったんだ。だからハルナに言ったじゃないか……あの店で盗まれたって!」
「私はてっきりミドリが寝坊したせいで寝ぼけてて、他の物を持って出たと勘違いしてるのかと思ったのよ!」
二人は喧嘩を始めるが、そうなれば店に再度確認しにいくしかない。
「ひとまず、もう一度だけ食堂に行ってみましょう……目的がそれを盗む事だったら間違いなく望みは薄いですけど……」
ドワーフ戦士団が側にいながら盗まれるとは……どう言う事だろう?と思ったら、全員姫の命令で飯を食っていたそうだ。
交代して食事をすると街への移動に影響があるからと言う事だった。
それに全員が、ドワーフの持ち物を盗む奴がいるとは思ってのいなかったと言う。
食堂に向かい、怪しいやつを見かけなかったか聞く……事情を話すと女将は困った顔をする。
それも当然だ……ドワーフの姫から物を盗んだ奴が店にいた。
その上、それは領主がドワーフの姫に貸し出した物となれば、飯屋に悪評が出てしまう。
僕はハルナとミドリに座った場所を聞く……
しかしドワーフ達が座った席は食堂の割と端の方の円卓だった。
そして近くには窓が有り、場所的には窓の外からも盗めそうな位置だった。
「中で盗んだのではなく窓の外から?」
僕がそう言うと、戦士団は万が一危険があったら困るので、姫は窓際には座らせなかったと言う。
「そういやぁ、さっき店員がすっ転んでたよな?何もない場所で床が動いたとか言ってたじゃねぇか。それに関係がねぇかな?」
店の常連である大工が唐突にそういう……
僕は『急に床が?』と聞くと店員が何かが足の下にあって、急に動き滑って転んだという。
見えない何か……
しかし見えないナニカであれば追いかけようがない。
「ミドリさんはそのマジックバッグに何を入れてたんですか?」
「工具一式とドワーフ鉱夫地図……はヒロにあげたんだったね……あとは着替えとか……ドワーフ王国に関する物入れないよ。そっちはスキルでしまってるから」
そう言ったミドリはハッとする……
「アンタはー何で『そっち』にしまわなかったのよ!?何でマジックバッグに……もう!!」
益々不利になるミドリだったが、最早追いかけたくても追いかけようがない……盗まれたって時間が経っているのだ。
「なぁヒロ、聞いていいかい?あの超危険な弾は一緒なのか?」
そう言ったのはエクシアだった。
僕は風の攻撃魔法が詰まった薬莢を取り出して見せる。
「いえいえ……最後の焼き付けがあったので渡してません。持たせてあるのは『生活魔法の風起こし』なので衝撃波的な物が出るだけです」
僕は昨晩部屋に帰ってからライフルの方に生活魔法の『風起こし』を焼き付けて試したら、弾の代わりに衝撃波を放つ様になった。
細い筒の中で力の逃げ場がないので結構な威力になるが……攻撃魔法ではないので殺傷力は皆無だ。
クッションを射的の的にしたが、かなり楽しかった。
2丁あれば、クッションを的にして皆で射的場として遊べると昨日は喜んだが……まさか盗まれるとは……
テントにわざと残して、テント据え付けの品にする予定が台無しだ。
「それは不幸中の幸いだね……あんな危険な物をー誰とも知れない奴が持っていれば、怪我人では済まないからね……まぁ盗んだ奴は、ドワーフの品と勘違いするだろうけど……」
僕達はせっかくなので、食堂で朝飯を食べていく事にした。
万が一盗みが目的なら、既に村中探しても犯人は見つからないはずだ。
その上、姿を隠せる『スキル』か『マジックアイテム』持ちなら更に難しいだろう。
姫の私物を盗んだ以上、証拠隠滅くらいはしているだろう。
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