第669話「ピットフィーンドの企み」
「王様が言ってくれればいいんですけどね?政治とは切り分けて同時進行でやるって……両方とも大事ですよね?国を維持するのもダンジョンを破壊するのも……どちらか片方ではおかしいのでは?」
「確かにそうだね……あの王都付近の巨大ダンジョンは怠慢が産んだ結果だからね……ヒロがゴーレムで叩き潰さなかったら、王都は今頃もう無かっただろうね!だから王妃がヒロを推薦するのもわかる気がするよ?」
僕達がやるべき事それはダンジョン踏破である事は決まっている。
何故ならば『冒険者』なのだから……
それを言おうとしたらエーデルワイスが先に話を切り出す……
「ねぇ?言いにくいけど、今それどころじゃ無いでしょう?土精霊はダメージ多く消えそうで、火の精霊も危険なんだから……呑気に人間の都合で理由考えてたら……アンタ達1年待たずに滅びるわよ?」
「エーデルワイスさん?………今一年って言いました?」
エーデルワイスの言葉にいち早く反応したのはミクだった……
「え?何よ?一年は一年でしょう?……私のパートナーが使ってたわよ?ゼフィランサスアンタも同じよね?」
「もぐもぐ……何?……悪いけど後にしてくれるかしら?近隣のダンジョンの話の続きでもしてなさいよ」
「『その』話をしてるんでしょう?今話しているのは人間と貴女の尻拭いよ?『火焔窟』の!!土精霊のダンジョンの更に下、それで入り口が2箇所ってどう言うことよ!しっかり説明しなさいよ!!」
「むぐっ……それは……」
顔色が悪くなるゼフィだったが、思わぬ横槍が入る。
トロールテントの最終チェックが終わったのだろう……フレディ爺さんだ。
拡張スキルで作ったテントの構造が流石に気になった様で、フレディ爺さんは残って細部まで調べていた。
丁度それが終わったタイミングだったのだろう。
「それは……あれじゃろう?多積層ダンジョンでは無いか?上に別のダンジョンがあるでせいで、下のダンジョンの境界が不安定になっておるんじゃよ……珍しい現象だが、同時にかなり危険な状態じゃ!」
「多積層ダンジョン?」
「うむ……本来はダンジョンの上にも下にも他のダンジョンなど出来ないのだが、それが例外として起きる事が昔あったのだ……」
その珍しい事をフレディ爺さんは偶然見た事があるそうだ……長生きしているだけある……
だがその話を聞く限り、本当に偶然が重ならないと出来ない代物だった。
「そんな物が何故あのジェムズマインに?」
僕が長生きしているフレディ爺さんの感を頼りに聞いてみる……情報が多ければ遠征時にトラブルが少ないからだ。
「予測の範疇じゃが……先にできたのは下の方じゃろうなぁ。中間地点にに何か無いのか?問題なりそうなドワーフの坑道都市とかは?」
僕は先程埋めた墓地ダンジョンを思い出したのでそれを説明する……
「ほう……この土地は例の場所か……忘れとったわ。古戦場がもう少し先じゃから向こうかと思っとった……それにしてもダンジョンを埋めたのか?それはもはやカタコンベでは無いか!」
カタコンベという単語がある時点で驚いたが、異世界人がつけた名称だとも考えられる……
あえて話の邪魔をせずに先を聞く事にする……
その話を聞く限り、王都のギルドで聞いた内容と一致するものだった。
過去に王が『自分は魔物になる』と突然錯乱し王国史を全て破棄した……その後現在の場所にある王都を捨ててこの地に新しく建てたのだが、その王都は長く持たず元の位置に戻った結果、今に至るとフレディ爺さんは手短に説明をした。
当然アラーネア事件である事は間違いがない……良かれとした事が裏目に出た事件だ。
「じゃがそのダンジョンはこの真下であろう?入り口が地上に出現できないから横に広がったにしては、距離が長い上に地下に行き火焔窟になるのはおかしいのぉ?此処の真下のダンジョンは入り口が別の所に既にあるかもしれんぞ?」
唐突に怖い事を言う……だが可能性は捨ててはならない。
当然だが、スタンピードの恐れがあるからだ。
「では中間点に埋まった『旧王都』が問題ですかね?」
「うむ……調べないと分からんが……多積層のダンジョンで厄介な部分は、中間層が実体である鍾乳洞や廃墟とダンジョンの異空間の両方がせめぎ合う場所という事だ。真上にダンジョンの主が居る以上は真下のダンジョンは『その壁』を破れない。侵蝕と言うが同じダンジョン同士では無いのだよ。もはや敵同士と言っても過言では無い」
確かにヘカテイアとマモンが帰った時に、『ゲートがなんとか』と言っていたのは記憶に新しい。
となれば少なくともゲートは複数あり、ヘカテイアとマモンが協力関係な以上敵対関係である勢力が多く居るはずだ。
その勢力は龍っ子がぶん殴って燃やして帰した、魔王バロールの様な存在であり、そのダンジョンコア……即ちゲートを掌握している可能性もある。
僕の様にだ……
「まさか悪魔の仕業?魔王バロールはヘカテイアやマモンと対立………あ!!ドワーフのピットフィーンド!!」
僕は慌てて下のギルド施設の酒場で呑んだくれている、ヘカテイアとマモンを呼ぶ。
「何さ?せっかく上手い事に冒険者手玉に取って貢がせてたってのにさ!」
「ピットフィーンドって知ってますか?」
ヘカテイアは不機嫌だ……両手に沢山の串肉を持ているのにもっと欲しい様だ。
その様子を見て、呆れたマモンが代わりに答えた。
「あ?なんだ?雑魚悪魔がどうしたよ?」
「実は……ドワーフの件で色々ありまして……」
僕はそのドワーフの一件を話す……
「ドワーフには相剋は………」
「当て嵌まんねぇな……ドワーフは人ではなく魔物に近い『デミ・ヒューマン』だぜ?って言ってもお前はしらねぇよな?異世界人だから……まぁ、お前ら7人とある意味で違うって事さドワーフは……」
墓穴を掘った……マモンは人間の都合など気にするはずが無い……
少し前にカナミと僕は大方ばれているが、僕の周辺全員が『異世界人』だとバラされたのだ。
「や……やはり!!アナベル様にヒナミ様!」
安定的にソーラー侯爵は僕を剣神アナベルと間違えるが、それに構っている場合ではない。
此処にいるメンバー全員に口止めする他はない……悪辣貴族の面々が居ないのが救いだ。
「ソーラー侯爵様秘密にして下さいね?じゃ無いと……ゼフィとフレディ爺さんけしかけますよ?」
「もぐもぐ……何?食べていいの?でも随分不味そう……歳食ってるし……」
「儂もか!?……仕方ないのぉ……口を滑らせたら『範囲暗黒魔法』で生きたままアンデッドにしてやろうかのぉ?なぁ?意味はわかるかのソーラーの坊主よ?」
激しく首を振り口を噤む約束をするソーラー坊主もとい侯爵……
食事中のゼフィは元よりフレディ爺さんのその魔法は、もはや敵陣営のラスボスの魔法だ。
「マモンさん……そのドワーフが当て嵌まらないには分かったんですが……悪魔がそれを使って人間をどうこうするのは『相剋』絡みがあっておかしいのでは?と思ったのですが……ピットフィーンドは……名前のある悪魔では無いんですよね?その口ぶりでは……」
「まぁ雑魚だな……アイツら割と多くいるぜ?だが問題は『何をするか』だな……ドワーフが金に目が眩んでやらかしたのはよく分かった。だったら英雄のドワーフを乗っ取って『何かを取り込む』つもりか……その火焔窟って言ったか?そこでついでに精霊ぶっ殺して力でも得る気かもしれんなぁ……ちなみにその両方なら、人間にはちょっとばかり厄介だぜ?」
マモンの説明では『相剋関係』が無いピットフィーンドはその関係を欲しがっている。
何故ならば今より遥かに強い力が手に入るからだ。
その為には当然だが天族と『相剋』を持つ必要があるが、なのある魔神や悪魔にはそうそうなれない……何故ならば同じような悪魔は五万といるそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。