第644話「大失敗!?ホムンクルスに選んだ素材」


 マモンもヘカテイアの様に『周りの反応』を確かめているのだが、注目具合からなかなか人気がある顔立ちの様だと理解した。



 少なくとも今より人相が良いのは間違いがない……何故ならば獄卒は悪魔だからだ。



「仕方がない……俺も乗ってやる!それで何をすればいいんだ?俺たちは」



 僕はホムンクルスを作る時点で、命の石を使い基礎構造を作った事を説明した。


 意識があると、僕と相反し恨まれることになりからだ。



 だから今は意識がない状態だと教えて、その意識核を用意する必要があると教える。


 本来であれば肯定は意識核を先に作る必要がある。


「面白いわね……本来のホムンクルスは本当に人間ぽいのね?親である創造主とは恨み合い喧嘩するなんて……だからこそ絆は変に強くなるのね?」



 僕には何のことかわからなかったが、ソウマとユイナには思い当たる節がある様だ。



「ホムンクルスの感情って反抗期に近いのかしら?」


「そうだな……俺もそう思った。実はここにくる前日に親に食ってかかったばかりだから……」



 僕はユイナとソウマの言葉を聞きつつ、現状の状況を回避したい事を伝える。


 そしてホムンクルスの身体を使い、ゲートを通じて帰る事ができる可能性を説明する。



 そして当然、獄卒を倒さねばならないことも伝える……



 

「この身体とおさらばか……だが……ヘカテイアを放って置けるわけも無い。やむなしか……ならば今すぐ魔力を固めてコアとしての魔石を生成するしか無いな」


「そうね。まぁ私としては願ったり叶ったりよ?少しの労力で目的が果たせるんだからね!」



 そう言って二匹の獄卒は漆黒の魔石を生成する。


 二匹の獄卒から渡された魔石を鑑定すると『闇属性・特級魔石』と出る。



 僕はその魔石をホムンクルスに呑み込ませる。



「これで準備は整いました。あとは意識を移すだけですが、本来のホムンクルスと違って自由に動かせる筈です。『意識を移せば』ですけど……」



 僕がそういうと、面倒だと声に出して言うマモン……



「ならば獄卒とホムンクルス用に意識を分割しないとらんわけか?最低限の憑依だけはせんとならん様だな?面倒だが仕方がない……」



「「したかがない?馬鹿言っているのはアンタの方だよ!!」」



 ヘカテイアは既に身体を乗り換えたのか、獄卒の身体とホムンクルスの両方で話す。




「なんだと?ヘカテイア……お前そんな簡単に乗り換えやがって。こんな何が素材かわからない物を受け入れるのに、注意が足らないぞ。」


「いいから、さっさと乗り換えれな!!そうすりゃあ疑り深いアンタにも分かるよ」



 そう言われてマモンは渋々意識を乗り換える……慌てふためくマモン……



「ば?馬鹿なのか?この小僧……本当に馬鹿なのか?何故ホムンクルスなどにこんな素材を使ったのだ?もっと下の素材で十分だろう?ブラックマンバの大型種で骨も肉も全部同じだと?龍種で漸く倒せる魔物をホムンクルスの素材にだと?正気か?人間は大馬鹿しかいないのか?さっきの冒険者といい………」



「だからワタシは言ったんだよ!獄卒の身体はゲートに近い魔素が濃い場所でしか役にたたないのに、コレだったら何処でも好き放題出来る」




 マモンは近くに呼び出した眷属を次々に引き裂く……



「くははは!お前らかかって来い!我に傷を負わせられれば我が治める領地の好きな場所をくれてやる!」



 多分やばい物を与えた様だ……さっきの獄卒より動きがかなり良い。



「ねぇ?ヒロさん?……何をどうしたらアレを作る気になったのかしら?折角倒せる魔物だったのに……もうどう頑張っても私とミサちゃんでは無理よ?」



「そうね……カナミちゃんの言う様にもうアレはどうしようも無いわね。なんで素材にそんな物使ったの?まさか……手元にあったからとか言わないわよね?」



 僕は二人の取り調べの様な追及を避けるために、マモンとヘカテイアに話をする。



「これで分かりましたよね?僕が作れるって事が?」



「ああ、良くわかったよぉ!!それで?アタシたちはどうすれば良いんだい?どうしたらこのダンジョンから出て平気になるんだい?ああ!此処のガーディアンが居たっけね?出たら速攻でぶっ殺すよこの私がぁ!!」



「待てやヘカテイア。もっとこの身体と力を試させろや!新しいオモチャなんだぜ?」



 周りの目が痛い……好き勝手動く凶器を生み出したからだ。



「そうして貰えると正直助かります。でも危険な魔物が出てくる可能性があるんですよね?数回ガーディアンを倒したんですが……その度に色々あったので……」



 僕は非難の目を避ける為にヘカテイアに合わせてガーディアンの話に無理に切り替えた……


 しかし僕とヘカテイアそしてマモンの言葉を聞いてトラボルタが……



「な!?なんだと?ヒロは『ガーディアンを何度も倒している』だと?どう言う事だ?そんなに出くわす物では無いだろう?」



「え!?あ……いやトラボルタさん……実はですね……」



 僕はどう言い訳をしようか、しどろもどろになる……


 しかしヘカテイアは面倒になった様で、話を勝手に進め始める。



「なんだい?そっちの冒険者は満足に倒した事がないのかい?だったらさっさとワタシ達の残りカスを始末しな……ご要望のガーディアンが少し待てば来るはずさ!」



 ヘカテイアがそう言うと、徐にトラボルタの武器を持つ手を取り自分目掛けて突き刺す。


 その突然の行動にトラボルタは驚きの声を上げる。



「な!?」



「くっくっく……トラボルタとか言ったかね?手間を省いてやったんだ!感謝しな………」



 そう言うと、獄卒の身体を持つヘカテイアは崩れ去る。



 マモンも近くの冒険者の武器を持つ手を取ると自分に突き刺して、獄卒の身体を始末する。



「さぁ準備は整ったぜ?契約者!少しすればお望みの『ガーディアン』が来やがるからな……オイ!眷属ども、お遊びは終わりだとっとと帰りな!」


 どうやらマモンにとってこの騒動は『お遊び』程度の様だ。


 ヘカテイアも同じ様に眷属を元の場所に還す。



「人間は脆いから気を付けなさい?まぁ私達が貰ったこの身体を試すのに、ガーディアンで試すことになりそうだけどね?うふふふふ」



 今まで凶悪な邪気を放っていた獄卒から、ほぼ人間と変わらなくなったヘカテイアとマモンに動揺が隠せない冒険者達。


 しかし、見栄えが大きく変わることは警戒心を相当薄める様だ。



 ヘカテイアとマモンは今まで殺し合いをしていたのに、今では力の使い方をお互い話し合いながら模索している……


 エクシアはその様を眺めながら……『なんで何時もこうなるかね?ヒロが関わると事がまともに進まないんだよな……』と言う。



「エク姉さん、でも大概この後ヤベェ事になるんですよ?」



「そうだぞ?エクシア……王都へ秘薬を持って行ったらヤクタが絡んできて、その後にエルフ達が仲間になって、最終的にはアラーネアに出会う羽目になっただろう?」



「ロズにテイラーお前たち怖いこと言うなよ!!既にヘカテイアとマモンて時点でヤベェんだよ?言っとくけど片方は私らに馴染み深い呼び方なら死の女神ヘカテーの事だからな?マモンは言うまでもなく悪魔の君主だからな?」



「だから言ってんですよ!そんなヤバイモノ知り合いにしたんですよ?」



 エクシアはロズそしてテイラーに釘を刺す。


 しかしその話題の主であるヘカテイアが声をかけた……



「貴方達呑気に話しているけど……準備は良いの?もう来るわよ。時空が歪んできたからね?それに、この感じ……魔王種のバロールの様ね。アンタ達にとってマズイ奴が来たわね……魔王種の魔眼持ちよ。まぁ眼玉潰せば木偶の坊だけどね?」



「くっくっく……木偶の坊か違いねぇ!相手がバロールか……因縁持ちだから都合がいいぜ!デカい顔してやがるからな。デケェ目って言うべきか?だが小僧と契約して正解だ!此処でぶっ殺せばアイツは当分満足な力は戻らねぇ!」



 マモンがそう言い終わるとほぼ同時に、周囲に異変が起こった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る