第619話「ガラスの靴といい加減なネコ」
「も……申し訳ない!ついうっかり……忙しさにかまかけて……人選を誤りました………オレンジ!この事は絶対に秘密だぞ!」
すると、オレンジがその言葉に対して言った事は、非常に的を得た内容だった……
「皆さん言い辛いのですが……ヒロ様が『変異』した時点で近辺に居た大凡全員が気がついてます……そして本当に言い辛いのですが……長谷川さんと呼ばれる勇者は異世界人ですよね?その人と懇意にしていたヒロ様は『既に友人』と言う認識になりますよ?なにせ勇者長谷川とはダンジョンの地下で会ったんですから。そもそもですが、ヒロさんがこの街に来てそう長くはないんですよ?何故その知り合いがダンジョンに?それに……こう言ってはなんですが……ヒロさんのダークフェアリーへの怨みは、凄い熱の籠り様でしたから……」
オレンジの言葉に皆が顔を見合わせる……
しかしオレンジは、問題発言をさらに続ける……
「一応『絶対にそうだろう』とは口には出さず、なんとなく「『流れ』かもね?」って会話でする様にと……私からは皆に徹底はしています。付け加えると……今の時点では、あのポーションの所為で『薬師レベルが5以上のすごい人』って話の方が一人歩きしてます。だから今まで通りが無難かと……。ヒロさん言っていたではないですか?有耶無耶にできる事は明確にする必要はない……って。ですから、今のまま何事もなかったかの様にするべきかと?」
この中で一番大人だったのは『受付嬢オレンジ』だった。
僕らは『まぁ今更居たことを言っても仕方ない』と言う結果になり、明日は早い時間に集まり全員で『トレンチのダンジョン』へ向かう約束をして部屋を後にした。
明日は『風の8刻』にギルド前に集合だ。
学校に登校する訳でもないのに、かなり早い……
部屋を出る時オレンジに、『大丈夫です!言いませんよ?貴重な食材であるオルトスのお肉のお礼を仇で返せませんし……。受付はなんとなく誤魔化しておきますから安心してください!』そう言われた……オレンジの考え方も性格も、かなり大人だったので一安心だ。
僕達は、帰りがけに追いかけて来たデーガンから、お土産の串肉をたくさん貰った。
多分お土産では無く、『謝罪の品』だろう……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌朝僕は、起床したらすぐにユニークスキルの『倉庫』で中に入る。
忘れたら『マラライ』が大変な目に遭ってしまう……だから目覚ましに加え、画面にメモをつけておいた。
「おお!?あんさんえらい早起きでんな?今丁度納品終えたとこ!いやぁ……あんな壊れもんばっか、ぎょうさん買って……壊れないかヒヤヒヤもんでしたわ!まぁ弁償は嫌だから転送しましたけどね?」
壊れないじゃん!と突っ込みたかったが、朝早いので辞めておいた……ポチに合わせると、後始末が大変だ。
それにしても朝早いのにハイテンションだなぁ……『よく喋る口だけオバケだ』と思ったが、どうやら『異世界から今帰ってきた』そうだ。
何故か手には、あんまんと肉まんを持っている……
「ネコらしくネコのご飯食べてくださいよ!」
「アホか!?腹に溜まるかいな!!そんなもん!……腹持ち良い様に豚まん、そしてデザートにあんまんや!全くこれだから地球の人間は……ちぃ!」
韓流ドラマの日本語吹き替えの様に舌打ちをしているが……まさか僕の買い物が多いから拠点を地球に移してるのでは無いだろうか……
そんな風に思いつつも、つい突っ込んでしまう。
「中身が違うけど、ほぼ同じものじゃ無いですか!!まったく……」
「まったく!!ちゃいますやろ!?こっちはナニカのお肉こっちは何か甘い黒いやつ!!ご当地行ったらそこの名産食べるのが『旅行』でしょう?」
『中身が何かわらんで食ってるんかい!』と突っ込みたい性分をグッと抑える……
旅行と言いきっている……わざとか本当に旅行のついでかは、ポチの場合完全にわからない……
「アホかい!ツッコミは!?ボケたら突っこむ!それが話!キャッチボール!わかります?ええですか……そんなんじゃワシんとこの家族と会ったら総ツッコミされますで!もう!ホンマに!」
めんどくさいポチは延々と話している……
ツッコミをしないと一人ボケツッコミを開始するので、アナベルの派遣が急務だ。
もう好きにしてくれと言いたいが、僕はテントの再発注をかける必要がある。
昨日フレディ爺さんから教わった『マジックテント』の作成のためだ。
しかしフレディ爺さんのは、『村に置いてあるのは、あのままのテントにしとくんじゃぞ?何処ぞのバカが、マジックアイテムと分かった途端奪いに来かねないからな?貴族は厄介だぞ?』と言われた……たしかにその通りだ。
金と権力で力尽く……そうされたら村民は文句など言えない。
他の領主と揉め事になっても、気にしないのが『悪辣貴族や腐敗貴族』の特徴だ……避けるべきは避けるしか無い。
それに、家が建てばあのテントは用済みとなる。
「あんさん?それはそうと、此処でチンタラ話してる場合ちゃいますやろ?急いてきてたんちゃいますか?」
ポチにそう言われて、話のほぼ8割はポチだったので納得がいかなかったが……
「今日はテントの再発注が必要なんですよ!まったく話が進まない!……誰のせいか分からなけど、忙しいから注文やめようかな?」
「それやそれ!!それ(注文)があっての話のキャッチボールや!」
僕は5人様テントを再発注で5個頼む。
これはマジックテントに改造したら、王都近辺のダンジョン遠征時で使うためだ。
あのダンジョンはかなり巨大で、複雑な階層になっている……大遠征になるのは間違いない。
今のテントだと、6人組4パーティで部屋など埋め尽くされる……それも男女兼用だ。
この世界の冒険者は、男女兼用でもそんなの気にしないだろうが、異世界組は『はいそうですか……』とはいかない……
それにゼフィ達も鉱山の洞窟に、地べたに居続けるのはどうかと思う……
龍の姿が楽ならそのままでも仕方ないが『何もしてない岩だらけの地面』で雑魚寝と言うのも、現代人としては気になるのだ。
ちなみにアラーネアも同じだ……
あの糸塗れのあからさまな巣は、見た瞬間『恐怖しか』感じない。
絶対に寄りたくない場所だし、そもそも蜘蛛が苦手だから巣も当然苦手だ……蜘蛛の巣で嫌がる顔を見せたら、大凡彼女の気分を害すと思ったのだ。
なので一つはゼフィへ、もう一つはアラーネアそして遠征時の男女別テントに、遠征時の予備を含めて5個頼んだ。
当然僕達ファイアフォックスだけ豪華なマジックテントだと、色々と問題が起きた時対処が大変になるからだ。
今のうちに手を打っておいて、遠征時は自分の味方になる仲間を増やすのだ!
しかし今まで買っていた格安セール品を探すも既に無かった。
新しいテントひとつの代金は、送料合わせ金貨2枚になっていた……結構高い……
だが、今まで買っていた物と比べると遥かにグレードは良かった。
「あちゃー!あんさんが買い過ぎたせいで、値上げしてまんがな!!迷惑!めっちゃ狙ってた人にはめーっちゃ迷惑!!」
そうブツブツうるさいポチは、ページを勝手に拡張して開いていく。
「あんさん!何ですかこれ……あんさんの世界って……まさか……配送で武器も売ってるんですか?どう見ても危険な形ですよね?」
言われたのは、ガス使わず充電も使わない普通の『エアーガン』だった。
通称エアコキ……エアーコッキングガンの略だ。
「エアーガンって言って、オモチャですよ?今見ているこれは、18歳以上の指定があるので大人用ですけど」
僕がエアーガンの仕組みを説明した……
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