第609話「人類の敵?人間を辞めたつもりはありません!」
この世界は成長過程で『突然変異』を促す効果が稀に見受けられる……多分突発的かその条件が存在するのだろう。
魔物でいえばゴブリンが存在進化をした場合、ゴブリン種になるかレッドキャップの様な全く違う物になるかはわからない。
しかしゴブリンであった種族性は変わらないのだ……幾らレッドキャップになってもゴブリンとして暮らしてきたのだから、すぐに他のレッドキャップと同じ様にはならないし、そもそもそんな生き方がすぐにわかる筈もない……元がゴブリンだからだ。
結果ゴブリンの集落で暮らせる事ができたら、そのレッドキャップはその村で暮らし力関係の過程で族長になる可能性もある……想像なので『かもしれない』と言う方がいいかもだが……
トレンチのダンジョンの名前つきゴブリンを例に出して言うと、エクシア組の皆が『ああ!なるほど』と頷いた。
あそこのゴブリンの群れは、変異したダーク・ゴブリンと普通のゴブリンがエリアに混在したからだ。
ダークゴブリンは『ゴブリン族』の(ゴブリン種・ダークゴブリン種)でもあるが、(ダークゴブリン種・混沌種)でもある。
これらの正しい情報は、相手に知らせる為の優位性の結果(ゴブリン族・ダークゴブリン種)と人々が混乱して、勝手に一纏めした結果なのだ。
一言で纏めてしまえば、種は時に『幾つも体内に存在する状態』それがこの異世界の現状と言う事だ。
するとテリアが僕に質問をする。
「では……ヒロさんは、人と言う生き物でありつつ、魔王にもなったって事ですよね?人類の敵の……」
その質問にはゼフィランサスが答えてくれた……
「でも彼は『龍』でもあるのよ?私を見て?人化を使えば人でしょう?見かけだけどね?でも街を出たら火龍に戻るじゃない?じゃあ……火龍は人の敵?味方?時と場合によっても変わるし、仮に貴方か私の何方かが敵対して偏見の目で見たらそれは『敵』なのよ!昨日味方だった国が敵として戦ってるじゃない?人間は?そうでしょう?だとしたら敵と味方の区別は『人と魔王』の区別より簡単に切り替わるんじゃないかしら?」
その意見にウルフハウンドが物を申す……ビビりつつだ。
「で……でも魔王ですよね?それならテリアが言った人類の敵なのでは?」
「襲ってこない『名称・魔王』は敵かしら?味方かしら?どっち?仮にその魔王が人のためになることをしたら、敵のままかしら?それとも味方?同じ人族が襲ってきて大量虐殺をし始めた時、魔王と魔物が助けてくれたら敵かしら?それとも味方かしら?どう?」
周りはすごく混乱する……目の前にいる龍族は人の敵か味方か……そう言われているのだから。
「いい?大切な事を言っておくわ!敵と言うのは『襲われて初めて成り立つ関係よ?』実際の暴力や言葉の暴力、何でもいいけど相手が自分に対して何かをしたらよ?文字や言葉に踊らされてはダメ!貴方達がそれを忘れれば、周りは『敵』以外いないわよ?それは当然『人』同士もそうよ!忘れないでね?」
ゼフィはヒロの妻と言う共通認識ではあるが、人類の味方とは全く言えない……すごい難しい事だった。
「要はすぐに答えが出ないことに、無理に答えを求めるのは間違っているってことですよ!十人十色考えがそれぞれあるから個性があるんですし!答えを出したことで敵になるなら出さないで有耶無耶な状態が良いことも多いでしょう?」
僕は僕自身を有耶無耶にしたいのでそう言って見た。
皆は『そうだな!ヒロが敵になった場合、世界は滅ぶ確率が大きくなった……これ以上は藪蛇だ!』と言い始める……
デーガンが羊皮紙にそれを書き留めて、オレンジに渡してからすぐ様ギルドにいた冒険者達に今起きた事と、聞いた内容の『緘口令』を出す。
しかし、この羊皮紙が後々問題を起こすことになった……
リーチウムの前の仲間……すなわち悪辣貴族の関係者がこの事を聞いていたのだ。
そもそもリーチウムが此処にきた理由は、ヒロ男爵へちょっかいを出す為だ。
と言うことは、ボルトの街を出る際に、それを仲間の貴族に報告していたのだ。
しかし、周りの悪辣貴族は、その時リーチウムが改心する等とは思ってなかった。
王都にいる兄や年老いて尚、権力を持つ父と絶縁関係になる事は間違いないからだ。
だが予想に反して改心してしまう……
そして『心変わり』をした事は、家族は勿論、仲間の皆へすぐに知れ渡っていた。
知れ渡った理由は、リーチウムが大きな声で騒ぎまくったからだ。
当然それはゼフィが言った通り『考える事が苦手』なことに由来する。
悪辣貴族からすれば、それについては調べる必要さえなかった。
しかし悪辣貴族達は、その日から毎日徹底的に『彼の周囲を』調べていた。
その元凶が、一体なんなのかを何か調べる為が最大の理由だ。
そしてリーチウムの裏切りで、自分にまで害が及ばない様にする為にも裏工作が必要だからだ。
同時に、リーチウムの裏切りが今の現状より得をする内容であれば、周りの仲間より出遅れない様にしたいのは勿論であった。
調べた結果、ヒロ男爵と急接近した結果だとわかる……出会う以前の情報から噂を含め調べ尽くすと気持ち良いほどの無頓着……ただの馬鹿だと決定を下す。
しかし悪辣貴族の面々は、当然火龍の存在にかなり驚いた。
初めは幻影魔法の類と皆で決定した内容だったが、実在する事がビラッツの貰った『ゼフィの鱗』で証明されてしまった。
店に押しかけた貴族は食事をしつつも、彼が皆に見せる鱗を手に取って見させてもらった。
ビラッツにしてみれば、鱗より本人へ料理を出せる事が何よりの幸せだった為、かなり気さくに皆に見せて回った。
本来は鑑定などさせない『非常に価値のある物』だったが、ビラッツはこの性格のため拒まず『好きしてください』とまで言った。
後日、鑑定結果である詳細の書かれた羊皮紙だけで、大金貨20枚の値でやり取りされるに至った。
間違いなくゼフィランサスの存在が確認された証だからだ。
万が一にもビラッツに手を出したら『自領事生き物全てが殺される』事を心から悪辣貴族も理解していた。
だから悪辣貴族は総出でビラッツを保護し、囲い込みをする。
ビラッツの店を自分の街に誘致する作戦だ……初めは姉妹店を出させて、それから口説き落としゆっくり招き入れる計画だった。
鑑定結果から、魔物限定効果で特定範囲に魔物を寄せ付けない事が判明し、貴族達は大いに羨んだ。
ビラッツの貰った鱗の持ち主である伝説の火龍が街にいる。
自分に害もなく更に知り合いに自分がなれるなら、今以上に得以外の何物でも無いと理解できた彼等は、リーチウムの行動の先には悪辣貴族の心がまだあると誤った判断を出した。
だから彼等は静観ではなく、接触へ舵を切ったのだ……。
しかし一部の馬鹿な貴族は、日増しに火龍ゼフィランサスと仲良くなるリーチウムを見て、自分が無理をせずとも彼をダシに使えば、その戦力がなんとかなるかも……と考え始めた。
彼を通じて許しを貰い逃げる為の手段に使うのではなく、圧倒的力が必要な時の一時的な利用である……馬鹿な考えだ。
その結果、更に間者を多く雇いギルドやその周辺に行かせた。
当然周囲を探らせるためと、行動の全てを把握するためである。
移動した場所に、誰と会ったかまで全て把握しておく為だ。
貴族の情報収集能力は並ではない。
ほぼ毎日多くの間者をあちこちに送っている。
その距離は遠く、近場の小国郡国家の全域は勿論、帝都の先まで及んでいる。
その報告は伝書鳩はもちろん、高価な魔道具でも逐一されている。
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