第608話「強制進化と強制変異の行き着く先」


『………クアッドコア・種族『人族』……種『魔王種・悪魔種・龍種・精霊種』確定……個体名……『ノグチ ヒロシ』強制存在進化終了。コア管理者『ノグチ ヒロシ』確認……異常なし………コア・『クアッド』、状態『変質中』………称号『ダンジョン・マスター』を獲得………トレンチのダンジョン『掌握中』……施設ナンバー『ナシ』……施設名称『未入力・ダンジョン(デフォルト名称)』……現時点を持ってコア破壊及び拠点の移動不可・・・・・・『自動生産集合施設・ダンジョン』へようこそ!!マイ・マスター!!」



 急激に頭に情報が流れてくる……そしてかなり機械的な言葉で語りかけてくる……いわゆる音声合成技術を利用した念話タイプの様なものだった……



『続いて身体チェック開始……脳波異常ナシ……状態確認……種族人間……状態……混乱中……他の施設管理者よりメッセージ『ナシ』……『欲望の根源エネルギー』『保存量100%』……施設管理中の生物『外部より侵入多数・内部生命体のDNA採取設定 常にオン・全生命体、魔物総数55% 人種総数3%』……居住区設定及び生産エリア区強制排出設定『各部屋100%にて強制排出・オン 保護区ナシ 居住区ナシ』……他者への管理者移行は現状できません。……報告以上……』



 ダンジョンは、生き物が寄り集まって暮らす為の産物だった……それに今の報告では、『何か』の生産もでき『住居設備』にもなる様だ……


 しかし誰がどんな目的で作ったかのわからない……



 どうやらダークフェアリーは、この力を得て様々な管理をしたかった様だ。


 とても今は冷静になど考えられないが、この近未来的な存在について、あのダークフェアリーは何か知っている可能性がある。



 今ならわかるが、長谷川くんは『この状態に持って行く事』ができなかった事で『変質崩壊』した様だ。


 要は『強制進化』に失敗したのだろう


 しかし僕は、既に変質していたので強制進化の弊害と思われる『変質崩壊』を免れた様だ。



 しかしそれも僕の推測でしかない……長谷川くんの事を含めてなんとかして情報をもっと引き出す必要があるが、それより先に皆に無事の報告をしなければならない。



 決して『無事ではない』が、命は何とか取り留めた。



「み……皆さん……本当にすいません……なんとかなりました………今は何とか」



「な!何があったんですか!」



 シャインが足元で泣いている……そしてザムド伯爵が僕に質問をする……



「そうだ!?何があった?もはや打つ手が無いと思ったのだぞ?」



「いや僕もわからないんです……鉱山遠征前に、トレンチのダンジョンは破壊しておく必要があると思って、破壊の方法を調べたんですけど………コアを破壊した場合のダークフェアリーの件もあるので、万が一を考えたんですよね……」



 エクシアもゼフィも身を乗り出して内容を聞く。



「それで遠隔操作のコアで、『コアの情報と修正登録』と言う項目を読もうとしたら、どうやらそれは情報ではなく、コア管理者を修正登録をする項目だった様なんです」



 ダンジョンの情報など知らない皆がびっくりする……当然だろう……僕自身がビックリだ。



 コア管理者といえばダンジョンマスターである事は間違いなく、それは何がどうしてそうなるのかなど、今いる者には誰もわからないのだ。


 それを語り始めれば誰だって驚く。



 デーガンは内容を書き留めるために、すぐに未記入の羊皮紙とペンを用意する……


「ダンジョンコアを制御して使うには登録者が必要で、『何かに』適応するとそれが可能になる様です。それが今さっき起きてしまって、ダンジョンマスターの修正登録が始まった様なんです。本来管理者はどうしたらなれるかはわかりません。今は何もかもが手探りなので……どうやら何か生産できる拠点でもあった様ですね。何かがどんな物かは分からないですが、かなりヤバイ場所の様です」



「アタイにはちんぷんかんぷんだ!!一言で言えばダンジョンマスターが私たちの目の前のここにいるって事なんだよね?って事はトレンチの?アンタが管理者に?」



 僕も同じで、ちんぷんかんぷんだ……


 今なったばかりでそれがわかったらもう人では無い!……そして僕は人なんだろうか?



「詳しくはまだわかりませんが……僕が管理者になったせいで、多分あのダンジョンのコア破壊は、もうできない様です……すいません……」



「でもパパ青ざめてから……戻ったでしょう?なんか今は私たちと同じ匂いがするよ?」


「ああ!龍っ子それはね、実は人族の龍種になった様なんだ……僕自身その事の意味が全くわからないんだけどね?姿も変わってないし……」



 「「「「はぁ!?」」」」


「龍族の火龍や水龍ではなく、人族の?龍種!?何ですかそれは?」



 皆が一斉に変な声をあげる……今なったばかりの僕が分かるはずもないのだが……


 そしてテリアが質問をして頭を抱えて悩み出す……『龍?人?龍種?人種?ふえぇぇぇーー意味がわかりませーん!!』と言って頭をブンブンしている。



「でも……あなた……悪魔種と魔王種の匂いもするけど?」



「ゼフィランサスさん。正確に言うと、人族の魔王種、悪魔種、龍種、精霊種になったんですよ。コアのクアッドってところに関連する様で……それがまだ何かは不明なんだけど……ちなみに、なんか存在進化で事故が起きた様で………そうなったみたいです……」



「だから!!なんで普通と違う変な方に進むんだよ?って言うか聞いてた中に大切なものがないじゃんか!!『人種』はどこに捨ててきたんだよ?人族なんだろう?」



 ソウマがそう言うのも無理はない……僕も何処に捨てたか探しに行きたいのだ。



 初めから項目になかったので、『変質』とはその事ではないか?と想像できる。



 異世界の全員が白い目でみる……しかしシャインは、僕に関係のない事を質問する……近い感じはするが方向がずれた質問だ。



「じゃあ……人族の悪魔つきと呼ばれる状態は『人族・悪魔種』になったって事ですかね?稀に見かけるそうです……教会の話ですけど……」



 ピットフィーンドの言葉を思い出したので、僕は大凡そうだと思うと説明する……


 鉱山で以前、悪魔種を見た時にフレディ爺さんからその話が出たことを説明する。



「じゃあ、ドワーフのその人が悪魔に取り憑かれたのは呼んだからって事なのね?結果、侵食されて形は人として、魂は喰われて種は悪魔になったって感じって事ね?そういえば……パパの人格はどうなるの?悪魔種でしょう?でも取り憑いた側をどうにかしないと後々問題よね?っていうか……パパ……貴方の中には悪魔の意識を感じないわよ?あ!悪魔種って……パパが悪魔なのかしら?でも……それも面白いわね?龍に悪魔はくっ付ける事が出来るのかしら?人でできるんだから……」



 危険な発想を思いつくゼフィだったが、シャインに止められて『冗談よぉ』と言っている……ゼフィは僕と融合する話をしたのだから当然だが…


 多分ゼフィは未だに考えているみたいなので、真面目にそう思っているだろう……



 僕は青虫を例に喩えて、種というものを話す……


 同じ木から捕まえた『青虫』と言う総称を持つ個体を育てても、蛹から孵化したら違う個体になる場合があると……


 それは元々違う青虫だが名前は青虫で行き着く先は『昆虫』だ。



 人は青虫ではないし……人族は勿論、昆虫でもない。


 しかしエルフは『人種ではなく精霊種(森精霊)』だが、人族であり、デミ・ヒューマン(亜人種・半人種)なのだ。

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