第587話「大問題勃発……お祭りムードも即終了」
「だがお前は違う!まったく違うぞ?ハーピー族の族長が薔薇村に移住するだと?なぜそれを一番最初に言わない!!ハーピー種で人語を扱う程知能が高い固有氏族を自分の領土に抱え込むだと?それに河童?トレント?なんだその魔物都市は!!それにゴーレム!!魔の森開拓とその樹木伐採……報告が薔薇村ギルドから上がっている!」
激怒だ……テカーリン激怒だ……禿げているのでタコのように真っ赤だ。
「ギルド情報は、国王陛下も見ておられる!あの王都に居るゴーレムの戦力で、既に王都貴族は大変な事になっておるんだぞ?そこにお前が私物でゴーレムを?それも魔物対策じゃなく魔の森開拓?2日前からそれを知り得た王都の貴族が、石像依頼を山の様にして来たんだ!!あわよくばゴーレムにとな!!その上、王の側近が近いうちに状況確認に来るそうだ!!『石像依頼』を兼ねてな!!」
「え?そんなに売れているなら……儲かって良いじゃ無いですか?」
「阿呆かお前は?今鉱山は立ち入り禁止だろう!!その攻略会議を明日からするってのに、明後日王の側近が王都を発つそうだ!!そこから7日で鉱山がどうにか出来るとでも?石像造るのにどれだけかかるか!伯爵様は勿論、お前も頼んだのだろう?どれだけ王様への納品を待たせる事になるか!!」
僕はその言葉に不思議を感じた……どうにかするつもりで僕は帰ってきたのだから……
あのダンジョンの最下層では、土精霊が救いを求めているのだ。
1日でも放っておけば彼らの状態はどんどん悪化する……
既に放置し過ぎていると言っても、間違いでは無いのだから……
そう思っていると、ソウマとユイナが僕を見て言葉にする
「あ!ダメだわこりゃ……やる気満々な顔だし……」
「そうね……ソウマの言う通りだわ……もうダンジョンに行くつもりで帰ってきたって事よね?その顔は?」
ソウマとユイナの言葉を聞いたエクシアは笑いながら、『おい!テカーリン!!明日早い時間に作戦会議だ!決定だなこりゃ!!馬鹿が目醒めたからダンジョンアタック決定だわ!こいつだけでも行くぞコリャ!!はははははは!!』と言う。
テカーリンは頭をペシペシ叩いて……『本気か?お前ら?コイツは数日前にダンジョン踏破したんだぞ?疲れで休むもんだろう?最低でも20日は休むもんだぞ?』と言いつつ顔は笑顔だ。
「何言ってるんですか?疲れてないのに休んでたら、やる気なんか失せちゃうでしょう?」
僕は感じたままに言うと、ミサとカナミが大笑いする。
「ヒロさんて……実はダンジョン好きですよね?私つい先日助けて貰って、もう入りたく無いって思うくらいなのに!!」
「ミサ!ダメだって!この人私と会った時何してたかわかる?一人で水精霊の洞窟でダンジョンボス叩いてたんだから!!」
「う………嘘でしょ?一人で?まじでイカれてる………」
いいかた!!何事にも……言い方がある!!
酷い言い様だ……それに一人では無い!水精霊もボス戦では沢山居たんだと小声で付け加えておく……
ミサもカナミも呆れ果て、アーチとミクは可哀想な人を見る目で僕を見る。
ソウマとユイナは『この世界で暮らした方が幸せじゃ無いの?』とまで話し始めている。
「まぁ何はともあれ……お前たちファイアフォックスはヤル気なんだな?ならば私も今から参加冒険者を募らねばならん!!今丁度お祭り騒ぎだしな!良い時期でもある!下へ行こう!!」
僕達は話を終えて下へ降りる。
カナミそしてアーチはミクとユイナをミサに紹介していた。
これからミサを含めて下で串肉味変パーティーをするそうだ。
ソウマはこの旅でロズとベンと親睦を深めたのか、走ってエールを買いに行ってしまった。
僕は龍っ子が心配になり、座るように言った場所を見るが、龍っ子は冒険者の中に混じって串肉を頬張っている。
すぐ横に座る女性から、笑いながら龍っ子は肉を貰っている。
人懐っこい性格なのは分かっているが、金貨2枚の肉をもう平らげたのだろうか?
もうちょっと味わってゆっくり食べればと思ってしまう。
「龍っ子!会議終わったよ、宿に夕飯食べに行こう!」
「あ!パパ!お帰り!」
僕は串肉を貰っていた女性にお礼を言い、勝手に食らいついたと思われるのでお詫びに新しい串肉を買ってくると言う……
「………貴方ね?人の子を勝手に連れ回していたのは?」
そう言った女性から『殺気』が溢れ出す。
一瞬にして全員が凍りつく……
エクシアやカナミそしてミサでさえ動きが止まる。
「ママ!!ダメだってば!パパに怒られるよ?人前で『本気』出したらダメだって!!」
「「「「「ママ!?」」」」」
「あら!そうだったわね!ついウッカリ!お肉貰ったのについ顔見たら……忘れちゃってたわ!ホラお肉買ってきなさい!ママはパパと話があるから。ゆっくりよく噛んで食べるのよ?うふふ」
そう言ってまた笑い出す女性は、嘘のように『殺気』をしまい込む。
「初めまして、私はこの子の母親です!!まぁ……今の姿だと見ても分からないわよね?」
そう言った彼女は片腕にメタルレッドの色の鱗を出す。
「これで信じてもらえる?それにしても起きてびっくりしたわ……予定より100年も早くあの子が産まれてて……誰かから貰った餌まで食べてるんですもの!!それも妹達の分まで用意して……」
僕は話して良いのか分からない状態で、ただ話を聞いていた。
「でもまぁ……まだ産まれる予定じゃ無いから餌の準備などしてなかったのは事実よ?でもふと目が覚めると卵がひとつないじゃ無い!殻を早々に食べ尽くしたのかとも思ったわ……それで娘も居ないから慌てて洞窟内を見たわ。でも居ないから……人間が卵を持ち去ったと思ったのよ!……でも考えると、何故か餌が娘達の分全てあったのが不思議でならなくてね……。意味がわからな過ぎて、それで若干怒ってしまったのよね!」
笑いながら彼女は手に持つ串肉を口に入れ、咀嚼する……そして飲み込んでから、また会話を始める。
「ひとまず洞窟を隈なく見たら穴が開いてるから……やっぱり人間か!って思ってね……人化して一番近い街に来たら……娘が人に紛れて肉を食べてるんですもの!!それはもうびっくりよ!それも近くに行って聞いてみたら『パパ』に買って貰ったなんて言うから……ねぇ?……『そう思う』じゃ無い?」
「ど……どう思ったんですか?」
僕はウッカリ聞いてしまう。
「え?当然強制的に孵化させて、古の龍騎士でも目指してるのかと………馬鹿な言い伝えよね!心を通わせて居ない龍種の背に乗れるはずが無いのに!龍騎士よ?それを信じて孵化させたのかと思ったら……あの子が自分で外に出たって言うんですもの!更にビックリよ!」
「は……はぁ……そ……それで?」
「え?それでって……貴方をみて今に至るわ?私もお肉貰って食べてるのよ?」
「じゃあ……さっきの殺気は?」
「はははは!ダジャレかしら?あの殺気に耐えて言葉を発した上に、駄洒落なんて面白いわね!!流石にパパだわ。貴方をみたらよく分かったわ……龍騎士なんか知らないでしょう?」
「ええ……母親起こして問題にならないように、ご飯を渡していただけですからね。起きるまでご飯に困るだろうと思って……ウッカリあそこに入ったら見つかってしまって、お腹空いてたみたいなのでお弁当をあげたんですよ……それが始まりですね……」
僕は龍っ子の母親に状況説明を……と思い話をするが、周りの冒険者は全員が激しく横に首を振る。
辞めてくれの合図だろう……
エクシアでさえ言葉を発せず、様子を見守るだけだった。
「ちょっと?もう私の『恐怖と恐慌』効果に慣れたの?何この人……ちょっと変じゃ無い?貴方?」
「ママ!貴方じゃなくて『パパ』だよ?ハイ!串肉の塩焼きとタレ焼き!ママも食べるでしょう?」
「ありがとう!美味しいねぇ?このお肉!いっぱい食べて早く大きくなるのよ?……ねぇ?『パパ?』」
どうやら龍種特有の『恐慌』による状態異常効果の様だ。
恐慌耐性があり成功した場合『恐怖』の耐性テストに移行するのだが、僕は既に龍っ子と慣れ親しんだせいか母親の起こす『恐慌』にもすぐに慣れた様だ。
そして恐怖も当然耐性テストに成功して普通に話せる様になった……
問題は若干話せても、機嫌を損なえば死ぬと言う事だ……
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