第574話「脅威!連戦の予感と現れた魔物」
非常に凄い戦いだったが、アンデッドの脅威は取り巻きがいる事だ
今回は運良く群れがいなかった事が、勝敗を分けただろう。
ボーンジャイアントと一緒にスケルトンの群れが居たら、負けていたのは此方側だっただろう。
戦い終わる直前僕は、ボーンジャイアントを鑑定した……鑑定経験値のつもりだったが……問題が発覚する。
固有個体発生率が100%になっているのだ……。
『…………ん!?階層主がアンデッドのスケルトン種って事だったら……倒したら100%で連戦?』
そう思ったのも束の間、背後の部屋から念話が来る……
『其処の者に問う!我は王国の騎士なり!姫はご無事か!!』
全員が一斉に振り返る……
其処には、名のある名工が作ったと思われる鎧に身を包んだ、龍兜の騎士が部屋を跨ぎ入ってきた。
「なって事じゃ!スケルトンでは無いぞ!!あれはスケルトンナイト!!……下手するとスケルトンキングかもしれん!!」
アルベイの一言が気に障ったのか、その騎士は剣を振り上げ真っ直ぐに振り下ろす。
『スケルトンだと!?世迷言を!!言葉に気をつけろ!『斬無!!』」
強烈な斬撃がアルベイ目掛け飛んでくる……僕は横っ飛びでアルベイに飛びついて攻撃を寸前で交わす……
『ほう!?子供よ!良くぞ見抜いてかわしたな。我の呼び名など今はどうでもいい……姫はご無事か!』
僕は質問の意味が分からないので、率直に聞く事にした……
「姫と言っても沢山いるでしょう!何処の誰の事ですか?シリウス姫ですか?カノープス姫ですか?何方にせよお二人は無事ですよ!秘薬で治しましたから!」
するとその魔物は憤慨しながら、僕に向けてぶっきら棒に言う……
『シリウス?カノープス?何を言っておる?姫というからには一人しかおるまい!!妹様を案じて居られるアラーネア様だ!!』
突然の発言に、僕は驚きが隠せない。
アラーネアの名前を知っているのは、エルフの3人にアルベイそしてミミだ。
更にその姉妹となれば話は大きく変わってくる……
全員で顔を見合わせると、龍兜の騎士は剣を此方に向けて……
『その様子……知っていると見た!お主らは我が国の騎士団の者か?それとも冒険者か?何をしにここまで来た?まさか……王家に一大事でもあったのか!?』
僕はなんとなく意味がわかってきた……
彼は何者か分からないが、骨が何かの拍子に此処に運ばれてきたのだろう。
そして困ったことに『固有個体発生率』に充てがわれていたのだ。
それもアラーネアを知っている時点で、既に3000年と言う年月が最低でも過ぎている。
そして彼の記憶は、死んだ時のままだろう。
僕は、本当のことを言って混乱し錯乱しないか心配になった。
だが真横に爆弾娘が居た事を完全に忘れていた……
「あらら!!アラーネアさんのお知り合いですか?お師匠様と同じですね!アラーネアさんはお師匠様のおにぎり大好物で、王都では一緒にご飯を食べてましたもんね?ねえ!?お師匠様……」
『ぬぬぬ!!お主……アラーネア様と共に食事をされる程、懇意を持つ者であったか!!これは大変失礼した!我は水龍騎士団・斬り込み隊長『アシュラム』と申す!それで名はなんと申されるのだ?この辺境のダンジョンへは何をしに?まさかその若さで我と同じ『神薬』探しとは言うまい?まさか………姫輿入れの為の王家への貢物探しか!?』
問題発言を投下してくれたミミのお陰で、一触即発の危機は免れた。
だが問題も引き続き続行中だ……
本当の事を話せば大変な事になるだろう。
既に当の王国は無くなり、アラーネアは魔物としての生を得て生きている……とは言い辛い。
その上アラーネアは、帝国領へ行ったきり帰ってきていないだろうし、僕も探さず会ってもいない。
そもそも此処は最近出来たダンジョンで、彼が居たダンジョンとは違う。
彼が探索していたダンジョンが、僕は何処かも知らないのだ……
辺境と言ってはいたが、その辺境が異世界人の僕には何処かも分からない。
しかし嘘を付けば後で大事になるだろう。
あれだけの剣技は間違いなくヤバい……出会い頭にアルベイを縦方向に両断しようとしたのだから。
当のアルベイは言った事を後悔して、凄く青ざめているのだ。
僕達が避けた場所には、くっきりとダンジョンコアの部屋に続く切り裂かれた跡が残っている。
どれだけ危険な技を使ったらこんな事が出来るのか、想像すらつかない。
嘘をつかず、それとなく話すしか無いだろう……
僕はアラーネアが帝国領へ行き、既に王政は彼女の遠い親族が引き継ぎをしている事を話す……
そして、残念ながらここは探索に来ていたダンジョンでは無いこともだ。
問題はアラーネアの年齢や状態だが、それは直にアラーネアにあった後に彼女から話してもらうしか無いだろう。
そしてその様子を見てから、彼と今の現状を話す事にした……
しかし僕がする説明の途中で、彼は自分の身に起きていた事を整理していたようだ。
「薄々は気が付いていた……お主達の会話やこのダンジョンの見たことのない感じ……そしてこの我のしわがれた手を見ればな……我は……呪いを受けていたわけではなく……死んだのだな……そして何故か魔物として此処に……」
そう言った彼は手に持っていた剣を投げ捨て僕に……
「その剣は名工の作でスキルを持つ……お主にやろう!!だから……すまんがその剣を使い、我に安寧を与えてはくれんか?お主のその優しさには助けられた……だが……役目を果たせず、その上……魔物として生きる位なら……いっそ!!」
するとミミは駆け寄り『バチコーン』とアシュラムをぶん殴る。
「バカタレーー!!何を言っているんですか!!ミミは本気で怒りますよ!!アラーネアさんだって魔物になっても、頑張って生きてるんです!貴方はアラーネアさんの騎士なんでしょう?誰が守るんですか!あの人はもう独りなんですよ!……それに……新しい知り合いだって、今は師匠様しか居なくて!!……それでそれで!……強すぎて……守られる必要が!!……あれ?」
ミミは口と頭が連動していない……考える前に勝手に口が動くようだ。
それに殴ってから『怒りますよ』というのは間違っている。
ひた隠しにしてたアラーネアの事を暴露したが、アシュラムは笑いながら……念話でなく普通の言葉で……
「ミミと言ったな!貴女はアラーネア姫のように優しい方だ!こんな状態の私に生きろと言うんだからな!だが我は既にアンデッドだぞ?万が一姫が生きていたとしよう……だが、姫に合わせる顔がないだろう?既に死に姿まで変わってしまった!更に約束を守れなんだ!神薬を得られなかったのだ!!」
「神薬?知りませんよ!また探せば良いじゃ無いですか!次は死なないんだし!!見かけが心配なら、お面でもつければいいじゃないですか!ミミが作りますよ!!手は手袋で脚は長いズボンでも履けばわかりませんよ!もし見られたら、冒険の最中に呪いを受けたとか言えばいいんですよ!そうですよ!いっその事呪いを全身に受けてますって言えばいい!!うんうん!!ワテクシ頭いい!!」
マイペースなミミに引きずられる形で、アシュラムは何故か生きる方向に強制的に向けられている。
最終的にミミは『薔薇村で大工さんに木製のお面作って貰えば平気ですよ!私の親も今はその村で厄介になってますし!ハーピーもトレントも居ますし!!魔物が一人増えても気が付かないでしょう。問題ないですよ!どうせ領主はお師匠様だし!』と言って半ば強引にこのダンジョンから連れ出そうとしていた。
どうせと呼ばれる領主で、心から申し訳ないと思います!!
「ならば……これから我が姫はミミ殿になって貰おう!アラーネア様の亡き今、わたしには新たに仕える主人が必要だ!魔物になった私を此処から連れ出そうとする貴女に……責任を取ってもらおうではないか!!」
「いいですよ!ミミだって、へなちょこで死にたくないですから!あんな攻撃出来るんですからちゃんとミミ達を守ってくださいね!!」
売り言葉に買い言葉じゃないが、なぜか魔物とミミの契約が成立する……それも超危険なのは既に攻撃された今、周知の上だ。
そしてミミの説明虚しくアラーネアが魔物として生きている事を、何故か認めないアシュラムだった。
しかしミミは、何故アラーネアが魔物になったかを知らない。
だから説明ができなかったのだが、アシュラムは自分の主人が同じ様な環境になったとは、俄かに信じられない様だ。
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