第531話「こっちから状況整理に行ってみた!」
「………く!敵と見做されず、放り出されて黙ってられるか!!」
『ギィィン』
「ト!トンネルアントの亜種!?が護っただと!?お!お前何者だ………ってあれ………どこ行きやがった!!」
注目を浴びているとハイドスキルが使えないので、足速に森へ飛び込むと樹木が茂る森の中で屈みスキルを使う。
彼等の詳細情報は鑑定を使って調べたが、戦闘スキルは接近戦限定の物ばかりだった。
彼の様な戦闘大好きな相手をしていれば、時間がいくらあっても足りない。
アリン子は突然足元から穴を開けて飛び出て来たのだが、もしかするとジェムズマインの地下は既にアリンコ専用通路の蟻の巣になっている可能性がある……
アリン子は僕を守るとまた巣穴に戻って行ったが『もしかしたら今も付近に居るかもしれない……』と思い感知を使うと離れていく◎印があったので、巣穴はあの辺りまでの様でどうやら宿に帰る様だ。
と言うより、地下の巣穴は決定の様だ……誰かが誤って落ちたりしない様にだけはしなければならない。
僕は迂回しつつ包囲を掻い潜ると、急いで後方で待機している司令部付近に行く。
注意しつつ周りを伺うと、人に出入りが激しいテントと豪華な天幕テントの両方を発見した。
多分出入りの多い方が司令部で、豪華な方がドワーフ王の居るテントだろう。
もし問題を起こしたのが『ドワーフ王』であれば、豪華なテント内部には居ない可能性が高い。
今まで注意深く周りを見て来たが、王らしき人物は居なかったしミドリさんも居なかった。
ミドリさんは一度しか見てないが、見ればすぐ分かる……周りはよくゲームで見かける髭もじゃドワーフそのものだったし、女性ドワーフは其れ程多く見かけていない。
見つけるたびに振り向くまで暗がりに潜んでいたが、まるでストーカーの気分で精神上良く無い。
早く見つけて事情を聞いてから、この場を離れたい。
僕が豪華な天幕テントを覗くと、槍で構えられて行動制限をされたミドリを見つけた……
どうやら捕まっていた様だ……ミドリは裏切ってなかった様なので何よりだ。
「何奴………ぐあぁ!」
「て……敵!?何故こんな所に!!ガッ!!」
僕はすぐに接近すると、足を引っ掛け転がすついでに手刀を打ち込み意識を奪っておく。
仲間を呼ばれればそれこそ面倒だからだ。
「ふぁ!?ふぐぅ!ガグガグ……ふがぁ!!」
僕は指で静かにする様に促してから、短剣で捕縛しているロープを切る。
「な!?なんでここに?ここは本陣だよ?どうやって………」
「今はそれどころじゃ無いです!ドワーフは戦争する気なのですか?ジェムズマインの街を寄越せって言ってますよ?王様はなんて?」
「それなんだが!伝える前にバウギンの奴に捕まってこのザマだよ……本当にすまない!でもこの犯人はバウギンだ!王は多分司令本部のテントだよ!」
今の状況の確認をすると、どうやらブロックが貴族のバウギンというドワーフに報告したことで、今回の一連が起きた様だ。
ミドリは捕まっている間に確認できる範囲内で情報を集めた様で、僕のクリムゾンミスリルを今回の暴挙のネタに使ったそうだ。
しかし残念な事にドワーフ達の意見は分裂したそうだ……
バウギンが率いていた悪辣貴族は鉱山の収入と坑道確保に奔走し、中立軍は次期ドワーフキングの座を争いジェムズマイン占拠者が、人族の王と話す権利を得る事で纏まったようだ。
だからと言ってなんの策もなくジェムズマインに攻め入っては、人族との全面戦争は避けられないので、それぞれが知恵を絞って条件を飲ませるかを勝敗としたようだ。
僕は既にジェムズマインの城門の前で人族と仲が良いエルフ族と交戦中だと教えた。
それも交戦相手がエルフ王の直属騎士団の部隊長だと言うと、途端に青ざめてしまった。
僕は少し思い付いたことがあったので、ミドリに聞いてみる……
「ミドリさん……僕に攫われてみませんか?」
「は!?意味わかんないんだけど?なんでそうなるの?」
「いやーどうせ話す人が必要なので、人質として僕がミドリさんを脅しつつドワーフ王を拉致して、ついでに城門までヨロシク!ってした後中立の貴族何人か拉致すれば事が済むのでは?真相をジェムズマインで話せば誤解も解けて、僕は褒美にドワーフ冒険者を紹介してもらうって感じです」
「今シレっと褒美も混ぜたのは良いとしてなぜその褒美が『ドワーフ冒険者の紹介』なのさ?意味わかんないんだけど?………でもここに一人で来るって事は戦力的にヤバいって事だよね?………良いよ!攫われてあげるさ!」
ミドリはドワーフ衛兵の武器を掴むと、すぐに天幕テントから飛び出て周りのドワーフを制圧する。
そして王がいるだろう天幕テントを指さす。
「ミドリさんは手を出さないで下さいね?同族襲えば厄介な事になるだろうから……じゃあ行きましょう!」
「ああ……分かったけど……平気なのかい?ってオイ……アタシを盾にして入れよ……もう!!自由すぎんだろアンタ!!」
僕はミドリに言われて、彼女を盾にするのを忘れた事を思い出す。
「忘れてました!ははは!」
僕は天幕テントの中に入った後、ミドリさんの左腕を掴んでクルッと周り短剣を首筋にあてがう……
「ちょっと……うぉぉぉ……コワ!!アンタマジ怖い!!普通笑いながらそんな事しない!!」
この異常な会話に一番最初に反応したのは『ブロック』だった。
「な!?ヒ……ヒロ男爵!?何故ここに………グ!!ギャ!!あああ…………腕……腕が上がらない!!」
僕は恩を仇で返したブロックの両肩に、スローイングダガー2本を投擲する。
「貴方は恩を仇で返しましたね?後でポーションでも飲んで治してください……次邪魔したら首刎ね飛ばしてから『氷漬け』にしますからね?」
僕はそう言ってから、すぐ横にあった水差しをアイスの魔法で完全に凍らせた後、裏拳で粉砕する。
「全員動かない様に!ミドリ殿下が怪我しますよ?あ!ドワーフ王は戴いて行きますね?」
僕はそう言ってからアサシンスキルを使い、視覚から消える様に動く……
ちなみに『影歩き』というスキルで、アサシン特有なスキルの様だ。
動くと面倒な衛兵から片っ端に『麻痺』の状態異常にする。
これはイスクーバに使った物より酷い物で、針を使い相手に状態異常を与える技だ……名前はそのまま『麻痺針』だ。
ちなみに持っている針は、ミドリの腰に下げている道具袋で見つけたのでコッソリ拝借した。
針があるだけで、スキルを叩き込めるのは凄く良い……使う相手次第だが、かなり使い勝手は良い方だろう。
僕は天幕内に居る全員に麻痺を打ち込み、逃走準備が終わったので王様の近くまで行くと、短剣で縛られているロープを切り猿轡を取る。
「何故切るのじゃ?あのまま連れて行った方が楽じゃろう?」
「ミドリさんとあのままでは話せませんよね?事情はミドリさんに聞いてください。ひとまず……攫いますね?」
「断れば!?」
「断れば?ですか?ドワーフ国を破壊しににいきましょうか?」
僕はそう言ってから石像のゴーレムを出す。
使うのがプロトタイプのゴーレムだと、下手すれば相手を殺してしまうかもしれないからだ。
「ゴ………ゴーレムを?5体だと!?ど……そもそもオヌシ!何処から出した!?」
僕はゴーレムで前を薙ぎ払いながらジェムズマインへ戻る……
「ミドリさん!王様に説明を!あ!その前に中立組の主要メンバー見つけたら教えてください!攫って来ますから!」
「あ………今ゴーレムで薙ぎ払われたのが……シルバードワーフ族のジャイアント・スレイヤーを冠する『アラヤトム』伯爵だ……」
「え!?マジっすか?ゴーレムに挑んできたから殴っちゃった………」
どうやらぶっ飛んで茂みにめり込んだのが探し人だった様だ………
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