第501話「下層から上がって来たのはミミの家族達」
「何があったのですか?下層階から上がってきましたよね?」
「魔物が!突然魔物が!!襲いかかって来たんです!石を探していたんです!水輝石を……それなのに何故かこんな場所に……」
ミミの妹だろう……かなり慌てて言葉がしどろもどろだ。
その様子をみた父親だろう男性が、その時の詳しい話をしてくれた……
「私達親子は娘の為に水輝石を集めに来たのですが、突然眩暈がしたと思ったらこんな場所に………帰り方も分からず歩いていたら偶然『北の巫女様』に会いまして……そこから更に歩いていたら『西の巫女様』にも。ですが何故此処にいるかは誰も分からず……本当です…水の精霊様に誓って!!」
僕はこの村であった事をミミの家族と巫女達に話すと、西の巫女と北の巫女が激しく喧嘩を始める。
「だから貴女の『巫女あがり』を反対したのです!ミミとて同じです!『巫女修練』から逃げ出したのですから、貴女と変わらない……だから水精霊様方が嘆いて居るのです!」
「何ですって!巫女の座に何時迄も居座る『西のお局』の癖に!!そもそもその男の言葉に嘘が無いと誰が証明しますか?ミミの事などどうでも良いのです!どうせ水輝石を光らせたなどとは嘘でしょうから!」
そこに現れたのが、現時点で大問題の『ミミ』だった。
「ヒロ様!無事ミミを回収して来ました!ちょっと『揉め事』になりましたが、ミミの『巫女戻りをしない』の一言で無事解決しました……」
「はい……ミミの所為で村人同士が争うのは嫌なのです!巫女は他の人に任せて私は『水の信者』として多くの人を救う『水を扱う冒険者』になるつもりです!!師匠の様に!!」
当然だが真横に父と妹がいるが……それに気がつかないのは『ミミ』だからだ……
「ミミ!!お前の夢だったんだぞ?水の巫女は?そんな諦めて平気なのか?」
「そうだよ!お姉ちゃん!皆に馬鹿にされても頑張って力を付けてくる!って言ってたじゃん!それに私知ってるよ?『巫女修練』は勝手に出てったわけじゃなくて、東の宮以外の巫女候補が『修行の旅』の偽書状を作った事だって!!」
「お!おとうしゃま?にモモちゃん?何で此処に!?」
「おい!ミミ……さっき説明したよな!?俺お前に確認したぞ?家族が『水輝石』採石に行ったかどうかを!」
ミミは真横から声をかけられ、それが家族だった事に驚きが隠せない。
しかしルームは、確認した事が『全くミミに伝わってない事』に驚きが隠せない様だ。
ミミの妹はどうしても我慢できなかった様で、問題となりそうな事を全部ぶちまける。
親と巫女2名が居るのだから、後々シコリが残りそうだ。
「ずっと私その書状隠してるんだから!彼女達はその偽書状を今でも血眼になって探してるんだよ!この間なんかミミお姉ちゃんの私物を確かめさせろって家にまで来たんだから!!」
「「何ですって?偽書状!?」」
ミミの妹の発言に、巫女二人はすごく反応を示す。
「そんな物嘘に決まってます!」
「そうです!出来が悪い娘の妹も出来が悪いとは!!」
顔色が悪い二人は何かを知って居るのだろう。
しかし問題は『出来が悪いと言っているミミ』を『何故』追い出そうとしたかだ……勝手に自滅するのを待てば良いはずなのにそれをしないのは……
と思うと後ろでその話を息を潜めて聞いていた人が声に出す。
「そうでしたか……『舞姫の座』を欲した物達が『ミミ』を追い出したのですね?偽りの書状で!それでミミの妹さん、その書状は何処に?」
「「水氷の舞姫・ミセラ様!?」」
「え!?舞姫様!?ミセ姉!!何年振りでしょう!ミミはお師匠を見つけましたよ!凄い人なのです!!後で色々積もるお話をしたいです!ミセラ姉様と!!」
パウマーとリーシャイはしどろもどろになりながら取り繕おうとるが、ミミは舞姫を知って居るらしくマイペースに話し始める。
ミセラはニコニコしながら、『此処から出たら是非聞かせてくださいね?』と言う。
ミセラの表情でなんとなく事情が読めた……多分間違いではないだろう……
ミセラはミミに目をかけていたのだろう……
たしかにミミは次期『舞姫』には、もってこいの逸材ではあると思う……あの村での奉納の舞はそれ程までに素晴らしかった。
それをミセラは修練中に既に見抜いて居たのだろう。
ただそれを知ってしまった周りがは気に食わない……その周りは彼女の『座』を狙う東西南北の『巫女』だろう。
ただし『東の宮を除く』と妹が言ったので、大方目の前の2人の他にさっき僕に噛みついた巫女が真の『ボス』と言ったところだろう。
巫女候補をけしかけて、『修行へ行け』とでも唆したのだろう。
修行をすれば今よりマシになるとか言ったのだろう……
あの水精霊のダンジョン最下層で、ミミは上級精霊にカミカミで何かを言って居たし、まず間違いはないはずだ。
『いつかは村に来てくれれば村民がなんちゃら』と言って居た気がする……
しかし『東の宮』はそれを知らないので『大激怒』だったのだ……東の宮とすれば『勝手に修行の旅』などは自分の力が足りて居ないと遠回しに言われた様な物で、他の宮に知れ渡った時点で大恥だし、そもそもその裏事情さえ知らないのだ。
だからこそ『ベグラー宮司』があれだけ怒り、娘のカーデルはミミを連れ帰った僕を怨みの籠った目で睨んだ訳だ。
「ミミはそんな感じで修練に出たの?武者修行の旅に?」
「はい!そうですよ?皆がミミの為に準備してくれたので!!これで少しでも実力をつけてベグラー宮司に恩返しをしたかったのです!でも帰ってきたら何故か『武者修行は許してない』と怒られちゃいました!!」
「ミミはベグラー宮司に確認せずに行ったのですか?最後の日に必ずベグラー宮司に『よくやった』と言わせて見せます……と言ってたではないですか?」
「ミセラ姉様!だって皆が頼んでくれたのですから!各宮の巫女様からベグラー宮司に直接許可を取ったって……それと『長期外出許可証』も貰いましたし!私だと直ぐに無くすからって、妹はそれを預かってくれましたし!!」
「ミミの妹さん?その書状は今どこに?」
そうミセラが尋ねると、モモは毎日持ち歩いて居た様でそれをミセラに渡す。
「たしかに……西の巫女に南の巫女それに北の巫女の連名がありますね?私が東宮の出なので『東の宮』には知らせてないのは『盲点』でしたね?それにミミさんの妹さんが『切れ者』だったので助かりました!」
ミセラはそれを僕に何故か預ける。
「え?何故僕に?」
「ヒロ様がミミのお師匠様とお見受けしましたが?」
「そうです!ヒロ様は精霊に愛された!すっごいしすっごい!お師匠です!3精霊との契約『モガモギモガモゴモゴ』ぬーーーー!シムーーーー!ルーちゃん!!クビ!ムームー!!」
ルーナのチョークスリーパーでクビと顎を決められる、話せなくなるミミ……だが慣れのせいか、なんとか顎の可動域を確保してしきりに謝る……
「ゴメンナヒャイ!イイマセン!ゴメンナヒャイ!ルーナチャン!シム!モウシマヘン!!」
「ヒロ殿!この際話は後回しにして、ミミさん達に地上へ連れ出してもらいましょう!この下にも救援を待っている者が居るかもしれません!」
そう言ったのはエルオリアスだった。
言うべき事は的確で、その通りだった……のんびり犯人探しと不正の暴露などをしている場合じゃなかった。
「ルームさん申し訳ない、来たばかりで疲れているだろうけど彼らを地上へ!」
「ミセラさん貴女達は皆の非難を、パウマーさんとリーシャイさん……残念ですが、じきこの村は全てダンジョンへに飲まれるそうです……なので村民に隣村へ避難をする様に言ってください。それが上級水精霊の最後の願いでした」
ミセラは強く頷いたが、パウマーとリーシャイは何故か返事をしない。
再度確認をしようとしたが、その違和感に気がついた。
手の甲に『背信者の烙印』が浮かんでいたのだ。
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