第484話「森っ子さんの登場と問題発言」


「皆さん、風っ子さんは僕がと言いましたが、実は目立ちたがり屋で『お手伝いして目立ちたい』と言ったのでコレを作りました。毎日風の精霊に感謝して使ってくださいね?ちなみにワタを入れるのは『人力』なので、それは覚えてください」


 僕がそう説明すると風っ子は『な!?人の願いって言った方が様になるのに!!』と念話を漏らしてしまいおっちょこちょいの風っ子に村人は笑っていた。


 ちなみにこの村は、主に林業と製材がメインで畑の面積は本当に少ない。


 その面積は、小規模家庭菜園程度だ。


 ならば自給率を上げて、生産を増やせば良い……だから僕は果樹の苗木やら野菜の苗を貰ったのだ。


 地道に品種を増やしていけば、農家としてもやって行ける。


 今のうちにその足掛かりをとばかりに、例の貰った物を渡す……


「あと、コレは全て森の精霊からの恵みです。糸の元のワタの種子にレモップルの苗木にチェレープの苗木です。あとは食用の野菜の苗ですね。村長は村に『果樹園』の場所と『畑』を用意してくださいね?コレらを植えて育てれば、森の精霊が祝福してくれるそうなので!」



「苗木だ!!それに食べれる野菜の苗だ!!」


「森の恵みだぁ!!」


「森精霊からの贈り物だぁ!!」


「「「うわぁぁぁぁぁ!!」」」



 森の恵みは大盛況で口々に喜びを語っている。


 子供は特に喜んでいる……問題はローリィの幼い時の様にスッパダマと呼ばれる状態で食べると、その果実を嫌いになりかねない。


 ローリィは皆が喜ぶ完熟レモップルでも、躊躇するするくらいになっている。


 僕は森っ子に『演説』をする様に促すと、周りは『そこに森の精霊が居る』と理解したようで一斉に注目をする。



『私は……森の中級精霊で御座います。この度ヒロ様の従者になりました。今後とも宜しくお願いします。其方の苗木はヒロ様が皆様の生活が豊かになる『食べられる植物はないか?』と新緑の騎士様に仰った際に頂いた物です。特別性の苗ですのでちゃんと毎日水をあげてくださいね?話しかけると育成が速くなりますので話しかけてあげて下さい」



 一斉に僕を見て目を剥き出す村民達……



「信じられません……新緑の騎士様から苗木を?」


「それもそうだが!森の中級精霊様を『従者』に?………従者って……従者だよな?」


「従者って従者だろ?あの従者だよな………俺が知っている従者であっているなら……」



「コレ!皆の者!礼が済んでおらんぞ!良いか?私に続いて復唱する様に!!」



 村長はそう言うと大きく息を吸い込んで大声で言う……



『新緑の騎士様!この度は格別な贈り物を有難う御座います!森の精霊様をお遣いくださり心から感謝いたします!!』


「「「新緑の騎士様!この度は格別な贈り物を有難う御座います!森の精霊様をお遣いくださり心から感謝いたします!!」」」



 かなり大きい声だった……村人もそれに負けじと大声を出した直後……




『ギシギシ!ザワザワ………ギシギシ!ザワザワ…………』



 返事をするかの様に周辺の森全部が同じように幹を揺らす……



「「「おおおおおおおおおお!!」」」



「新緑の騎士様だ!絶対今のは!!」


「この村で頑張ってよかった!!」


「貴方!あなたぁ!見てましたか?この村に精霊様達に『新緑の騎士様』までも参りました!あの副村長も痛い目に遭わせてくれる方まで神は遣わされました!!」


「ううぉぉぉううう………息子達!見てたか?ワシは……ワシは……お前達にこの光景を見せて………『親父!タダイマ………すまねぇ……兄貴は救えなかった!!あれ?ヒロさん?ヒロさんじゃないですか!!』……はへ?……ゼ……ゼロスか?………ゼロス!!うぉぉぉ………」



 突然暗がりから声をかけられた……腰砕け状態で村長は駆け出しその暗がりに走っていく。


 そこには鉱山で気を失い『危篤状態』と勘違いされた青年がいた。


「ヒロさん!鉱山で救ってくれたお礼を言いたくて、ずっとジェムズマインを探してたんですよ!ヒロさんは冒険者の人で一眼見ればわかる!って皆に言われたから……今日の朝までずっと街を歩いて探してたんですよ!」



「ああ!あの時の!気を失ってた!!」



「そうです!そうです!今日ギルドに行ったら『報奨金』と鉱山魔獣の『討伐部位』に『見舞金』まで貰いました!討伐部位をヒロさんに差し上げようとしたら、倒したのヒロさんだって言うじゃ無いですか!」



「そうそう!シャインさん助けた時に危なかったから魔法ぶっ放したら意外と上手く行ったからさ、皆で倒したんだよね!でも無事で何より……ところでなんで此処に?」



「なんでも何も!此処の村長の『次男』です!あ!すいません名前さえ名乗ってませんでした!ゼロスって言います!あの時は助けて頂き本当に有難うございました!」



「いやいや……たまたま危篤者優先で荷馬車に積んだんだ……運が良かったんだよ!運がいいと言うかわからないけど!もう一人は元気?」



「ああ!今家に向かってるはずですね……村長へ報告もあるのですぐ来ます!……あ……来た来た!」



「あ…………あなた?……ペ……ペドロさん?………生きてた!生きてたぁぁぁ…………わぁぁぁぁん!!」



 先程感動のセリフを言った奥さんでしたが、まさかの旦那生きてる説で大号泣だ。



「マドリーン?マドリーン!!今帰った!今帰った!!娘は?娘は?……」



「此処にいるわ!ネイト!ネイト!!パパが帰ってきたわよ!!ネイト!」



 家族3人で抱き合っているが、ゼロスは申し訳無さそうに割って入る。



「マドリーンさん、すいません……実は旦那さんの命の恩人が目に前にいて……再開は後ででいいですか?」



「ゼロス……まさか……ペドロさんの恩人てヒロ男爵様なの?」



「ヒロさんです………へ!?男爵様!?………あああ……すいません!僕その知らなくて!!まさか男爵様とは……『一見すると冒険者』って聞いたから……」



「ゼロスさん……それ言った人なんていう名前でした?」



「えっっと……赤い髪の女性で『エクシア・フレンジャー』と言ってました!あ!会えたら言ってくれって言う……伝言が………」



 まさかの情報主はエクシアさんだった……


 その上伝言とか………


 どこまで人使いが荒いのだろう………




「男爵様には……言い辛いな……えっと………『銀級冒険者講習サボるとは良い度胸だ……テカーリンのギルマスがカンカンだぞ?』です……」



「ああああああああああ!!!忘れてた!!今日と明日………講習会……………ヤベェ………まじで………ヤバイ!!」



 僕は完全に『領地視察』を予定していたので『銀級講習』を忘れていた……


 よくかんがえれば、ミオさんに『明日と明後日は講習会』と言われた気がする………



「ヤバイ?ヤバイで済むかぁ!!ヒロ男爵様?領地視察は素晴らしい事ですね?ですが冒険者ギルドとしましてはね?ちゃんと講習会を受けないと、万が一の事故の時困るんです!貴方は特にやからしますよね?コレはなんですか?」



 後ろから声がして現れたのは『テカーリン・街営ギルドマスター』だった。


 そして手に持っている手紙は『この村のギルドからテカーリン宛』に送られた『副村長の不正の証あり』の手紙だった。



「視察に行って不正を見つけて、村人を救う……誠に素晴らしいですが!『その自動で動く糸車』で『何』をするつもりですか?」



 僕は必死に隠そうとする……隠すのは糸車では無く『森の精霊と風の精霊だ』



『ゴォォォォォォォォーーーーー』



 突風で暗闇の中に飛ばされるテカーリン……



『アイツ邪魔!ヒロの知り合いでしょう?皆が怖がって見に来なくなる!!風の中級精霊様がわざわざ高速回転糸車をやっているって言いうのに!』



「ヒロ!何が起きた!?何故俺は飛ばされた?…………か!風の精霊様?………ミオ!イーザ!模写だ!今すぐ模写をするんだ!」



 後ろから疲れた顔で来たのは『ミオとイーザ』だった。


 どうやら馬車では無く何故か徒歩で来た様だ。



「ギルマス!ちょっと……休ませてください!ミオはもう!お腹と背中がくっつきそうです!!」



「私も今日はミオさんに賛成です……もう歩けませんし筆も持てません!!手に力が……」



 僕はミオとイーザに水を飲ませた後夕食を勧める。


 二人は朝しか食べてなかった様で、がっついて食べていた。

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