第473話「困惑……やっぱり妖精は悪戯好きらしい!」


「良いですか!皆さん!ちゃんと並ぶ様に!!コラそこ!横入りしない!」



 ルモーラの声が妖精の里に響き渡る……



 ちなみに僕は今、せっせと『ミニチュアカップ』を必死につくっている。


 現時点でつくった数は『25個』僕の前には10匹程のフェアリーが待っている……



「有難うございまーす!!ココア!ココア!」



 目の前のフェアリーの言葉の通り……ルモーラがやらかした。



 彼女が人間を連れてきて、周りは騒然だったが『ココア入りの木製深皿』を次元収納から取り出したルモーラのお陰で、意識は彼らにとってはじめての『暖かい甘い飲み物』である其方へ完全に持っていかれた。



 暖かいココアを一口飲んだフェアリーは驚き声をあげた……そこから直ぐにフェアリー達は一口飲もうと行列を作った。


 珍しい物好きなフェアリーには良い刺激の様だ。



 そしてミニチュアカップは『僕に貰った』……と言ったルモーラの言葉で僕に『同じカップをくれ』と詰め寄ってきたのだ。



 僕は『腐ってない倒木があるか?』を聞くと皆で案内してくれたので、そこから工作時間になった。


 カップは小さいので、加工にはさほど時間はかからないが何せ個数が多い……妖精の集落全員分だからだ。



「すまないねぇ?こんな年老いた妖精の分まで……このカップは大切に使うよ!それでこの妖精の里になんの用があったんだい?」



「村長ー!『ワタガシ草』を見たいそうでさ連れて来たの!教えてあげてー私今忙しいのぉー!!」



「………ルモーラは仕方の無い子だね……全く……じゃあ代わりに案内しようかね?」



「すいませんそれもあるんですが……『森の賢人』と会って話がしたいと言う事だったんですが……」



「ほぉ……あのルモーラの馬鹿は……すまないねぇ。あの子は直ぐに他所に気を取られてしまう所があってね……じゃあワタガシ草の群生地を通って賢人の場所に行こうかね?どうせ通り道だしね」



 僕はフェアリーの村長と一緒に森の賢人が住む場所へ向かう。


 途中一面に綿花が咲き乱れる場所を発見して、空腹のあまりガムシャラに走り齧り付いた時の記憶を思い出したローリィとエイミィの、苦い思い出の記憶を聞きながらワタガシ草の群生地に寄って行く。


 僕はその中の繊維のワタを何個か摘みコヨリを作って説明をする。



「このワタは繊維です。コレをこよって糸状にするんです。それを編み込んで衣服にするんです」



「てっきり洋服は魔物の糸で作るとばかり思ってたわ……凄いのね……異世界人の知識は?尊敬するわ!」



 僕はフェアリーの村長に何故此処にこんなに自生するのか聞くと、森の賢人が昔に植えた物でそれからは自然にこうなると教えてくれた。


 僕は『綿花の種子』を分けて貰えないか聞くと、勝手に生えている物だから許可など要らないと言われた。


 僕とローリィとエイミィは3人で必死にワタと種子を集めてマジックバッグに放り込む。



「コレ意外と重労働ね?ローリィ……ペースが落ちてるよ?」


「腰が……辛いわ!コレを異世界人は集めるのよね?尊敬ものだわ!エイミィ!!」



「ワタの繊維には色があるんですよ、白い花からは白のワタ、茶色のワタからは茶色が取れるんです。緑もあるとか聞いたことがあります」



「エイミィヒロさん、あっちには赤いワタがあるわよ?」


「ローリィとヒロさん、こっちには青いワタがあるし……向こうにには紫色があるよ?」



 そう話しているとルモーラがすっ飛んでくる……



「お手伝いするよ!村の皆で!!だからさ……ココアとチョコレート!!頂戴?」



 ルモーラの後ろには、フェアリーの村民総勢45匹が羽ばたいている。



「じゃあ申し訳ないけどお願いできますか?『森の賢人』と話がしたいし……お願いできるなら助かります!でもそんなに数がないんですが?」



「大丈夫よ?一つが結構大きいから!一個でも5人は食べれるし!!」



 言われて気がついたが、体が小さいフェアリーだ。


 飴で大きいのだチョコだって同じだった!!………つい人間目線になってしまう。



「すごいね?ヒロさんって人だけ使うわけじゃなく、妖精でも手懐けるんだもん……そう思わない?エイミィ?」


「ローリィ?かくいう私達もヒロさんのおかげでエクシア姉さんと知り合ったからね?」



 エイミィとローリィは笑っている。


 ルモーラの指示で分担してフェアリーが各色のワタと種子を回収する。



 僕は業務用チョコレートを一袋クロークから出すと、それに気がついたが周りは仕事そっちのけで集まってくる。



「うーん……一人2個位になっちゃうかな?100個入りだから……」



「そ………それ異世界のお菓子だったの?」



「それを私達いっぱい食べちゃったの!?」



「罠が外せれば異世界箱がまだクロークに入ってるんですけどね?もしかしたらチョコレートとか飴とか入ってるかもですが……箱ランクが『S+』で『異世界からの祝福』の宝箱なので鍵師さんにお願いできないんですよ」



「宝箱の罠ですかの?ならばワシがコップのお礼の差し上げられる物が在りますぞ?『祝福された妖精の鍵』と言いましてな……鍵がかかった物を『何でも』開けられる物でしてな?」



「そ!そんな物……コップのお礼なんて……絶対釣り合わないですよ!!」




「いやいや!コレは妖精種なら10年も生きれば殆ど作ることが出来る『マジックアイテム』なのですよ、元々妖精種は悪戯が好きでしてな?鍵がかかった家や箱へ忍び込み、悪戯するために作った物ですじゃ……花の蜜と魔力を固めて作るので、素材なんかしれているのですよ!」



「って事は消耗品ですかね?それであれば……使ったら壊れるとか?」



「今まで680年生きておりますが『折れた事は一度も無い』ですぞ?ルモーラ!この間罠抜けの鍵を作ったと言っていたよな?この『祝福された妖精の鍵』に罠抜けを後付けしてやりなさい!」



「村長!!やっぱり役に立ったじゃ無い?やっぱりわたし天才!!」



 ルモーラは村長に杖で叩かれながらも作業をする。



「出来たよ!村長!」



 僕はそれを鑑定する。



「コレは珍しい!『鑑定スキル』持ちですか……久々にその感覚を味わいました……でもその様子だと『知らない』様ですな?お気を付けなさい!その鑑定スキルを『知っている存在』であれば、誰が『鑑定した』か……探す者も居ますからな?」



 ビックリした……


 鑑定の存在を村長に話していないが、村長の持つ『祝福された妖精の鍵』を確認した瞬間……明確に言い当てられた。



「鑑定が『わかる』ってどういう事ですか?」



「鑑定をする場合、基本は『魔法』なのですがな……それは魔法に詳しい種族だったら魔力の揺らぎで分かるのです。しかしスキルの場合は『対象に使う時』相手の防御壁へ干渉するのですよ」



「相手の防御壁??」



 僕は思わず質問を重ねていた。



「防御壁は学ばないと説明しても理解はできません。誰ぞに魔法の師事を受け学んだ方がいいですぞ?人と妖精は異なりますからな!」



 親切な妖精村の村長は、噛み砕いて説明をしてくれた。


 しかし『重要なのはそこでは無い』とばかりに説明を続ける。



「ちなみに『鑑定』だと防御壁干渉が特殊な感じです……対象が『持ち物であれステータス』であれ、貴方が使ったそれが『鑑定スキル』だと分かってしまうのですよ……なので『鑑定スキルを知っている者』には注意ですぞ!」


 ちなみに魔法の鍵はこんな物だった……


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


    『悪戯ルモーラの罠壊しの妖精鍵』


  「マジックアイテム・鍵 レア度・⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎」


 フェアリーの村長が製作した祝福鍵に、ルモーラの

『罠壊し』を付けた特別品。


 ルモーラは『罠を外している』と勘違いしているが、

実際は『罠を破壊』している。


 効果 「罠を破壊し、鍵を開ける」


 制限 「箱指定なし・罠指定なし」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ルモーラは罠を外していると勘違いしている様だ……まぁ僕にして見れば、罠外しでも罠壊しでもでちらでも良い。

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