第474話「異世界宝箱の仕組みと其れに関わる者」
僕はクロークから『異世界からの祝福』S箱を取り出す。
罠はアラームと猛毒矢と爆弾なので、安全を考えて全員を一度遠ざける。
「開けまーす!」
簡単にそう説明して鍵を入れて回すと『ガチンガチン…カチン……ガチャリ』と音がする……開いた様だ。
大きく息を吸い、腹を括り一気に箱を開ける。
『ギ………ギギギギ…………』
開けた後安全を確認するために覗き込むと……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
業務用ココアクッキー(1kg) 5袋
業務用バタークッキー(1kg) 5袋
業務用チョコブラウニー(1kg) 5袋
業務用バナナチップ(1kg) 5袋
高級歯ブラシ(100本/ケース入り)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
どれもバイト先の倉庫で取り扱っていた『時期物商材』だった……
僕はあることに気がつく……
『倉庫の時期限定商材?……僕の……アルバイト先の?前からあれこれ紛失騒ぎがあったけど!!………どれも無くなったと騒いでいた物だ!!まさか!!!』
一つを手に取って調べる……
『やっぱり……見覚えがある!!過去から此処に来た!?商材品が?それも僕が知らない物もあるって事は……まさか?『各地の倉庫』からか?』
賞味期限が既に過ぎているのか、巻き戻っているのかも分からない。
鑑定スキルで鑑定すると……『消費期限(無限)』
「消費期限が無限!?……無限ってなんだよ!!腐らないし傷まないし………って事か??どいつだ!こんな事して楽しいか!見ているんだろう!どっかで笑ってるんだろう!?出てこい!!」
僕の豹変した姿にローリィとエイミィ、村長にルモーラが急いで飛んでくる。
「どうしたの!?ヒロさん?」
「何があったの!?誰が見てるの?まさか!ダークフェアリー!?」
「どうなされ…………うほぉぉぉぉぉ!!美味しそうじゃぁぁぁ!!」
「ヒロー!大丈夫?わたし鍵失敗した!?怪我は………な……わっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!コレ食べさせてくださいーーー!!」
怒りに震えたが、フェアリー村長とルモーラの気が抜けるセリフで我に帰った僕は……
「参ったです……コレ僕が異世界でアルバイトしていた場所の『一部が無くなった商材荷物』だったんですよ……まさか異世界に来てたなんて……」
エイミィにローリィ、妖精の村長とルモーラに事情を説明すると皆が『異世界に呼んですいません……』と謝っていた。
「違います!コレは貴方たちは無関係でしょ……それに此れらの事情を知る方法を探せば、自ずと『犯人』も分かるし……折角だから皆さん気分転換の休憩にしましょう!」
僕はバタークッキーを箱から取り出して、気分転換の休憩にしようと持ちかけ、料理用の木製大皿を取り出してバタークッキーを開けて山盛りにする。
この状態で『森の賢人』と会って話をしても、碌なことにならないと感じたからだ。
「あれは蟻の巣で回収した箱なんですけど、開けられないし人目に見せられないからクロークで不良在庫になったんですけど……まさかなぁ……異世界に来る前のあの時から既に異世界と関わりがあったなんて……」
「でもだよ?……それのお陰で私達は異世界の味が知れたんだよ!感謝だよー!……あ!ごめん!」
ルモーラの発言で『異世界でも元の世界の物が味わえるのは、この箱のお陰だ……』と逆転の発想に至ることができた。
「ルモーラ!!そうだね……悪い方に考えるか良い方に考えるかは自分次第なのかも知れない!コレがあるおかげで怒りもしたけど、今こうして食べれるのは他でも無くこの箱のおかげだよね……凄いな!ルモーラは!そんな小さいのに!」
「うぉい!小さいは余計だ!妖精平均身長はあるんだぞ!喧嘩売ってるのか………スクリューパンチーー!!」
ルモーラは『スクリューパンチー』と言って僕に飛びかかるが、その刹那僕の姿が消える……
そしてルモーラは僕の後ろにあったバタークッキーの皿に見事に突っ込んでいく。
「ルモーラ!!あたしたちに喧嘩売ってるの?買うよ!」
「折角のバタークッキーを割るな!!」
「ルモーラ!暇ならワタの回収をして来いよ!既にたくさん食べてるじゃ無いか!自分だけいっぱい食べて!」
「「「そうだそうだ!!」」」
仲間の皿に突撃してしまったルモーラは悲惨なことになっている。
「ヒロさん……それってスキル?」
「なんか……消えたよね?」
「ああ!コレね『デス・アサシン』の固有スキルで『瞬歩』って言うんだ。大きく跳躍してから周辺の木の枝を幾つか蹴って今そこの木に飛んでたんだ……ルモーラが皿に突っ込んだのが見えたから戻ってきたんだよね」
僕がその木を指さすと、少し離れていた所にあった木が僕の僅か後ろに来ていた………
大きな樹木だが、根が剥き出しになりその根を上手く使い歩いていた……
「我を足蹴にするとは……人族は礼儀がなっていないな?何故ここで妖精と戯れているのだ?全く……久々に見かけたからマシになっているかと思ったのだがな……」
「コレはコレは!賢人様!今参ろうと思っていたところですよ……人族が聞きたい事があると………」
僕はやらかした………ルモーラを避ける為に足場にした樹木はまさかの『賢人様』だった……
賢人様は古木種『トレント』だった………よく考えれば分かった筈だ……と後悔しかない。
「その黒い液体はなんだ?謝罪代わりに我にも馳走してくれんかな?『ノグチ・ヒロシ』と言う名の少年よ?」
古木種のトレントが僕の名を言う前に『耳がキーンとして酷い頭痛』状態に陥る僕………
「ファッファッファ!!それが『鑑定をされる』と言う事じゃ覚えておくが良い!身をもって感じれば『忘れぬ』だろう?」
忘れ様のない『不快感』を覚える……しかし、敵にされるのとそうで無いのではかなり違う。
この状況を知らない僕が、戦闘中に鑑定を相手にされれば『パニック』は間違いなかっただろう……
そして下手すれば、その状況から『鑑定持ち』と知れるかもしれない。
時間にすれば1、2秒と言った感じだろうか……
僕はコップに1杯のココアを入れて『冷たくしたほうがいいですか?』と聴くと……
「暖かくて構わんぞ?脚にかけてくれるかな?モンブランと同じで良い……」
非常に驚いた……
賢人は流石に名前の通りなんでも知っているんだな……と思って、どこで出会ったのか聞いてみることにした。
「モンブランを知っているんですか?」
「お主がここで妖精とワタガシ草の種子を集めている間に、聖樹モンブランが我の元に遊びにきたぞ?」
ビックリした……それを聞いた僕は周りを見渡すと……
モンブランは姿を出して、ちゃっかり妖精の別グループに混ざって話していた。
僕は『大したお構いが出来ませんが……』と言いつつ、バタークッキーを取りトレントに渡すと口に運びバリバリと食べ始める……
「ほぉ!コレは異世界大地の味がするな!大変美味だ!」
僕は数枚纏め手渡すと、いっぺんにバリバリと食べるトレント……
「ファッファッファ!ワシに『味覚が有るのか?』と言う顔だな?我々樹木人はな、大地の齎す味のみ『味わう事』ができるのだよ。なら液体は飲まんのか?と言う顔だが、水分は根の方が効率的に吸収出来るからな!より確実に我が力に換えることが出来るのだよ」
あまりにも明確なので、心を若干読まれて居るのか不安になる……
しかし、事が明確なのは僕の手助けになることもある。
「聴きたいのは『ダンジョンコアの意識核』と『召喚魔法の悪事転用』のことだろう?異世界大地の味の礼に教えてやろう……召喚魔法の悪事転用はフェアリー種だけでは100%無理だ……だからコアと同一化した結果だな……当然だが1匹のフェアリーでは選んで連れてくるのは無理だ……」
森の賢人トレントの話では、こっちの世界から異世界召喚をした場合はゲートを開けて誘い込む他はないらしい。
要はカナミとアーチがされた方法だが、その上で飛ばすのに膨大な魔力が必要になるそうだ………
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