第442話「避けられない戦闘とそれぞれの覚悟」


「ひとまずは可能性の一つとしてダンジョン主の部屋を見て、そのあと階層を隈なく探そうかね?」


 僕達はエクシアの先導でダンジョンのヌシの部屋に向かう。



 向かう途中に避けられない部屋が3つもあった……



「ヒロ男爵よ!此処は我々ハラグロ騎士団が引き受けよう!我々が先に入る戦闘中にはなるが、戦闘せずに駆け抜けるが良い!!」


 そう言ったのはハラグロ男爵だった。


 騎士団を指揮して目の前の一部屋目の攻略を買って出てくれた。



「ヒロ様!このイクスーバ、騎士団の戦いか確か知りませぬ!ヒロ様の恩に報いる為にもハラグロ男爵様が宜しければ、私もこの戦場を引き受けとうございます!」



 そう言ってイクスーバは、ハラグロ男爵に向き直り参戦の許可を貰い、ハラグロ騎士団と共に部屋に入っていく。



「ではヒロ男爵よ、我が入ったあと10数えて入ったら部屋を駆け抜けて出口に向かうのだ!良いな?今は我々よりあのホブゴブリンを優先するのだ」



 僕達はハラグロ男爵が部屋に入ったあと、10数えたロズを先頭に部屋に入っていく。



 中は既に戦闘中で多くの魔物が群れていた……ちなみに魔物は『オーク』と『オークウォーリアー』だ。


 魔物が多い理由は簡単で、騎士団に剣士隊それに弩隊……これで既に3グループだ。


 そこに僕達が突入するのだ……どんどん魔物が湧き出るが、騎士団は一歩も引く事なく戦っている。



「前進せよ、ヒロ男爵よ!此処は我々に任せよ。我々は決して敗れることはない!我が騎士団は最強なり!」




「ハラグロ男爵様!すいません!此処は頼みます!」



 『ウォーターバレット!』


 『ウォータージャベリン!』



 通り抜けざまに敵に被害を与えつつ走り抜けて、出口付近で振り返る。



『クワンダ・エストルァテス・ラ・ローボア……アクアパイソン』



「アクアパイソンに命じる!魔物を喰い散らかせ!此処にいる我が友を守れ!!」



「シャァァァァ!!シャァァァァ!」



 アクアパイソンは命令に従い、凄い勢いでオークの群れを次々に丸呑みにしていく……


 僕は『アクアパイソン』を召喚して部屋に残していく……



「ハラグロ男爵様!護衛を1匹置いていきます。魔物を喰い散らかす様に指示しておきました!必ずご無事で!!」



「この状況で怪我をしろと言うのは無理だぞ?ヒロ男爵殿!先を急ぎ早くいくがよい!!」



 僕が外に出るとエクシア達が待っていた。



「大丈夫かい?まさか残るとか言い出さないか心配したよ……」



「エクシアさんすいません……アクアパイソンを召喚して置いてきたので遅くなりました」



「マジですかい?ヒロ兄!もはやこの部屋で敵なんかいねぇじゃねぇですか!まぁ……何となく分かってましたがね!!」



 エクシアが心配していたので、僕は中の状況を説明しておくと今度はロズがびっくりしていた。



「エルフの旦那達も揃ってますね?では良いですかい?先に行きますぜ?」



「ロズ殿ちょっと待たれよ……あと2部屋続くのだろう?ならば其方達と友好関係を築いた我々エルフ族が受け持つぞ!我々が戦っている間に駆け抜けるが良い!」



 そう言ってからロズに案内をさせるエルフ一行。



「すまないねぇ……貧乏くじ引かせちまって!エルフレアとエルデリアそれにエルオリアス……助かるよ!『死ぬな』よ?」



「この程度のオーク達に負ける我々ではありません!」



 エクシアとエルフレアが女性同士励まし合っていた。



「エルデリアさん!エルフ専用武器の『炎の弓』です。これであれば『矢』がなくてもMPで撃てますから!使ってください!だから絶対死なないで、後で返してください!!」



「何と!この武器は………エルフ族専用武器ではないか!!ヒロ殿にこんな武器を借りたら返さねばならんな!皆の者……死ねなくなったぞ!?恩を沢山売って、いずれこの武器をエルフ族のマジックウエポンと交換してもらう日までな!ハハハハハ!!」



 僕は大地のエルフ族のエルデリアに弓を貸す。


 理由は既に矢筒にはもう矢がないからだ……今の部屋で騎士団を助ける為に撃ち尽くしたのは、聞かずとも分かる。



 ロズの案内で次の部屋に到着すると、エルフ族は全員で一斉に入っていく……



「じゃあ行きますぜ?出たらその場で待機でお願いしますぜ?直ぐに部屋が見えるから突っ込んじゃダメですよ……特にヒロ兄!!」




 中に入ると『オークとゴブリン』の混成部隊が3部隊既に湧き出してエルフと戦闘になっていた、



「エルフレア!オルオリアス!ヒロ達が入ってきた。魔物が湧くぞいいか、魔物を誘導して向こうへ魔物を向かわせるな!」



 エルデリアが2人に状況説明をすると、『炎の弓』を凄い速さで扱いゴブリンを丸焼きにしていく。



「任せときな!接近戦でこの私達から抜け出せる小鬼など見たこともないけどね!」



 指示を受けたエルフレアは両手に剣を持ち、左手で相手の足を斬りつけた後に、右手の剣で上体が崩れ下がった首筋を斬り払う。



「我々月のエルフに背を向けて、生きている魔物も聞いたことがないぞ?そんなチャンス見逃さないわけが無い!」



 僕達が駆け抜けていく間に、ターゲット変更をしたゴブリンやホブゴブリンをエルオリアスは見逃さない。


 ゴブリン達が見せた隙だらけの背中に剣を突き刺し、体躯の良いホブゴブリンは首筋を斬り払いながら駆け抜ける。



『ヴァン………ヴァヴァン………ヴァン……』



 一気に部屋に入った事で、時間差にはなるもののどんどんと召喚魔法陣が浮かび出る。



 エクシアグループに僕達が続き、ギルド職員が入りそれを護衛する輝きの旋風そして、銅級冒険者グループのスノウベアーとアイアンタンクにレッドアイズが続き、全部で6パーティーも入場した。



 結果6個もの魔法陣が、新たに魔物を生み出させる。



「アンタ達!死ぬんじゃ無いよ!」


「エクシア!街に帰ったら美味い酒を飲もう!この戦いを肴に!!だから早く行きな!」



 エルフのエルフレアとエクシアは、女性同士と言う事もあり意気投合することが多かった。


「ヒロ!悪いんだけどさ……召喚魔法お願いできるかい?」



 珍しい事にエクシアからの依頼が来る……エルフレアはそれだけ大切な友人になった様だ。



「はい!そのつもりです!」


「銅級達は邪魔だ外に出な!銀級全員でヒロの護衛を!ヒロは召喚……でっかいの頼むよ!!」



『クワンダ・エストルァテス・ラ・ローボア……アクアパイソン』



 巨大な召喚陣が浮かぶと、中から全長4メートル程の巨大な蛇が出る。


 天井が低い分それが最大サイズの様だ。



 エクシアの指示で銅級冒険者は全員が外に出るが、代わりにアクアパイソンはスルスルとホブゴブリンに近づき長い舌を絡ませて丸呑みにしていく。


 新しく出てくるゴブリンもホブゴブリンも、このアクアパイソンにとっては『貴重な餌場』に早変わりした様だ。




「ヒロ殿助かります!エクシア、酒は確実だな!?アンタが奢ってくれるんだろうね?代わりにエルフ郷に来たら、私が絶品なエルフ酒をご馳走してやるよ!」



「仕方ないね!奢ってやるよ幾らでもね?ホラ行くよ、アンタ達!」



「エクシア殿!我々大地のエルフの都にも来てくださいよ?こっちにも太陽エルフとは違う絶品な酒がありますからな!」



「エルフレアにエルデリア!!まだ敵がいる!気を抜きすぎだぞ!」



「「エルオリアスは相変わらず硬いな!?」」



 エルフ一行の戦闘はかなり楽になった様で、会話のゆとりも出ていた。



 僕達全員が部屋を出ると、わずかな距離ですぐに魔物の部屋が見える……今度の部屋は今までの部屋とは違い、かなり大きい様で部屋の入り口から反対側が見通せなかった………

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