第415話「執事マークラ感謝の証」
僕はマッタリ夫人にヤクタ領での時の話を聞く。
「基本的に主人が滅茶苦茶な事をするので、それの尻拭いで執事のマークラが上手く財務を行なっていました。私もできる限り領民の債務が増えない様に食糧生産を軸に心がけていました」
そしてマークラが僕に現状を伝える。
「ヒロ男爵様……発言を失礼させて頂きます。この領内は年々魔の森の侵食が酷くなっています。ですので魔の森の開拓は素晴らしい案で御座います。魔の森の繁茂するスピードは尋常ではありません……根を伸ばし土を掘り起こし、そこへ種を撒き新しい草木が芽吹きます……」
マークラ曰く普通では考えられない様なスピードで、森が大きくなっている様だ……まるで某アニメの腐海の様だ……
「蝕樹ですね………正常な大地を侵蝕して植樹すると言う意味で言いましたが……」
「まさにそうですね……まさに蝕樹です……もしお手伝いできる事があれば仰ってください。できる事は協力致します……我が主人の願いを聞き入れて頂いたお礼をさせて下さい……奥様達のためにも、決して裏切る様な真似はしませんので!!」
マークラの言葉で『ぺこりぺこり』と頭を下げる一家は、本当に感謝している様だ。
「ではお宅の屋敷にある、領内の書類関係をまとめて頂いて良いですか?足を踏み入れて荒らすイメージがあって如何にもやりずらいので……」
「何を仰いますか!そもそもあの屋敷は、王命でヒロ男爵様に与えられたのです気兼ねなど……執務室を含め全てをご自由にお使い下さい」
夫人がそう言うが『はい!そうですか?』とは、気持ち的に行かないのが……日本人だ!
しかし夫人も自分の我儘を聞いて貰い、何もせずではいられないのもよく分かる……
「確かに僕自身も領内の運営について、色々と聞きたいので今までの事を教えて下さい……細かい事はおいおいで……領内の村を巡らないと正直何も分かりませんし、村が幾つあって何が特産とかも知らないですからね……」
僕がそう話すと、ヤクタ夫人が執事のマークラに……
「では、こうしましょう!マークラ情報をまとめて置きなさい。ヒロ様が分かりやすい様に村の場所と名前それに人口。あとは……各村ごとの特産や生産物。近辺の魔物に至るまで纏めておくのです」
「なんかすいません……そうして貰えると助かります!!」
こうやって謝るのは、日本人の特徴らしい……テレビで見た時は『そうかな?』と思っていたが、割と謝っているのは勝手に口から出てくる訳では無い。
相手と出来るだけ仲良くしたいと言う気持ちの現れだ……いがみ合っても、それで得られるものは『悪意や殺意』だろう。
それだったら、謝っても仲良くした方が、おいおい自分の為になる。
結局色々話して決まったのは、村の名前と場所に村ごとの人口に『冬期間』の各村の農産物。
そして、これから『冬』になるので毎年の凍死者数や、現在備蓄している村ごとの食料。
各村で越冬に必要な穀物総量、そしてそもそも冬は皆何を食べるのか……あと冬季の生産品。
冬に見かける事故、魔物の被害状況、騎士団の最低必要人数など。
そしてそれ以外の、必要な事をまとめて貰うことにした。
領内の全収益については?と聞かれたが、纏められる余裕があったらと言っておいた。
ひとまずは村人の冬越し情報を優先で……と言っておく。
ゴーレムを配備するための『魔導士』の数も付け足して置いた……できれば各村に対置したいものだ……それは各村に存在する魔導士に比例するので絶対とは言い辛いが……
そんな話をしていると、ミーニー学長が消えて行く召喚魔獣を見て……
「ヒロ男爵様……今日はもう召喚魔法を行わないのですか?生徒達も見てますのでよければ……もう一回くらい……」
そんな風に言ってきた……しかし僕は生憎予定がある
「すいません……これから『冒険者ギルド』へ向かうので流石に時間の関係で半刻は意外と長いんです……」
僕は集まっていた生徒達に、
「ちゃんと先生の授業を受けないとダメだぞ?水魔法だけでは対処出来ない場合も沢山あるからね?僕だって水の他に氷を使ったりするんだから。ちゃんと講師に教わりなさいね?」
と言うと、元気に元に場所に戻っていく。
周りの生徒も首がこっちに向いていたので、授業どころでは無くなっていたので『すいません…此処しか召喚できなくて…』と謝っておく……今後顔を合わせる事が多くなるかもしれないからだ。
錬金の書を返しに来る時には、誰かしらに会うのは間違いない……
僕は当初の目的『マジックアイテムの返却』を終わらせて冒険者ギルドへ向かう。
何故かストレイ伯爵一家も僕達と一緒にくっついて移動するが……暇なのだろうか?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「エクシアさん、やどのし亭主とザムド伯爵に話を聞いたんですけど……」
「おせぇぇぇぇ!何してたんだよぉ〜なかなか来ないから3杯もエール多く飲んだぞぉ」
僕が話を終える前にエクシアが言葉を遮って絡んで来た……どうやら景気良く飲んだ所を見ると、凄くご機嫌のようだ。
しかし周りから見てば、怒られている様に見えるので、ストレイ伯爵が『仲裁に入った方がいい』と誤解をして話し始める……
「申し訳ない!我が義理の息子のせいでヒロ男爵に迷惑をかけたのだ。魔導士学院で色々と積もる話があってな……エクシアと言ったな待たせて申し訳ない。待たせた間に飲んだ酒代は私が持とう!」
そう言ってお金を払おうとするストレイ伯爵に対して、エクシアが……
「何言ってんのさ?コイツが面倒ごとを抱え込むのは『趣味』だぞ?ってかアンタ誰さ?」
エクシアの言葉に対して、怒りを覚えたノンレム令嬢が……
「約束をしていたのは理解出来ますが、言葉選びが失礼でございましょう!この方は『ヒロ男爵様』でございますよ?貴族なのですからもっと敬うべきでは無いですか?そもそも冒険者がヒロ様を呼び出すなんて不敬でしょう!貴女こそ何者なんですか!!」
「ちょ……ノンレムさん、大丈夫ですエクシアさんは元からこう言う感じの……」
「いいえ!大恩あるヒロ様に、この物言いは流石に……私自身は、大きな声で自分の名前を出せる資格は既に有りませんが、それでも言わせて頂きます!」
そういうとエクシアに向き直り……
「この方は心から尊敬出来る男爵様です!!多少待ったからとて、そこまで怒るのは不敬極まり無いと思いませんか!」
「あ?なんだ……?またヒロは良くわかんない娘を味方に付けたな?アタシが誰かって?……そこのヒロの所属しているS+プラチナギルド、ファイアフォックスのギルドマスターのエクシア・フレンジャー様だよ!ギルマスがギルメン呼び出して何が悪い?」
エクシアはニタニタしながら『ノンレム嬢を見て』更に追い込む……
「あとな?これからの予定を話すに決まってんだろう?コイツがウッカリと、ヤクタの馬鹿が齧り尽くした領地なんか王から貰っちまったからさ!ノリで立て直せなんて言われてさ……流石にあそこは大変だろう?」
「へ!?すみませんでしたーーーーーーーー!!」
「見た感じ……お前さんがヒロ男爵様とやらを『心底お気に入り』なのはいいけど……私ことギルマスは特別で絶対なんだぜ?『誰に取り入る』のか覚えときな?私は『エクシア姉さん』だ!いいな?」
「ハイ!!エクシアお姉様!」
当然ファイアフォックスのギルド名は知っている……大迷惑をかけたギルドだ知らないはずがない………
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