第388話「無念の最後を遂げた村人に変わって物申す!」


「状況は何となく理解できましたが、ハッキリ言っておきます!貴方方が手を取り合わなければ、この『王国』は終わります。ダンジョンは最低3個『王都の地下』『王家の管轄のダンジョン』『新たに発見された蟻の巣』この3つが『スタンピード』起こさぬ様に最低限は管理する必要があります!」



 王権派は身を乗り出し聞くが、それ以外は全く関心を持っていない。


 当然そんな彼等にはお仕置きの策がある。



「この『スタンピード』が阻止できない様で有れば王国は滅びます。よって『作戦参加意思がない貴族』は爵位を剥奪し、この王国の行く末を共に歩む志がある者を起用なさってください。既に今日一度『滅びかけた』事をお忘れなき様!」



 そう言った後、王様に向き直り……



「此処は席を見る限り、12貴族が座れる様になっていますよね?なのにも関わらず、その貴族達が『王都』を守らぬので有ればその特殊権限のある席は『返して貰う』のは国王としてあたり前でしょう?国王は『国民』を守る為に何かをするべきなのに『無能な貴族』を守る必要が何処にありますか?国民あっての王国でしょう!」



「ヒロ男爵の言い分はもっともだな……協力して王都を守れぬ12貴族など既に貴族でも何でもない……民の血税を啜っておきながら護らぬでは話が違うからな!」



 王権派と思われる少数の貴族が周りの貴族を睨む……しかし劣勢とは思えない態度だ。


 当然、王様虐めをしていた反王権派とすれば、この状況を思うがままにする手段があるのだろう……



「ではこの場で是非を問いましょう!!陛下の推奨する『無謀にもダンジョンを攻略するべきか?』それとも我々の考えた『ゴーレムで防衛にのみ力を割くべきか!』皆様方判断の札を!」


 どうやら籠城策で、自分達ではなく周りの貴族を利用する気だった様だ……特に僕を。



 余りの馬鹿さ加減に呆れ果てたが、見当違いも甚だしいので僕が口を挟む。



「ゴーレムに街を守って貰っうって言っても『指示出来るのは僕だけ』なので無理ですよ?『僕は陛下の案に賛成』なのではなく、『陛下が僕の案に賛成なんです』……本当に『馬鹿』なんですね?貴方達?陛下!本当に!!全員入りません。この馬鹿貴族共……」


 そう言って僕は、頭のそばでくるくるパーとやっておちょくってみせる……


 そして彼等に対し『頭がとても可哀想な子を説得するように』説明する。


「たった8体のゴーレムで、王国をいつ迄も守れる筈ないでしょう?中には既にスタンピード第三波が来ていたのを、必死な思いをして冒険者の皆で倒したんですよ?」



 彼等は揃いも揃って大馬鹿だ……冒険者に任せて外で待っていたせいで中の状況は掴めていない。


 その中の状況も聞かずに勝手に判断をして、その上で起動制限のある『ゴーレム』に頼ろうだなんて……



「本当にあんた達は無能で笑えます……仕方ないので説明しますね?まず第一波の時は、出来る限り範囲魔法で殲滅し、その後多くの冒険者が協力して堰き止めました。第二波も同様にしましたが、すぐにMP切れで闘えなくなるのが分かったので『ゴーレムを作った』んです。そして第三波が押し寄せる前にダンジョン入り口を塞ごうと突入したんです!」



 僕が呆れ顔で説明すると、怒り浸透な顔つきでなにかを言おうとするが、僕はまだ話しているので主導権は譲らない。



「因みに『外へ』出てきたのはアリだけでしたが、リザードマンやゴーストも中にいました。それだけではなくギガント・ミノタウロスまで居たんです、ならば通常種のミノタウロスも居てもおかしくないですよね?それらが山ほどの出口から出てきたら、どうやって防衛するので?それに!そもそも『僕は死んでも』貴方達無能な役立たずの言う事など聞きませんよ?」



「ならば拷問でも何でもして言う事を聞かせるまでだ!!男爵と言っても役に立たぬ者は貴族としてなど要らん!!」



「拷問で?ならば是非やりましょう!アラーネアにも思いっきり暴れてもらおうじゃないですか?あなた方の領内の屋敷でね!!どうせ叩き潰すなら禍根なく皆等しく叩き潰しましょう!そもそもあんた達がこの王都から居なくなれば解決策の話し合いも簡単なんですよ!願ったり叶ったりです!」



 そう言って手のひらに魔力を集中させて、机の上にある水の入ったコップ全てを凍らせていく……当然アイスの魔法だ。



「貴方達全員、すぐに騎士と兵士を用意しておいてください!どれだけ居ても朝まで持ちませんでしょうけど?……アーク伯爵の騎士達と私兵よりは数倍は集めておいてくださいね!面倒だから貴方達が大好きな『王都のゴーレム』で屋敷ごと叩き壊すんで!」



 アーク伯爵の事件を出した瞬間、彼等は思い出した様だ……あの光景を。


 反王権派と思われていた数名は、反抗の意思がない素振りを見せる。



「意味わかりました?今は男爵の『爵位』に縛られているから好き勝手できないけど、遣り合うなら当然……喧嘩は買いますよ?既にあんた達みたいな貴族のやり口で、苦しんで死んだ冒険者や村人がいるんです。育った村さえ失いさぞかし無念だったんですよ!その恨みを晴らすのも、同業者として当たり前ですからね?」


 力を込めすぎたせいで、円卓そのものが凍り付き粉々に砕け散る。


 ちょっと脅すつもりが、力が入りすぎた様だ。



 しかしここ迄は、あの『フェイガス村』で死んで行った人の『言いたかった事』を代弁したに過ぎない……


 助けて貰えず死ぬと言うことが、この馬鹿貴族には理解できていないので有れば、『死ぬかもしれない』直前まで追い込むだけだ。



 その結果、それでも分からないなら、いっその事こと本当に排除してしまえばいい。


 罪を理解できない人間は少なからず居て、そう言う輩は誰かが罰さねばならない……


 それが僕の役目だとは思わないが、関連した人を殺さない程度に再起不能までして、代わりの貴族を当てがう下地作り位なら僕でもできる。


 ちなみにその下地作りのそれは……貴族邸の更地化だ!!




 全員がこのダンジョンの件について、対岸の火事の様だが………スタンピードは『王国』へ向かうなど何処の誰も言っていない……だからリザードマンは全滅したのだ。



 だから、領民がリザードマンの様になるその前に、彼等の目を覚させねばならない……それが僕の優先事項だ。



「それに……そもそも何で自分たちの住む王国を︎『守らない』のですか?スタンピードが貴方の屋敷に向かって家族が死んでも平気なんですか?」



 悪辣貴族にも理由が分かったものも居るが、僕の話を聴こうともしない馬鹿貴族3人は王に『責任問題だ!』と噛み付いている。


 しかし彼等の表情が一変する事を言う。



「スタンピードが『王国』へ向かうなど誰が決めました?本当に︎よく考えてますか?次のスタンピードが王都ではなく貴方達の領土に向かったら『ゴーレム』では間にあいませんからね?リザードマンが全滅した理由を考えればスタンピードの方向が不確定なのは一目瞭然でしょう?」



「待て!ヒロ男爵……どう言う事だ?スタンピードはあの入り口から起きる訳ではないのか?」



 周りがざわめき、間抜けな質問をする悪辣貴族の様に、呆れ果てたザムド伯爵が、



「先程そう言ったではないか!だから『防衛』ではダメなのだ!何の為に『中に潜入した』ヒロ男爵を呼んだと思っているのだ?話を聞かぬから堂々巡りをしているんだろう!」



 どうやら、あの三馬鹿貴族に邪魔をされて、皆に現状を説明できていない様だった。


 ザムド伯爵は僕が寝ている間に、中に入った冒険者に聞き取りをしていたらしく、ようやくその説明を始めた……

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