第383話「4階層の新たな魔物と謎ダンジョン」
僕はクロークから出した『炎の弓』を構えて射撃をする……マジックアローなので重力で落ちることなく真っ直ぐ飛ぶと、1匹に突き刺さり火ダルマになるリザードマン。
そしてその明かりでなおさら奥がよく見えるようになったので、遠距離系が使える魔導師やアーチャーにレンジャーやシーフは一斉に見える敵に撃ち込む。
感知結果を教えて貰いながら注意して進むタンクに、殲滅し終えたとベロニカが告げる。
かかった時間は半刻程で、9パーティーもの敵集団を倒した事で周りの顔も少し満足気だ。
「これで地上に出ていく個体が減りますね!早く先に行かないと……リザードマンが第四波だったならば、この道からかなりの数が地上に出たかもしれません!」
僕はそう話すと、適切な発言だったこともあり、皆気を引き締めて階段を探す準備をする。
しかし、臨戦態勢で階段探索をするので、精神的に疲れる。
先程怪我をした女性は、自分たちよりも格上のパーティーの回復師に直して貰ったので、参事は免れたが噛まれた部分の鎧にはクッキリと歯形が付いていた。
「リザードマンの噛み付きは、武器攻撃より厄介なんだ!手が無ければ掴んで噛まれないから、噛み切られる迄は行かないがこれでよく分かっただろう?安心したら『ガブリ』がある……宿に戻り眠るまでは決して絶対に気は抜くんじゃないよ?」
その言葉にしみじみとする周りの冒険者は、同じ道を遠てきた仲間同士昔話に花が咲いていた。
しかし此処で僕は『空間感知』に引っかかった物を見た……
「敵影が見えない……ですが……『魔物』です!!」
僕がそう言った瞬間その個体反応が消えて、次にはエクシアの横に現れる……
「何故急に此処に居るの!?ゴースト!?……く!エクシアさん!避けて!『ゴースト!』の霊障攻撃です!!………ダメ詠唱が間に合わない!」
シャインが間に合わないとそう言った時に、僕は敵が何か理解出来たので咄嗟にとある呪文を唱える……
『ライト!!』
「ギィィヤァァァァァ!!!!!」
幽鬼と違いゴーストは、絶叫を挙げてブスブスと焼け爛れた状態になる。
「ラ………ライトにこんな効果が?…………く!『ライト!!』」
「ギィィヤァァァァァ!!!!!」
「ギィィィ!!………ギィィヤァァァァァ!!!!!ガァァァ……………ァ………」
僕のライトよりシャインさんのライトの方が効果範囲が広いので、他のゴーストにも効果を出した様だ。
僕は幽鬼を追い払った時ことをシャインと皆に話したら『咄嗟に思い付く事じゃないよな?』と言う話になる。
つい僕は映画の話を持ち出して話す。
「ホラー系は大概暗がりに現れてビックリさせるじゃないですか?でもアイツ等って絶対に明るい所では活動しないんですよ……あの臨場感のある音響といい……ドキドキするのって暗いから効果がある訳で……」
「まぁ夜にしか出てこないもんな?ゴーストだって幽鬼だってバンシーだって……幽霊系は朝は活動できないからね?」
異世界あるあるならば、対処法の想像がついても良いのではないか?と思うエクシアの一言だった………
「でもこれで此処の階層には『リザードマン系統』と『ゴースト系統』が出ることがわかったね……でもこれは大問題だよ!」
そう言われてみればそうだった……アリ以外にも2種族もスタンピードを起こした恐れのある魔物が増えたのだから急いだ方がいい事はあるが、この凶暴なリザードマンを多数相手には正直蟻より接近戦は厳しい物がある。
只問題が一つ解消した。
あからさまに同じ階層でも、階段が違うだけで魔物の質が違う……片方はギガント・ミノタウロス3匹で、こっちはゴーストとリザードマンだ。
例えギガント・ミノタウロスが4階層ボス部屋だったとしても、あの4階層主を倒せる銅級冒険者などまず居ないはずだ。
「さぁ、のんびりはしてられ無いよ!出来立てのダンジョンじゃ無い以上、アタイ達だけでは無理だからね!地道に時間かけて攻略するしかないよ此処は!」
エクシアの言葉で一路、3階層への階段探しに移行する……
5階層程では無いが、かなり広い4階層で地下に降りる階段は別に二箇所ほど見つかったが、上に舒階段が見当たらない。
だからと言って、またきた道を戻ればあのギガント・ミノタウロスと下手すれば戦う羽目にはなるだろう。
エルフとエクシア達は良いと言っていたが、その上のアントマンが居ることを話すと……『連戦はヤベェな』となった。
ゴーストはライトを嫌いあまり近寄って来ない。
その代わり、リザードマンは光につられてはちょこちょこ現れるので、割と緊張を解いて歩く事はできない。
そして4階層を1時間近く彷徨い、ようやく石段が上階層に繋がる場所に着いた……
「マジかい……コレって割と古い冒険者の装備じゃ無いか?誰か此処にきたことがあるって事だよ……どう言う事だい!?」
3階層に上がる石段には、吸収されずに残ったと思われる冒険者の装備が転がっていた。
「ダンジョンて遺体や装備を吸収するはずですよね?なんで残ってるんでしょう?」
そう質問してきたのは、銅級女性のみで構成されたグループのバニラという娘だった。
「もしかすると、確証は無いですけど蟻の巣に関係しているかもしれませんね……もし此処が全て蟻の巣からなるダンジョンであれば、女王蟻はどれくらいになるか想像がつかないです……10匹ちょいのトンネルアントの生態が本来の巣の在り方ですからね」
僕は思いつきで説明をした。数個ではなくかなりの数の巣が纏まったならば、ダンジョンとして形成出来ずにまだ残っている部分もあるのでは無いかと思った。
このダンジョンはまだ『未完成』な可能性がある……だからダンジョン形成は鍾乳洞の様な形状のままなのかもしれない。
同じ階層を通って来た筈なのに、潜ってきた場所とは全く異なる仕様なのは特殊すぎると感じたせいだ。
「意外と底は近いのかもしれませんね……前の持ち主である『蟻系魔物を外に出す』ためにスタンピードを起こしたならば……真実はどうあれ先に進み無事出る事が先決ですね!」
それから僕達は3階層を注意深く進むが、蟻系の魔物に出くわすことはなくリザードマンやゴースト系の魔物にしか会わなかった……
2階層への石柱階段を見つけた時には、既に全員が疲労困憊であった。
魔物とフィールド戦を繰り広げて、そのあと5階層まで降り、そこから途方も無く歩いては戦闘だったので仕方ないことだが……
僕達は階段付近で休憩を取ることにした。
何故ならば、『安全に休める』ダンジョン特有の休憩場所が無いからだ。
「参ったね……此処はヒロの言った通りかもしれないね……ダンジョンになりかけた中途半端な状態かもしれない……『休息場所』が無いダンジョンなんて、少数グループでは危なっかしくて潜れない……あー!この肉に合うエール欲しいわ……」
エクシアが僕が作ったミノ肉の生姜焼きを食べながら文句を言っている。
周りには大好評だが、匂いが籠るので怖くて仕方がない。
「エク姉さん!エール飲んだら絶対今寝ますよね?」
ロズとエクシアのコントは笑いを誘うので、幾分かは疲れが癒される。
「でも本当に少し休んでから行かないとね!外に出たら囲まれてましたなんて言うんじゃヤバいからさ!」
ベロニカの話で、2交代で皆1時間の休憩を取る事にした……結果的に言えば2時間は2階層行きの階段付近にいた事になる。
僕も流石に疲れていたので眠ると、皆は気を利かせてくれたのか僕だけ休息を2時間とっていた。
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