第382話「5階層は延々と続く鍾乳洞」


「こりゃヒロの発言大当たりっすね!全く端の壁が見えないっす!『終わりか?』と思うと石柱の壁で、その後ろは相変わらず延々と同じ光景が続いてますからね……歩き始めてもう1刻過ぎですぜ?」


 ロズが言う通り、僕達は5階層を横に広がり唯ひたすらまっすぐ歩いていた。


 敵影が見られたら全員で集まったり、壁らしき物が見えたら期待を込めて向かったりと1時間24分唯ひたすらまっすぐ進んだ。



 因みにロズが1刻と言ったのは、彷徨ってどれだけ経つか……と煩かったので3600までリズム細かく数えれば1刻だと教えた。


 リズムが人により、たまに狂うので其々のずれが出たが、ロズだけでなく皆に好評だった。



「たまにアリの個体と遭遇しますが、かなり若い個体ですからね1メートルくらいだし……広さの割には敵が少ないのは助かるんですがね!」



「いやロズさん……あのスタンピードの群れが此処にいたら、僕等は間違いなく死んでますよ!此処には身を隠すための『場所』もなく天井からも襲われますからね!アリには壁も天井も変わりないですから」



 僕がロズさんの話に注意事項を付け足すと皆予想もして無かったのか、急に上を見上げる。


 そう言うからには、僕が注意して上を見ている筈なんだが……



 僕達は更に半刻歩くと、ようやく迫り出した階段状の石段を発見する。


 その先は上へ繋がる階段になり上層階へ続いている……このダンジョンは元蟻の巣だから『普通の階段』を探すのは間違っていた様だ。


 石段の様になった石柱の束は一見すると石筍の束の様にしか見えない、石筍にしてはやたら太くて大きいが……



 僕達はそこを上り4階層へ戻ると同じ様な5階層と同じ様な鍾乳洞が続いていた。



 5階層と誓う場所は石柱が多く、鍾乳石もかなり多いし石筍もかなり目に付く。



「またこの光景かい!アタイはもうウンザリだよ!ダンジョンじゃなくて此処は洞窟の間違いなんじゃ無いのかい?」



 エクシアが若干キレ気味に大きな声を出すと、此処がダンジョンだと思い知らされる……



「ギュ!?ギョエェェェェェェ!!ギャワ!ギョヨヨ!ギョエェェェェェェ!!」



 その場所に居たのはトンネルアントではなく『リザードマン』の群れだった。



「魔物が!アリじゃない?……『リザードマン』前方6匹!多分まだ居るよ!」



 ベロニカが感知を使い索敵をして声を張る。



 僕も『空間感知』は常に使いっぱなしだが、なぜか今まで全く反応しなかった。


 エクシアが石段部から進み出て、4階層へ踏み込み話し始めた瞬間現れた……



 僕がエクシアさんの後を追いかけて、4階層へ入った瞬間複数の魔物の反応が頭に浮かぶ……目の前に6個体、右には4個体そしてその後ろに更に3個体。


 どんどんと増えて居る。



「エクシアさん!かなりの個体数がいます!皆戦闘準備を!」



 其々のパーティーの感知持ちが僕と同じ様に仲間に指示を出す。


 マルスは右のリザードマンを目視して叫ぶ。


「エクシアさん!右は俺らが引き受ける!テッド!索敵の後随時指示を!」


「おうよ!マルス!右は4個体の後ろに更に3個体、ブブ前衛に!キュウテとテーツンは遠距離で迎撃フィナは加護の後回復魔法を!!」



 マルスの指示でテッドに戦闘指揮を切り替える。


 その指示で今度はガルスのパーティーに指示がとびかう……指示役はジームと言うレンジャーだった。


「ガルス、ザック!左側に足が早いのが来てる!敵影は不明だがカバーに回るよ!ゴックは私と遠距離でパラスは傷薬の準備とボールは加護詠唱後にライトの魔法を周囲に!此処で私たちの役に立つよ!」



 ジームさすがだな!行くぞ、さっきは全く役に立たなかったんだ!此処で役に立つぞ!


「「「「おお!!」」」


 エクシアは残った銅級冒険者へ指示を出す……彼女達は戦闘経験が主要冒険者に比べて少ないので前線には出せないと判断したからだ。



「おい!アンタ達銅級!アンタ等は遊撃だ!遠距離メインでトドメを刺す時アンタ等に任すからビビんなよ!」



「「「「「ハイ!」」」」」


 かなりの乱戦を強いられるが、ダンジョンスタンピードを起こしたダンジョンの4階層だから、この程度の遭遇戦は当たり前だ。


 多くのリザードマンはジャベリンを装備していて、それを投擲する。



 しかしその後は当然素手になるので、攻撃は噛み付きがメインになる。



 トカゲ人間の様な個体とワニの様な頭の個体が様々いてリザードマンに違いがある様に見えた僕は鑑定をする。



 『リザードマン』と『リザードマン・ウォーリアー』が混在したグループだった様だ。


 リザードマン・ウォリアーは個体的には体格が良く、尻尾の棘が非常に鋭利だった。



「ギュワ!ギャッギャ!!」


「ギュイ!ギャワギャギャ!」


「ギュ!?ギョエェェェェェェ!!ギャワ!ギョヨヨ!ギョエェェェェェェ!!」



 こっちには聞き取れないがコミュニケーションを取り、連携をしかけてくるリザードマン部隊にタンク達は盾を構えて攻撃を受け流す。


 その隙を突いて、アタッカーが攻撃を入れて大ダメージを与えた後、銅級にトドメを刺させる。


 その流れでどんどんと処理をする。



「おい!銅級次回すよ!ヘタってんじゃないよ?」



「はい大丈夫です!!………ヤァァ!!………」



「ギュワ!!ギャギャ……『ガリ!!ゴリリ……』………」



「痛い……ああ!!い……痛い!!」



 エクシアがそう言って腕を切り落とした個体を回すが、腕が無いことで安心して近寄った瞬間、脚を鎧の上から『ガブリ』とやられて手痛いしっぺ返しを喰らう。


 急いで数人がかりでトドメを刺すと、各パーティの背後に控えて居る回復師が回復をかける。



「アホか!!腕が無くてもこいつ等には噛みつきがあんだろうが!何見てんだい!?見て学べ!ヒヨッコが!」



 この戦闘中では手取り足取りなど教えられない……


 そもそも魔物との戦いなのだ、呑気に近寄ってはダメなことくらい誰でも分かるが、回復師が沢山いたお陰で直ぐに回復されてそこまで重症にはならなかった。


 怪我した女性冒険者にシャインさんが……



「後で完全に回復させますので、傷の殆どはもう治ったはずです!めげずにこの状況に打ち勝ってください!そうすれば冒険者として成長出来ますから!」



 そう言われた銅級の彼女達は、お互い声をあげて頑張ろうとする。



「おいヒヨッコ!ちゃんと仲間と連携するなら声出しな!相手に伝えないと連携なんか出来ないよ!?」



 それを聞いた一人が指示を出す。


「キャロットとマカロン!盾で押さえ込んで、ガナッシュとバニラは倒れた敵の頭に魔法を!クリームは回復の援護に!MPは無限じゃないから無駄撃ち禁止、ちゃんと見て撃って!」



「「「「アイ!」」」」


 僕もMPを節約するために、フェムトのショートソードで参戦する。



「MP節約の為に今からは剣に切り替えます!前衛さんよろしく!」



「「「おお!!」」



「ヒロの兄貴……マジっすか!剣ですか!?」



 ロズが悪ノリして茶化すので、隙を見せたリザードマンの喉を一文字に切り裂く。



「どうですか?ロズさん……戦えるでしょう?」



「はははは!マジか!?へっぴり腰だったのに前迄は!!こりゃ楽できそうだ!」



 そう言ったのはベンだった。


 あっという間に最初の群れは残り数匹になるが、まだ後続の反応が複数ある。



 僕はシャインさんにお願いして、ライトの魔法と飛ばしてもらい明るくしてもらう。



「ギョーーー!!ギュワ!ギャッギャ!!」


「ギュギュギョーギョー!ギュイ!ギャワギャギャ!」



 突然明るくなった視界に、僕たちに気がついたリザードマンは敵意をむき出しにする。

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