第373話「レプラコーンの秘術店で見つけた逸品」


 僕達はアレックスの案内で『レプラコーンの秘術店』についたが、店の主人は150KGはあるだろう巨漢だった。



「フォッフォッフォッ!ようこそレプラコーンの秘術店へ!どのような物をお探しで?魔導書、マジックスクロール、マジカルワンドも様々な物を取り揃えておりますよ?勿論貴方様みたいな初心者であっても、問題あーりません。割と短期間で冒険者の方も魔法が使えるようになります!使える様になるまでざっと……100年くらい?フォッフォッフォッ!!」



 魔導師ジョークなのだろうか?


 マッコリーニはドキドキが隠せない様だが、フラッペはワクワクが隠せない顔だ。



「わたしはこの店の主人、スラスノワトフ・ミュンヒハウゼンと申します。ダブルの使い手で御座います……以後お見知り置きを!!」



 そう言って150KGの巨体が突然宙に浮く……



「おや?珍しい事に、アレックス殿では無いですか!本来此処に来る人は魔導師と見習いしか来ませんが……王妃様やカノープス様と来ないで油を売っててはダメでは無いですか!それとも貴方がまさか魔法を?」



「わたしは魔法が使える程頭は良く無いのは知って居るだろう?このヒロ様をお連れしたのだ!王都イチの『魔導書』の店だからな!連れて来るべきだろう?我々より優秀な冒険者だからな!」



 そう言った二人は嫌味では無い様だ。



「フォッフォッフォッ!なんと!そうでしたか!!それにしても、アレックス!また一緒にダンジョンへ潜りたいですな!死ぬ前にもう一度皆でいきましょう!わたしもあれから力をつけましたから!20階層はゆうにクリア出来ますぞ!」


 会話から察するに、どうやら古馴染みの様だ。



「所でヒロ様は『何系統』の呪文をお望みで?それによってお勧めするものが違います故!まぁ適正もありますので確実とは言い切れませんがな!フォッフォッフォッ!!良ければこちらのマジックワンドをお持ち下さい!これで扱える『色』が分かります」



 そう言われて杖を渡されたので持つと………



『パーーーーーン!!!』



 弾け飛んだ!!!



「フォッフォッフォッ!!!……………フォォォォォォ……………ホンゲェェェェェ!!」



 とんでもない言葉を聞いたが……本人は取り乱した事を無かった事のように振る舞う。



「どう言う事でしょう……弾け飛ぶなど2系統以上であい反する魔法形態でないと……こうは成りませんぞ!?ちょっとお待ちを!」


 そう言って今度は5本の杖を持ってくる。



「コレは炎の杖で御座います。炎を扱える者が持つと持ち手が赤く揺らめきます……」



 僕は弾け飛ばないか心配になりながら持つと、持ち手では無く杖全体が赤く揺らめく……



「フォッフォッフォッ………炎の威力が桁違いですな!だから先程は砕け散ったので御座いましょう!あれはテスト用の杖なのでご心配なく、稀に持ち手の魔力に堪えられず折れたりするのですが、弾け飛んだのは初めてでして!動揺しました、まぁこれで謎は解けましたな!これだけの炎の魔法の素養があれば、あの杖は砕けて当然です!」


 その言葉にアレックスは……『ヒロ殿は水以外にも使えたのですな?』と言う言葉に……



「なんと!わたしと同じダブルでしたか!というか……それも対属性ではないですか……アレックス!もう魔法を学び使って居るならそうと言わねば!!相変わらず呑気ですな?アレックは!」


 そう言って僕から炎の杖を受け取ってから、水の杖を代わりに渡してくる。


「その杖はケルピーのツノとトレントの枝で作られた杖の持ち手にマーメイドの魔力髪を使い作った一品で御座います。魔力を通せば魔法の威力を数倍にしてくれる物です。中級者までは問題なく扱えますよ!」



 そう言われたので、魔法をつか時の様に手に集中すると……『パーーーーーン』とまた砕けてしまった……



「ハウアァァァッァァァ!?ケルピーのマジックワンドがぁ!!砕ける?砕け散る?炎は揺らめきましたよね?水は砕け散る?何故ですか?何をしたんですか?」



 スラスノワトフは僕にそう質問をするが、僕に説明などできる恥がない……だから『すいません僕も魔法詳しく無いんですよ習ったばかりなので』と言っておく。


 水っ子に学んでから、先生は彼女だった……そして彼女の魔法の威力とスピードの方が遥かに上だ。


 僕は『人間』の魔法常識自体がまだ未修得だ。


「す!すいません……私としたことが……よく考えれば扱う魔力量が多ければこうなるのはわかってました!この杖の事はお気になさらず……」



 なんか申し訳なくなってくる。


 そもそも杖無くても魔法使えるし、武器持つとき邪魔でしかないしそう思っていたので、



「すいません杖で無くて、『魔導書』が見たくてきたんです!」



 そう言った後、彼は物凄く安心した顔をして、笑いながら接客を始める……


 そうすると彼は気を取り直して、水魔法の魔導書を持ってくる。



「フォッフォッフォッ!確かにあの魔力があるならば、攻撃魔法を知りたがって当然です!ワンドじゃなく杖にすれば、先程みたいに壊れる事はありません!ではー此方が水魔法の魔導書で御座います。まぁ初心者であれば、初級の1巻から5巻を読んでおけば基礎はお分かりになるはずです!」



 緩急をつけながらスラストワノフはそういうと、初級の5冊を僕に渡してくる。


「其方全部でなんと!!お会計は金貨1枚と銀貨は5枚!言い換えれば……一冊銀貨3枚ですね!今ならおまけにマジックキャンディをプレゼント!食べると口から火が出ますよ!熱くない炎なのでー!皆をびっくりさせるのに丁度いい!」


 銀貨3枚……元の世界で言えば3000円程度になる……ちょっと高い参考書くらいの金額だ。


 しかし、安いか高いかなどは全く分からない……他に店を知らないからだ。


 ひとまず9巻までは全部買っていきたいのでそう伝えると、大喜びで持ってくるスラストワノフ。



「はい此方!9巻までのセットです!お買い得ですよー!これでマジックキャンディ2個ですから!」



 どうやらマジックキャンディは4冊買うと1個おまけらしい、カウンターに貼ってある埃が被った羊皮紙にそう書いてあったので、実は『今だけ』では無く、ずっとやって居るイベントの様だ。


 マジックキャンディが、埃の分だけ古く無い事を祈ろう。



 僕は他にも見たいと言って、店を物色する……ふと上を見ると雁字搦めに鎖で絡められている本を見つけた。



「あれってなんですか?」



「フォッフォッフォッよくお気づきで!あれは『ミミック』で御座います!ミミックは擬態する生き物でして……たまたま冒険していた時偶然見かけましてな……古城の本棚にあった本の中に混ざっていたのです。見かけた時皆で鎖で縛って連れて帰ってきてからあの通りですね」


 感知を使うが、吊るされたミミックは既に死んでいるのか反応に出ない。


 スラストワノフはミミックを見つつ昔話をする。


「その古城は魔物に棲家になってましてな!まぁそこが今の私の原点で、そこで見かけた本を持ち帰り、『魔導書』の店を開いた次第なんです!どうせなら魔法に関する仕事にしたいと思いましてね。アレックスも王宮に入るのが決まった頃でしたのでちょうど良いと!」



「成程スラストワノフさんの転期だったんですね!因みに、そこにはなんの本があったんですか?」



「主に炎系の魔法書でしたね!珍しいもので『錬金魔導書』でしょうかね?今は在庫処分中ですが……あの時は嬉しかったものですが、誰も使えない魔導書にはコレクターくらいしか価値を見出せませんからな!」



 びっくりした……こうもあっさり見つかり、それも『要らない子』扱いだったとは……意外と本屋巡りをすれば揃うかも知れない!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る