第356話「開封!呪われた強欲なる王からの褒賞の宝箱」


 僕はそれから孤児院の院長に長々とお礼を言われた。


 どうして孤児院からこんな早く来れたのか聞くと、スラムからギルドまでは近道があるらしく、馬車で進むより遥かに早く来れるらしい。


 そして僕には問題の子供たちにはとっておきの秘策があった……お行儀が良い子には『ギルドの串焼き食べ放題』これは全員が一瞬で大人しくなり、長机に整列して座り始めた。



 何故かアーチも一緒に座っているが……子供達と一緒にまさか本気で食べる気なのだろうか?


 僕は売店に向かい串焼きを注文する。



「すいません……あの子達が『静かな間だけ』串焼きを食べさせて下さい。歩き回って騒いだ『その子』は落ち着くまで御預けで!お願いします。取り敢えず金貨2枚渡しておくので、代金が足らなくなったら追加の金貨を取りに来て下さい」



 そう言うと、店主は『はいよ!兄さん大変だね?孤児院助けたのに今度はその子のお守りで奢りかい?はははは!』と言って串焼きを山の様に焼き始める。


 どうやら孤児院の話を聞いていた様だ。


 僕は慌てて開封部屋に戻ると、王妃は片手で首を支える様にして、宝玉のサークレットを頭に嵌めていた。



「これは髪の毛で宝玉を支える様にしなければなりませんわ!陛下……明日はお茶会でこのサークレットを使いますわ!」



 などと言っている……本気か?王妃様!!!どんな罰ゲームなのですか?



 4番目に開けるランクA+の『階層主からの褒賞』箱は毒矢の罠があったが既にもう外されていた。


「陛下……罠は外し済みで御座います。お開けになられますか?もしまだ猶予があればちょっと受付に……」


 などと言われて王は僕の様子を伺いつつ、



「では………開けるぞ?」



 そう言って開けようとするが、王妃がじっと見つめて開けたそうにしているのを見て、仕方なく王妃に変わる……



「で……では開けますよ!?ド………ドキドキしますわね!陛下!!」



 そう言って上蓋に両手をかけて一生懸命開ける王妃様


 開けた瞬間、凄い勢いで箱に手を入れようとしたのを、シャインが後ろから押さえ込む。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 銀貨袋(180枚)


吸血の・鋭利な・バスタードソード+1


破滅する・力の・ジャイアントモール


聖なる・歪んだ・バックラー+2


硬く・細長い・錫杖+2


 サファイア(呪)


 小粒ダイヤ(呪)


 大粒ルビー(呪)


 中級ポーション 1


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「いけません!ポラリス妃殿下!!危険です!!」



「危険なわけがないわ!宝石よ!?ちょっと手に取って眺めて見るだけ!お願いちょっとだけ見せて!絶対に取らないわ!ちょっと離しなさい!離すのよ!」



 必死に抑えるシャインと『欲しい』と顔に出過ぎて取る気満々な王妃様。



「シャインさん絶対に離しちゃダメです!王様!ヤバいです触らせないでください!宝石は全部アウトです!」



 そう言われて、王様は大きな声で『ポラリスダメだ!あれは呪われている!』と言った瞬間、王妃は嘘の様にシャインのハグをかわして誰よりも速く後ずさる……


 そしてシャインさんがゼーゼーしながら『祝福』を使うと、宝石は嘘の様に崩れて無くなる。



「危なかったです……たまたま止めたのですが……ハッ!ポラリス妃殿下……大変申し訳ございません!咄嗟とは言え!」



 そう言うと、王妃は相当怖かったのか腰が砕けてその場にへたり込む。



「こ……これが………呪い……」



 王と王妃似たもの同士だなぁと思ったが、決して顔には出さない様に頑張った。


 多分周りも同じだろう。



 僕は鍵士にお願いして両方とも箱の罠を外してもらう様にお願いする。


 両方とも同じ箱なので、誤って逆を開けて大怪我しないようにする為だ。



「はい分かりました男爵様!では少しお時間をいただきます。爆弾があるので慎重に行わないと全部宝がなくなってしまうので……」



 そう言って鍵士だけを残して、皆出て行く。


 しばらくすると、無事中から鍵士が顔を出す。


「少しお待ちください。一人では開かない『特殊鍵』でございます……とても困難な鍵なのでもう一人連れて参ります。」



 そう言って急ぎ本館に向かって行く。



「お待たせ致しました……相方を連れて参りました。この私、未だかつてここまで難しい鍵は初めてです。罠は簡単だったのですが『鍵が非常に困難で』これはマジカルキーでも『開けられない箱』だと思われます」



 そう言って中に入って行く。



「最後の箱は確か……『呪われた強欲なる王からの褒賞』とか申したな?そんな難しい箱……何処で手に入れたのだ?」



 そう言うと、王様は『すまぬ!この類は禁止だったな!つい気になってな!』と言ってきたので、王都の地下ダンジョンだと言うとビックリしていた。



 暫くして漸く出てくる二人、相当疲れたのか疲労が顔に出ている。



「こんな箱初めてで御座います!!陛下……この箱は解錠スキルが最低でも、LV8以上でないと多分ですが開きませぬ……それも2名必要です!我々は長い間かけて、やっとこのスキルLVに至りましたが……この箱に出会い目が覚めました!今まで我々は慢心しておりました!」



 そう言ってお礼を言っていたが、お礼を言うのはこっちの方だ。


 仲間に頼っていたら多分開かなかった。



 中に入ると箱が置かれていたが、箱の色が変わっていた。


 普通の金属製の箱だった『呪われた強欲なる王からの褒賞』は、今は真っ赤な箱になり、見た感じ禍々しい。



「これは……陛下が開けない方が良いのではないか?ヒロ!!」



 僕はそれを見てその通りだ!としか言えない……と言うか僕も開けたくない。



「妾もこんな箱は初めてじゃ!3000天もこの世界に居るが、未だかつて見たこともないぞ!?」



 皆が僕を見るので、仕方なく箱に近寄る。


 5番目の箱は迷宮宝物『呪われた強欲なる王からの褒賞』ランクAで罠は外れているので開けるだけだ。



 考えても仕方ないので、僕は力を込めて開けようとするが開かない……鍵士に聞いたら、この箱は仕掛け箱で押しても開かず上蓋を持ち上げる箱だった。


 なのでモブGにお願いして二人で開けることになった。


 開けて見ると……包まれた何かが1つだけ入っていた。


 僕は恐る恐る布を取ると……


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 封印された深淵の魔鏡


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 それは、鏡だった。


 呪われていないが、装飾といいデザインといい禍々しい。


 僕は王いう古そうなものが好きな王様を見ると、全力で手を振り拒否している。



 流石に縁起が悪いと感じているのだろう。



「すまぬが、流石にどんなに価値がありそうで、古いものでもそこまで禍々しい………あ!」



 王様に『あ!』と言われてはもうどうしようも無い。



「大丈夫です!呪いはないので、僕管理でこのまましまいます」



 そう言うがシャインは念の為に!と言って祝福を唱える。


 当然呪われてないので消えないし、祝福でこの禍々しさが消える裏設定はない様だ。



 マジッククロークの存在を王族へ知られないために、マジックバッグへしまう準備をする。


 中に入れる直前にスキルを使って鏡がなんなのか鑑定をする。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


     深淵の封印魔鏡 


『別名 土を喰らう貪欲な女性の魔鏡』


『魔鏡・マジックアイテム・作成可能』

 必要素材 

   (鑑定レベル不足で表示不可)


  選ばれし7名の徳ありし者に封印

 された悪魔が収められた魔境。


  異次元領域に鏡を入れると封印が

 緩み、いずれ現世に再誕する。


封印中 『デーモン(詳細表示不可)』

詳 細 『鑑定レベル不足で表示不可』


魔鏡効果  特定生物を封印可能。

     『封印中につき使用不可』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 鑑定結果を見て、慌ててマジックバッグの口から離す。


 僕は見てしまった……


 入れるときに裏にして持っていたので細工面が見えるのだが、マジックバッグに入れようとしたその瞬間、細工の顔がニヤリと笑って何かを咀嚼していたのだ。


 その素振りを見て皆が不思議そうな顔をする。



「どうした……ヒロ!何があった?」



 そう言ったのは、ウィンディア男爵だった……。

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