第338話「二足歩行の変な奴……異世界だけに普通なの?」


 目に前の二足歩行ネコは胸のポケットから『ボールペン』の様な物を取り出して部屋に入ってくると、真紅の魔女を見て……


「げぇぇぇぇ!!何でここに!何も買わないケチ魔女アナベル!!」



 その言葉に真紅の魔女は、『何でじゃ無いだろう?お前こそ此処に何の様だ?置物に変える前にとっとと失せろ!守銭奴ネコめ!』と言っている。



「何でもクソも!其方がモノリスプレート設置して金を置いたんやろ!!注文の基礎や!」



 二足歩行ネコが机の色違いの部分を指さして初めて気がついた……置いた救出ボーナスの『金貨150枚が入った袋』が無い!!


 フルーツは食べたと言っていたので気にしてなかったが、金貨袋の存在は二足歩行ネコに言われるまで忘れてた。



 二足歩行ネコが近づいてきて『モノリスプレート』と呼ばれる物をチョチョイと触ると金貨が出る。



「こんなゴン太のお客さん……なかなかおらんやろ!?あんさんに言われる必要なんぞないわ!ボケ!!」



 非常に口が悪いネコだが、真紅の魔女は火炎の魔法弾を撃つと、尻尾の先が『ジュ!!』と音を立てて焦げる。



「ちょ!ちょ!!嘘や!アナベルねぇさん!べっぴんのアナベルねぇさん!嘘やてーーー!!尻尾はやめて〜彼女に昨日毛繕いして貰ったばかりなんやー!お客さん巡りあるで綺麗にしてもろたんやー!!」



 僕はひとまずアナベルと呼ばれる真紅の魔女を止めに入る……



「ちょっと魔女さん!待って……聞きたい事があるんです!このネコさんに!一体何がどう言う事か説明が無いと分からんのです!!」



 僕の話を聞いた魔女は、仕方なく攻撃を止める。


 作業服を着た二足歩行するネコに、僕は事の一部始終を説明してもらうが、誤解があるのはすぐに判明する。



「マジで言ってるんですか?あんさん?マジか!?客じゃ無いのか〜い!なら、なんであの金はあそこに置きました?アカンですやん!!異世界金貨150枚ですぜ?あんさん?この意味分かりますか?この仕事『早い者勝ち』がモットウな世界なんですから!異世界だけに!!」



 微妙にギャグ寒い……でも今はそれどころでは無い。


 この猫は『異世界』とハッキリ言った……



「異世界って……ここが猫さんの世界とは違う異世界であると、貴方は『認識』しているって事ですか?」


 僕はそう質問すると、『あんさん頭大丈夫ですか?』と言いながら細かく全部説明してくれた。



 まずこの二足歩行ネコは、異世界を駆け回る『次元猫』と言う種族らしく、基本の仕事は『モノリスプレート』を設置した者に仕事を受けに行く事らしい。



 因みに此処とは、別の異世界の住人だと言う。



 そしてモノリスプレートとは、次元猫達の間では『万能の知識』と言う意味らしい。



 彼ら自身もこのプレート自体の製法も出現理由もわからないが、今この仕事をしているネコ達が生まれる前から、ずっとコレに関わる仕事を種族単位でしているようだ。



 因みに、モノリスプレートに『お金』を設置した場所からは、常に次元猫族へ信号が出ているそうだ。


 正確に言うと、そのプレートの信号をキャッチしている様だが、全貌は当然言わない。



 その信号を、早い者勝ちで取りに行くのが『次元猫』の仕事らしく、主な業務内容は異なる世界の物を依頼者に配達する仕事らしい。



 そして、その信号を発する者は基本的な『知識が足らない』者……と猫族では認識している様だ。


 モノリスプレートを使う者の殆どは『次元移動』が出来ないので『必要な物』を届け、代わりに手数料を『多く』貰うらしい。


 当然『手数料』の支払いは依頼者側の現金だ。



 そして猫達はその金を使い異世界の物資を買い、自分たちの世界に持ち込む事で異次元猫世界は栄えているらしい。


 色々知っていそうなので、自分達で生産出来ないのか?と聞いたら……



「あんさん……わいの手よう見てや?肉球で何を作れるんや?馬鹿か?あんさんの頭の中身は飾りか?鯖味噌ですか?『知識が足らない』者って言うのは本当ですな!あ、ちなみに悪気はありまへんで!」



 僕は『バカにされた』気がしたので、焼けた尻尾の先を『アイス!』して、冷やしてあげたのは言うまでも無い。



 それにしても、話す言葉が気になるが『異世界猫語』なのかも知れない。


 試しに聞いてみると、この二足歩行ネコは地球の言葉殆どを話せるのだ……英語まで……そう言う意味では確実に頭がいい二足歩行ネコだ。



「それであんさん!金を入れて『何も要りません』じゃ!あきまへん!何か欲しがって下さいよ!この世界に無さそうな物で『こんなんあったらな!』って言ってもらえれば、探して来ますから!宜しいか?」


 急に言われても……と言うかこの猫は僕が此処の世界の住人だと思っているのだろうか?



「すいません……異世界って何処でもいけるんですかね?そして欲しい物は何でも?だとしたら『地球の東京』に帰る方法を5人分探して欲しいんですけど!!」



「何ですって!いま『地球』と言いましたか?あんな辺鄙な場所に……ま……まさか……あんさん向こうから流れて来たんですか?………かぁぁぁぁ!あきまへん!あんな辺鄙で遠い場所なんか、人族5人転移などの移動方法は絶対に無理ですわ!」


 そもそも言語の話をちょい前にしただろう!何で『地球』で驚くのか!と思い言うと、細かく異世界全ての言葉を何が何処だと覚えてると思うか?幾つ異世界があると思っているんだ!と言われる……だが本題はそこでは無い。


 話を切り替えて何でもと言ったのに、言った事が違うじゃ無いか!とクレーマーの様に僕は喰らい付く。



「ちゃうんです!どの異世界にもそう言った移動方法の小型道具が無いんですわ!そんなんあったら、わてら全員食いっぱぐれてお手上げですやん!」


「それにスキルや魔法移動は、自分の力で転移せんと『場所と時間』を指定出来んのですわ!時間軸って意味分かりますか?」


「……残念ですが、あんさんが此処に流れて来たのは『誰かに呼ばれたんや無いですか?』その人に聞くのが一番早いですやん!?俺を元の世界の、元の時間に返せ!!ってですわ!」



 僕は納得いかないので、もっと噛み砕いた説明を求める……



「あんさん……はぁ……まったく……例えばそうですな……あんさんの世界の石油コンビナートを丸一式届ける事が可能だと思いますか?この部屋の何処に『完成品』が入るん?」


「仮に届けられたとして、この異世界の何処に石油があるん?どうやって調べるん?意味がわかるか?………(うにゃむにゃ)………」



 彼の言いたい事を纏めるとこうだ……



 小型の異世界転移のアイテムは残念ながら無い……コレはあった場合、彼らの仕事の『意味が無くなる』だから、まずあっても口を割らないだろう。



 そして仮に、とんでも無くでかい物であっても材料は手に入る。


 例えばさっきの話であれば、石油コンビナートの部分素材を『パーツ毎に』手に入れてくるらしいが、組み立ては『自分でやれ』と言う事だ。



 手渡し出来ない物は、扉から入り部屋に収まるサイズで『バラ納品』の前金らしい……でも手には入れる事ができる様だ。


 当然受け渡し出来ないものは買えない……置き場指定はモノリスプレートのある場所『限定』らしい。



 そして、自分の能力で転移となると、この世界を探さねばならない。



 そして僕自身の地力不足だとハッキリ言われた……『モノリスプレート』の操作も知らないのに、異世界への時空転移は出来ないと言われた。


 マジックバックの持ち込みで……と無茶を言ったら『この異世界の特有物が、他の世界で使えると本気で思ってるん?』と言われた。


 単純な事象における事は再現出来るが、その世界にそぐわない事はできない様だ。


 地球で異世界のステータスを出す事が出来ない様に、異世界ではスマホのネットは使えないと言う事だ。


 一言でいえば、魔力がない地球では『マジックバック』は機能しないとの事だ。

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