第320話「階層主の宝箱と物欲アラーネア」
僕はひとまず手前の箱を鑑定する。
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宝箱(ランクS) 『階層主の特殊宝箱』
(罠:アラーム、特殊アラーム)
特定条件1:
4パーティ24名以上でフロア入場
特定条件2:
脱落者4名にて階層主に勝利
特定条件3:
女性冒険者10名以上
男性冒険者5名以上
ドワーフ冒険者6名以上
エルフ冒険者6名以上
上記以外の亜人種6名以上
※以上の条件をクリアした場合宝箱はS+の
報酬に切り替わる。
S+確定ドロップ 『4箱確定』
紅の短剣・アメジストの宝冠・天罰のワンド
・マジックバッグ(大)・宝玉・水竜の弓・
亜人種専用武器
月光狼の薙刀、石狼のジャイアントハンマー
火狼のショートソード、水狼のメイス
入手方法
ダンジョンの魔物を倒した場合。
特殊な状況下で魔物を倒した場合。
その何かで稀に入手。
箱にはランクがある。
ランクが上がる程、良品が詰まっている。
箱には罠がかかっている場合がある。
ランクが上がると箱内部は複合罠になる。
解錠方及び罠の解除方は箱ごとに異なる。
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出た宝箱は『階層主の特殊宝箱』で、ランクSとランクAの2箱だった。
罠はアラームに特殊アラームのSランク箱目と、毒矢と猛毒矢のAランク箱だ……凄く気になるのは同じ種類の罠で、片方の罠が上位罠っぽい感じだ。
それにしても、ドワーフにエルフの冒険者を含めて24人の冒険者でクリア……4名脱落者という事は、この条件はそれだけ激戦なのだろう。
『窒息』させれば早そうだ……と思ったが『パーティー数』が増えれば魔物が増えるのは実証済みだ。
そう簡単にはいかないだろう。
その上『変なの』まで出てきたら4名どころでは済まない……この場合に脱落者は前の件もあるので『仲間の死亡』でない場合も含まれるが倒す前に4名このボス部屋から出すのはそこそこ大変だろう。
結局は、足と手を凍結させ身動きを封じて、全員で袋叩きが安全で早そうだ。
問題はブルーオーガがどれだけ増えるかと、どんな魔物が呼ばれて来るかにもよるが……
そんな事を考えていると、アラーネアが箱を見てソワソワし出す。
「これは開けられないのかのぉ?中身が気になるんじゃが……」
「すいません、中身は魔物を呼ぶアラームと特殊アラームに、毒と猛毒の矢の罠です……うっかりは開けられないのです……」
アラーネアは僕たちが急いでいる事を知っているが、中身にもし念願のアイテムがあればと気になった様だ。
そしてまさかの提案をし始めた。
「ならば毒と猛毒矢だけは妾が開けてやろう!毒は効かんのでな!ちゃちゃっと開けてしまうで向こうの小部屋に行っておれ!」
そういうと人間の姿のまま、僕達を担ぎ上げると小部屋に連れてくると『じゃあ待っておれ!』と言い残してまた箱に戻っていくと毒系統の箱を開けにかかる。
「もういいぞ!開けたでの……残念じゃが無いな……中身はポーションと宝石類とかだけじゃな……妾は悲しいぞ……」
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
金貨袋(350枚) 1袋
高級回復ポーション 1
中級回復ポーション 2
鬼金棒 1
+3イヤリング
黒狼のハイドクローク 1
大粒ダイヤ 1
特大パールのティアラ 1
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僕と兵士は2人で中身を覗き込むと、確かに中身はポーションと宝石類が多めだ。
オーガと闘っただけに、箱に入っていた鬼棍棒はデフォなのか気になる。
「呪いの装備は無さそうですね……兵士さんは何が欲しいですか?」
僕はそう言って中ボトルの傷薬を渡しながら、そう聞く……タバサ印やユイナやミク特性傷薬では無い。
前にダンジョンで見つけた中ボトルに入った量が多い傷薬だ。
「傷薬有難うな!箱の中身は俺は要らねぇ……って言うか何もしてねぇし……それに貰ってもどうせあの守銭奴貴族に奪われて終わりだからな!……寧ろ要らないって感じだ!」
どうやら完全に冒険者としての心を取り戻した様だが、若干と言うか大分遅かったとしか言えない。
「妾が無理を言ったがそろそろ向かわねば、謁見に間に合わなくなるぞ?火の16刻ではなかったかの?お主が言ったのは……」
僕はクロークの内側でコッソリとスマホの時間を見ると……時間は『16:04』になっていた……完全に遅刻だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕が焦っているその頃、上の城内では王への謁見の時間が変更されていた。
王族のドクリンゴ女公爵にお茶に誘われた後、僕が一向に戻って来ないからには、ザムド伯爵やウィンディア男爵とすれば『何かがあった』と考えるのが当然だ。
しかし、話が長引いて未だに王宮に居るのだ……とか、
帰ってくる時間が勿体無いと考えたに違いない……とか、
安直にエクシアやロズなど、僕と行動をともにする事が多い皆は『いつもの事』だと言っていた。
しかし王宮内の応接間に通された後も、僕の姿がない上に王族のドクリンゴ女公爵は当然だが顔も見せない。
王宮の関係者に行き先をや送り先を尋ねても、知らぬ存ぜぬと繰り返す。
僕絡みでおかしい事など今までに幾らでもあった。
だが王宮の応接間に入ってからというもの、手先と思われる廷臣達や悪辣貴族達は、様子を不自然に確認しに来ていた。
『黒箱』を奪った者達からすれば、何食わぬ顔で様子を伺いに来ていてもおかしくは無い。
しかし、一部の者はそうでは無い……あからさまに何かをしようとしている者の目だ。
ザムド伯爵やウィンディア男爵だけで無く、エクシアまでもが『何かがおかしい』と感じた。
エクシアは冒険者だ……その様な機微など決して逃さない。
当の僕は確かに王宮に居るが、地上ではなく地下のダンジョンだ……しかしそれを知るものは、ドクリンゴ女公爵の関係者に限る事なのだ。
ドクリンゴ女公爵の配下である悪辣貴族達でさえも知らない事だ。
そんな中王への謁見が始まってしまう………
謁見をするのはザムド伯爵にウィンディア男爵、秘薬を見つけてきたパーティーである僕達の6人も呼ばれ、テイラーにエクシアとロズは貴族護衛役として王宮へ来ていた。
「どうなっているんでしょうか?王の謁見の時間に来れないなど……不敬そのもので御座いましょう!そうでございましょう?王様!?シリウス様の事を考えると私は……」
ドクリンゴ女公爵がザムド伯爵とウィンディア男爵に『王様へ秘薬を手に入れた冒険者の紹介を!』と言っていた。
ザムド伯爵は初めてここで理解した……既にシリウスが回復した事をドクリンゴ女公爵は『知っている』と。
知っていながら忌々しい!と思った位である。
当然だが既に秘薬での回復は済んで居るのだから、王も僕の存在を知っている。
しかしドクリンゴ女公爵を除き、他の貴族たちはその事など知らないのだ。
周りが事実を知らない事を逆に利用して、悪辣貴族達にザムド伯爵とウィンディア男爵を責め立てる策に出ていた。
何も知らずに、のこのこ来たザムド伯爵達を罠に嵌めるためだ。
もし王がこの謁見で既に秘薬をシリウスに飲ませたと言えば、シリウスの主治医にこの謁見の最中にすぐさま毒を飲ませる予定だ。
当然その罪を秘薬を届けたザムド伯爵へ擦り付け、その後自分は安全な所で高見の見物だ。
逆に秘薬の存在を言わなければ、謁見が終わり次第シリウスの薬の中身を入れ替えて飲ませる予定だ。
言おうが言うまいが、どちらにせよシリウスはこの世を去る。
うっかり一時の感情に走り、目的だった冒険者をダンジョンの穴蔵に放り込んで殺してしまった。
その為、ドクリンゴ女公爵は別の生贄をザムド伯爵にしたのだ……
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