第294話「マッコリーニ食堂王都店爆誕!大人気オークカツ丼の白牙大根の味噌汁付き」
既に時間は無の21刻(夜21時)になっていた。
全ての重要な話が終えて、今は宿の大ホールで皆で集まって明日からの予定を話していた。
5人の侍女も既に平常に戻っていた……全てではないがそれとなく理由を聞いたようだ。
マッコリーニの護衛冒険者には『マドレーヌ!良くやった!』と皆から褒められたので、どうしていいか分からない混乱中のマドレーヌだけ、気持ちが置いてけぼりの様だ。
「もう無の21刻か〜1日は早いねぇ!腹減っちまったよあたし!」
「エク姉さん!さっき食ってましたよね?ギルドで串肉も、さっきフルーツも食ったじゃないっすか!」
いつものロズとエクシアのコントが始まったが、流石に皆お腹が空いていた。
そして、その時を見計らっていたのかマッコリーニ話し出す。
「ヒロ様……オーク肉を買い込んであるのですが……その……言っていたレシピは………」
僕はマッコリーニと話していた事を思い出す。
カナミと『オークカツ丼』を作る話をぼそっと話していて、その話をマッコリーニに聴かれていたらしく、この旅程でオークが出たら是非という話になったが、野良オークが出なかったのだ。
そこでマッコリーニは、レシピ欲しさに必要素材を聞いたので教えてあげたら、いつの間にか買い込んだ様だ。
そこで合点がいった。
侍女5人が悪辣貴族に利用されたのは『買い出し』に行ったことが原因だが、まさか『カツ丼』の為とは思ってもいなかった。
でも僕は皆の視線を受けて、説明をしているマッコリーニのそばから既に逃げることはできない。
仕方ないので、マドレーヌに言って材料を持ってきてもらう。
「まず、この干涸びたパンと魔麦を粉々にします。干涸びたパンは粗めにして、魔麦は粉状になるまで細かくするのがコツです。」
そう言うと、エルフ達がこぞってやりたがるので全員で手分けして多くのパン粉と魔麦粉を作る。
「このパンを粗い粉状にしたのを『パン粉』と言います。そして魔麦を細かい粉状にしたのを『魔麦粉』と言います。魔麦粉は器に入れて水でねりますが水分が多めです」
「マフィンとクッキーはオーク肉をこの見本の厚さに切って、ビスケットとラスクは肉を叩いて柔らかくして。見本は此処に置いておくから。マドレーヌ卵を全部割ってかき混ぜてね!殻が入らない様に気をつけて!」
「エルフの皆さんは焼くまでの下準備と、あとは僕と一緒に揚げる役ね!火傷しない様にね?」
「マッコリーニさんはお手伝いさんにお米の準備を!ご飯を沢山炊いて下さいね、お米は買いました?王都にはあるんですかね?」
僕の説明に従いそれぞれが手を動かすと、あっという間に『オークカツ』ができるが、エクシアがエール片手に勝手に食べるのでロズに取り押さえてもらっていた。
「ふざけんなーーー!酒とカツは!会うんだーーーー!あたしによこせーーーーーー!まじでチャンティコになるぞぉぉ!」
騒いでうるさいので、アツアツの揚げたてカツを切って口に放り込んで悶絶させる。
「お!オマエ!あたしを殺す気か!!めっちゃ熱いじゃねーか!でも………もう一口くれよ!!」
そんなエクシアを放って、ガン見中のハリスコに『白牙』と言う大根に似た野菜が無いか聞く。
「うちは武器系が多いが『白牙』は偶然持ってるぞ!ちょっと待ってろ!」
「じゃあフラッペさんと皮を剥いてそれをすりおろして下さい。味付けはエルフ醤油でお願いします!魚醤だと臭みが出ちゃうので!」
「分かったぜ!フラッペ!手伝え!仕事だ!」
そう言って白牙を持ってきて皮を剥いたので、僕は大根の味噌汁を思い出して一緒に作ることにした。
「ハリスコさん大根を味噌汁に使うので、食べやすい厚さと出来れば薄めにカットして下さい」
「「「「大根??」」」」
皆は頭に?マークを出すがフラッペはすぐに理解していた様で、
「ハリスコはすりおろしで!私は薄めにカットするわ!『大根』をね!」
「成程!これが『大根』か!切ると名前が変わるのか!……マジでいい商売じゃねぇか!!」
意味が違うがよかった……ある意味バレなくて……。
それから程なくしてお米が炊き上がり、『オーク肉のカツ丼と白牙大根の味噌汁』が出来上がった。
ちなみに味付けは、塩とおろし大根で食べれる様にした。
厨房を借りて作っているのだが、匂いが宿に流れてしまい大ホールに持って行く頃にはかなりの目を集めていた。
「そこの商人!何だそれは?かなりいい匂いがしておるが?……おお!ザムド伯爵では無いか!」
「おお!ハラグロ男爵では無いか!其方もこの王都に来ていたのか?」
良い匂いに負けて話しかけて来た貴族はどうやらザムド伯爵の友人らしく、ハラグロ男爵と言うらしい。
名前からして腹黒いのかと思ったら気さくな人ぶりだ……どうなのだろう………
しかし、ザムド伯爵は普通に話しているので敵対勢力ではない様だ。
「うむ!『秘薬』の話を聞いてな!お前の手助けに……と思って兵を率いて追っ掛けたのだが、途中でゴブリンや野盗、プレインウルフやらトンネルアントやらと戦っていたので遅くなって追いつけんなんだ!すまんな!」
「だが無事に着いて何よりだ……だが『秘薬』は残念だったな……ヤクタは騙せてもこの王都にも『敵』は多いからな……なんとかしてやりたかったのだが、着いたのがついさっきでな今ちょうどこの宿にチェックインしたのだ!」
「ところで……それは何なのだ?食べたことも見たこともないのだが?」
ハラグロ男爵は僕の持つカツ丼を食べたそうに見るので、クッキーに器に盛り付ける様に言っておく
「ハラグロ男爵様、私は冒険者のヒロと言います。この食べ物は『オークカツ丼』と言いまして、オーク肉を食べやすいサイズにカットして油で揚げたている料理です」
「ザムド伯爵のご友人とお見受けしました。よろしければお食べになりますか?私の手作りですがお口に合わなくても不敬罪にならないのであればお勧め出来ますが?」
「マッコリーニさん、ハリスコさん、フラッペさん……お渡ししてしまっても宜しいですよね?お近づきになるチャンスですし!」
3人の商団長は首をブンブン振りながら自分のカツ丼を勧めようと持ってくるが、一足早く僕は自分の持っているカツ丼を見せる。
ハラグロ男爵はその言葉を待っていましたと言わんばかりに、ニコニコしながら……
「うむ!是非頂こう!さっきから腹が鳴って仕方ないのだ。すまんな3人の商団長後で自己紹介させて頂く!」
今は話より食い気らしい……
凄い勢いで平らげてはお代わりをする。
全く足らなくなるので、食べ終わってからすぐに僕は追加のカツ丼製作に追われる。
理由はマッコリーニ達が『カツ丼販売』を始めたからだ。
だから僕は当然、手の空いてる者はフル活用だ。
レシピを覚えたいエルフは、食べた後から重い腹を摩りながらも参加する。
冒険者には肉料理が好評で次から次に肉がなくなる。
それに加えて、ここに宿泊している、商団だったり貴族だったりが軒並み買い漁っていくのだ。
もともと数日分のオーク食材を買い込んでいたマッコリーニだがどんどん無くなって新しい肉を買いに行こうとしたが、宿の亭主が予め食材店の主人を呼んでいてくれたようでどんどん追加注文を入れていた。
どうやら3商団長は『商売になる』と確信したらしい……今は宿の食器を借りて販売しているのだこの3人は……商魂たくましい。
荷車で言われた材料を持ってくる食材店の店主はどんどん物が売れてウハウハしていたが、来ては売れまた戻るの繰り返しでどんどん品薄になっていたので、一緒に来ていた奥さんに次の肉の仕入れをさせに冒険者ギルドへ行かせていた。
既にもう夜中になるのにこの夫婦が喧嘩にならないか僕は心配だったが、帰ってきた奥さんは……
「後どのくらい必要だい!?坊や。いくらでも言っておくれ!荷車で何回でも持って来てやるからね。ちょっと〜あんた!早く次の荷車持って来な。今が書き入れ時だよ!」
「おーよ!今持ってくるぜ!マッコリーニの旦那!毎度ありーーー!!!」
夜中に油物食うのって本当に幸せだよね……僕は働かされてるけど………
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